中国共産党政府との関係を見直そう(67)。「戦後」の世界について考える(4)。

櫻井よし子氏、《我が国家の弱きを憂う》WiLL2020年6月号より

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対中依存のリスク

武漢ウイルスが暴いた我が国の脆弱性は、国内問題だけにとどまらない。中国依存の経済構造が、有事に国民を危険に晒すことも明らかになった。これまで日本の財界と政府は、主に経済的視点から日中関係を捉えてきたが、視点を変える時が来たのである。以前から、サプライチェーンの見直しとして「中国+1」は議論されてきたが、あくまで人件費など経済的要素に基づく発想だった。

歴史を捏造されても、知的財産を盗まれても、領土を狙われても、撤退するわけでも法廷で闘うわけでもない。我が国の企業は中国進出に際し、眼前の利益に目を奪われるあまり、中国との取引がもたらす将来のリスクについて考えてこなかったのだ。

だが新型ウイルス問題は、中国依存のリスクを明確に描き出した。にわかに浮上したのが、中国の強力な武器としての医薬品である。中国共産党機関紙・新華社は、「中国は医薬品の輸出規制をすることも可能だ。その場合、米国はコロナウイルスの大海に沈むだろう」と社説で恫喝した。国民の命を人質にとっているのだ。

中国が世界の医薬品供給をコントロールし、諸国の国民の命を左右する力を手にした事実の恐ろしさを肝に銘じるべきだ。中国の医薬品に圧倒的に依存することは、安全保障で決定的な弱点を抱えるという意味を持つ。サプライチェーン全体を見ると、日本も米国同様、過度に中国に依存しているのは医薬品だけではない。どの分野でどのくらい依存しているのか、各々の分野の重要性がどの程度などかなどを詳細に分析し、我が国の弱点を認識することが第一だ。その上で日本も米国も、あらゆる意味で中国依存の構造を脱しなければならない。