中国共産党政府との関係を見直そう(68)。「戦後」の世界について考える(5)。中国共産党は何を目指しているのか?

日本国民に警鐘を鳴らすために朝日新聞はこの記事を掲載したのだろうか? あり得ないことだと思います。しかし中国共産党の戦略を知っておくことは、今後の日本の政治を考える上で極めて重要でありますので、あえてこの朝日新聞の記事(一部分ですが)を紹介したいと思います。朝日新聞記者のインタビュー相手は「軍部でもタカ派で知られる」中国国防大学教授(上級大佐)劉明福氏です。赤裸々に中国共産党の野望《中国の夢》について語っています。

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  朝日新聞記者《あなたが2010年に出した『中国の夢』は中国でベストセラーになりました。これが習近平政権のスローガンの基盤となったと言われています。具体的にどのような戦略なのでしょうか

劉明福中国国防大学教授「私が考える戦略は、3つあります。1つ目が『興国の夢』。中華人民共和国建国100周年の2049までに経済や科学技術などの総合国力で米国を超え、中華民族の偉大な復興を成し遂げる。2つ目が『強軍の夢』で、世界最強の米軍を上回る一流の軍隊をつくること。そして最後が『統一の夢』で、国家統一の完成です」

あと30年以内に台湾統一を目指すということですか

「台湾問題の解決が、『中国の夢』の重要な戦略目標だと考えています。『分裂国家』のままでは世界一流になれません。習主席は在任中に台湾問題に積極的に取り組み、最終的に国家統一を実現すると確信しています。まず平和的な統一を試みつつ、軍事行動の準備も辞さないでしょう」

中国が武力を使えば米軍が介入するのは避けられません

「米国による軍事介入を恐れ、中国が国家統一を諦めることはあり得ません。米国にとって台湾は中国を封じ込めるための一枚のカードに過ぎず、中国との全面戦争につながる軍事介入をする可能性は低いでしょう。しかも中国が武力統一に踏み切る時には、米国による軍事介入を打ち負かす能力も備えておきます」

米国内には、中国よりも国力が上回っているうちに封じ込めなければならないと言う強硬論があります

「中米関係のさらなる悪化は避けられません。最も危険なのは今後10年間です。時間が経つほど、米国は中国との国力の差が小さくなり、不利になるでしょう。米国は空母艦隊を中国周辺に派遣するほか、同盟国である日本を使って、中国にさらに圧力をかけてくると見ています。中国は戦略的な防御が必要な時期です、米国に対応できる準備と能力を蓄えなければなりません。次の10年間は国力の差が縮まってにらみ合いが続くでしょう。そして最後の10年は米国が衰退し、中国が主導権を得る時代になるとみています」

つまり米国から覇権を奪うことが、中国共産党の最終目的なのですね

「米国を追い抜くことは犯罪ではありません。陸上競技のように競い合ってより良い成績を収めた方が勝つのです。しかし、中国が米国から世界覇権の地位を奪い取るわけではありません。あらゆる覇権国が存在しない新たな世界を作るのです。中国が新たに提唱する新たな秩序は、より文明的で人々に幸福をもたらすものです」

習指導部が描く『新たな秩序』とはどのようなものでしょうか

「世界は今、100年に一度といえる時代の激動期を迎えており、大きく変化するチャンスでもあります。中国の国家目標はまさに中華民族の偉大な復興という『中国の夢』の実現です。中核となる戦略がシルクロード経済圏構想『一帯一路』で、世界とつながり、協力し、幸福をもたらします。人類運命共同体をつくることが最終目標なのです」

《中国が東アジアを中心に影響力を拡大して、各国を取り込もうとしており、警戒感を高めています》

「東アジアは、中国や北朝鮮などの一部の国を除いて、米国の影響下に置かれています。特に日本は、外交・安全保障で米国に厳しくコントロールされている『属国』の状態が続いています。これこそ東アジアの問題なのです」

《しかし、軍拡を続け、体制も異なる中国への抵抗感が日本人の中で根強いのも事実です》

「日本は明治維新で『脱亜入欧』を進めました。第二次世界大戦後は『脱欧入米』戦略をとりました。そして現在、第三の転換期を迎えていると思います。地理的にも近い中国とアジアの台頭を利用できる好機なのです。今こそ米国偏重から脱し、『アジア回帰』をすべき時ではないでしょうか。中国は米国からの封じ込めを打ち破り、日本は米国による支配から脱し、東アジアの新秩序づくりに向けて協力して行くべきです」。

詳しくは朝日新聞の記事を読んで下さい。しかし中国共産党との「人類運命共同体」は遠慮したいですね。

中国共産党政府との関係を見直そう(67)。「戦後」の世界について考える(4)。

櫻井よし子氏、《我が国家の弱きを憂う》WiLL2020年6月号より

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対中依存のリスク

武漢ウイルスが暴いた我が国の脆弱性は、国内問題だけにとどまらない。中国依存の経済構造が、有事に国民を危険に晒すことも明らかになった。これまで日本の財界と政府は、主に経済的視点から日中関係を捉えてきたが、視点を変える時が来たのである。以前から、サプライチェーンの見直しとして「中国+1」は議論されてきたが、あくまで人件費など経済的要素に基づく発想だった。

歴史を捏造されても、知的財産を盗まれても、領土を狙われても、撤退するわけでも法廷で闘うわけでもない。我が国の企業は中国進出に際し、眼前の利益に目を奪われるあまり、中国との取引がもたらす将来のリスクについて考えてこなかったのだ。

だが新型ウイルス問題は、中国依存のリスクを明確に描き出した。にわかに浮上したのが、中国の強力な武器としての医薬品である。中国共産党機関紙・新華社は、「中国は医薬品の輸出規制をすることも可能だ。その場合、米国はコロナウイルスの大海に沈むだろう」と社説で恫喝した。国民の命を人質にとっているのだ。

中国が世界の医薬品供給をコントロールし、諸国の国民の命を左右する力を手にした事実の恐ろしさを肝に銘じるべきだ。中国の医薬品に圧倒的に依存することは、安全保障で決定的な弱点を抱えるという意味を持つ。サプライチェーン全体を見ると、日本も米国同様、過度に中国に依存しているのは医薬品だけではない。どの分野でどのくらい依存しているのか、各々の分野の重要性がどの程度などかなどを詳細に分析し、我が国の弱点を認識することが第一だ。その上で日本も米国も、あらゆる意味で中国依存の構造を脱しなければならない。