政令指定都市制度の構造的課題に大阪市がもがき苦しんでいた頃、大東文化大学法学部教授は『都市問題研究』(平成21年4月号)に「政令指定都市制度の課題と改革」という論文を寄稿しています。その中で、
氏は《政令指定都市制度の問題点》として『①基本的に一般市町村と同一の制度を適用②地方自治制度の中で、大都市の位置づけや役割が不明確③特例的・部分的で一体性・総合性を欠いた事務配分④府県との間で生じている二重行政・二重監督の弊害⑤大都市の財政需要に見合った税財政制度の不存在⑥大規模自治体としての住民自治・参加機能が発揮しにくい⑦指定要件が曖昧で、国の政策的判断に左右されやすい』と以上7点を指摘しています。税財政制度の欠陥や二重行政の弊害、都市内分権などを問題点として挙げています。
次に《政令指定都市制度改革の必要性》があるとして、不完全な政令指定都市制度の今後のあり方として、4つの選択肢を提示しています。
『そこで、指定都市制度そのものをどうするかという問題の方途としては、
①旧特別市制度の復活
②指定都市制度を存続したままでの拡充・強化
③指定都市制度を廃止して市を数段階に分けて、事務・権限の配分に段階ごとの差異を設ける方式
④都制の他の大都市への拡大等がある』としています。
①は指定都市市長会が求めている「大都市の特性に合った税財政制度の構築」という要望に合致しています。②については政令指定都市制度に構造的欠陥がある中で、さらに財政需要が増大していくことが予測される少子高齢化・人口減少社会に果たして対応できるのか、大きな課題があります。いま大阪市が検討している『総合区制度』は②に入ります。③は政令市を廃止して普通市に戻すということだと思いますが、全ての政令市を廃止するのは容易なことではありません。今大阪でチャレンジしている『大阪都構想』は④に該当します。
構造的欠陥を有する不完全な政令指定都市制度。ではその先にどのような都市制度を選択するのが最善なのでしょうか。大阪という地域にとって最善の都市制度は何なのか。今できることは何なのか。止まっていることはできません。次の道を選択し、前に進んでいかなければなりません。もう十二分に時間を使ってきました。これ以上時間の浪費は許されません。