大阪都構想の必要性について考える(62)。これでいいのか市議会。未来を見据えた議論を。
大阪市会で大都市・税財政制度特別委員会が開かれた同じ日の23日、日本経済新聞は、一面トップでコンパクトシテイ誘導への国の取り組みについて取り上げていました。
「まち機能一段と集約、中心地面積10%以下、支援厚く、国交省」との大見出しで、「国土交通省は福祉施設や子育て支援拠点といったまちの都市機能を一段と凝縮する。地方でのコンパクトシテイを加速する狙いで、自治体が都市開発できる面積の1割以下に中心地を集約する場合、補助金や規制緩和で支援する。一方、機能が分散する自治体への補助金を減らし、支援にメリハリをつける。人口減にあわせたまちづくりを促し、行政コストの削減につなげる」と、国の取り組みを紹介しています。その補助の基準となるのが「自治体が計画の中で示す『都市機能誘導区域』の面積」で、医療、福祉、教育文化、子育て、地域交流などの都市機能誘導区域が、市街化区域面積の「10%以下に凝縮していれば支援し、補助金を受け取りやすくする」ということのようです。「集約が遅れると、人口減に伴って公共サービスの効率が悪化し、空き家も増えかねない」として、補助金交付に差をつけてでもコンパクトシテイに誘導しようとしているのが分かります。
その背景には、昨年安倍首相が少子高齢化を「国難」と位置づけ、総力をあげて対策を講じ、人口減少に耐えうる社会への作り変えを急ぐ必要性を訴えたことにあると思います。コンパクト社会への移行を補助金でメリハリをつけてでも急ぐのは、少子高齢化を「国難」としての危機的状況との認識からでありましょう。
大都市といわれる大阪市も少子高齢化とは決して無縁ではありません。むしろ大都市こそ、その影響は地方よりもはるかに大きいと言われています。法政大学廣瀬克哉教授は「重要なことのひとつは、人口が減少していない自治体にも課題は突きつけられているということだ。むしろ、人口が減っていないこと自体が重大な政策課題なのかもしれない。人口が減らなければほとんどの場合、後期高齢者が激増する。それに対する政策的な備えができていなければ、人口の維持がかえってその自治体に危機的な状況をもたらしかねない」と指摘。22年後の平成52年には大阪市の人口は約40万人近く減少し、65歳以上の老齢人口の占める割合は33.6%に、15歳未満の若年人口の割合は8.8%になるとの推計がなされています。大阪市にとって少子高齢化は深刻な問題であります。今大阪市会に求められているのは、かって産経新聞が主張欄で強調したように「人口が減っても発展し、豊かな暮らしを維持できる」ためのプラン、について議論することであります。
全国的にコンパクトシテイへの取り組みが始まっている今、大阪市の大都市・税財政制度特別委員会での議論では、「現状のままでいいのではないのか」とか「都市制度についての議論は時間の無駄である」といった議論がいまだになされているのには、正直驚きを禁じ得ません。安倍首相がいわれる「国難」という認識が全く欠落していると感じられてなりません。自省も含めて。