大阪都構想の必要性について考える(60)。大阪市、『都構想』の経済効果額算出へ。

平成30年1月11日に開催されました大阪市会、大都市・税財政制度特別委員会の維新会派の質疑で、大阪市は導入を検討している新たな大都市制度(都構想)の経済効果を算出する計画があることを公表しました。

「経済効果の算出にあたっては、経済学などの専門的な知見・ノウハウを有する民間事業者へ業務委託を行う」とのことです。

委託内容については「効果の捉え方や試算の手法により算出効果が異なる可能性があることから、複数の手法で算出することにより、幅を持って効果を捉える必要があると考えている。このため、特別区素案をもとにして、複数の算出手法を用いて、広域機能の一元化及び基礎自治機能の充実に関する経済効果の算出を求める方向で検討している」ということです。

さらに「総合区制度についても、同様に、総合区素案をもとに複数の算出方法により経済効果の算出を求める」ことを考えていることを表明しました。

『大阪都構想』という大都市制度を導入することの意義は、

一つには今までの大阪府と大阪市の二重行政、二元行政から決別し、広域行政を一元化することによって成長戦略を前に進めることです。この4年間府市一体となって成長戦略に取り組んできましたが、その経済効果額も試算されるならば非常に有意義なものとなるでしょう。待ち遠しいですね。また「二重行政・二元行政、いわゆる府(不)市(幸)せな状態が大阪の発展を阻害してきた」とはよく言われることです。この二重行政・二元行政によってこれまで失われてきた経済的損失はどのくらいになるのか。これも算出していただければ、二重行政・二元行政の弊害というものがもっとわかりやすくなります。

そしてもう一つ『大阪都構想』の意義は、都市内分権を進め住民自治を拡充することにあります。そのために特別区制度を導入しますが、それによる経済効果が数値化されればさらに理解しやすくなります。

この日、自民党の質疑も拝聴しましたが、相変わらず「改革に後ろ向き」な姿しか見ることができませんでした。残念です。賛否は別にしても本論部分での活発な議論を期待したいところです。

大阪都構想の必要性について考える(59)。4つの選択肢。

政令指定都市制度の構造的課題に大阪市がもがき苦しんでいた頃、大東文化大学法学部教授は『都市問題研究』(平成21年4月号)に「政令指定都市制度の課題と改革」という論文を寄稿しています。その中で、

氏は《政令指定都市制度の問題点》として『①基本的に一般市町村と同一の制度を適用②地方自治制度の中で、大都市の位置づけや役割が不明確③特例的・部分的で一体性・総合性を欠いた事務配分④府県との間で生じている二重行政・二重監督の弊害⑤大都市の財政需要に見合った税財政制度の不存在⑥大規模自治体としての住民自治・参加機能が発揮しにくい⑦指定要件が曖昧で、国の政策的判断に左右されやすい』と以上7点を指摘しています。税財政制度の欠陥や二重行政の弊害、都市内分権などを問題点として挙げています。

次に《政令指定都市制度改革の必要性》があるとして、不完全な政令指定都市制度の今後のあり方として、4つの選択肢を提示しています。

『そこで、指定都市制度そのものをどうするかという問題の方途としては、

①旧特別市制度の復活

②指定都市制度を存続したままでの拡充・強化

③指定都市制度を廃止して市を数段階に分けて、事務・権限の配分に段階ごとの差異を設ける方式

④都制の他の大都市への拡大等がある』としています。

①は指定都市市長会が求めている「大都市の特性に合った税財政制度の構築」という要望に合致しています。②については政令指定都市制度に構造的欠陥がある中で、さらに財政需要が増大していくことが予測される少子高齢化・人口減少社会に果たして対応できるのか、大きな課題があります。いま大阪市が検討している『総合区制度』は②に入ります。③は政令市を廃止して普通市に戻すということだと思いますが、全ての政令市を廃止するのは容易なことではありません。今大阪でチャレンジしている『大阪都構想』は④に該当します。

構造的欠陥を有する不完全な政令指定都市制度。ではその先にどのような都市制度を選択するのが最善なのでしょうか。大阪という地域にとって最善の都市制度は何なのか。今できることは何なのか。止まっていることはできません。次の道を選択し、前に進んでいかなければなりません。もう十二分に時間を使ってきました。これ以上時間の浪費は許されません。