中国共産党政府との関係を見直そう(14)。石平のCHina Watch 「ネット世論に敗れた共産党」(2) 産経新聞3月19日より。

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石平市の《ネット世論に敗れた共産党》を紹介します(2)。

習近平主席に関する宣伝での異変は別のところでも起きた。今月6日、新任の武漢市党委書記の王忠林氏が新型コロナへの対応会議で、「市民を教育し、総書記や党の恩に感謝させなければならない」と発言した一件である。この発言は翌朝から、地元の長江日報の公式サイトをはじめ、国内多くのニュースサイトによって大々的に報じられたが、これに対するネット上の反発はなおさらに激しい。「武漢市民が苦しんでいる最中なのに“恩に感謝”とは何か」という憤りの声が溢れているのである。そしてその日の午後、今度は上述の長江日報公式サイトをはじめ、国内のあらゆるニュースサイトから王党委書記の発言が一斉に消された。まさに中央宣伝部指揮下の一糸乱れずの統一行動である。わずか一週間で、飛ぶ鳥も落とす勢いの中央宣伝部が2回の「敗退」を体験したわけだ。

こうした背後にはまず、新型コロナ拡散以降起きている、「言論」に関する中国国民の意識変化があるだろう。コロナ拡散の初期段階で政府が行った一連の情報隠蔽と統制が拡散を助長し、一般国民に多大な被害をもたらした事への反省から、多くの中国国民は言論の自由の大事さを身をもって実感した。その結果、今やネット世論は、以前より何倍も勢いを増してきて、中央宣伝部とその指導下の「宣伝戦線」を圧倒するほどの力を持ち始めているのだ。中央宣伝部の2回の「敗退」から見えてきたもう一つの事実は、習主席その人に対する国民の不満と反発が高まっていることである。誰かが習主席の「卓越した指導力」を称えたり、習主席への「感恩」を唱えたりすると、必ずネット上の猛反発を招いて総スカンを食らう。習主席がよほどの嫌われ者になっていることが分かろう。敗退を余儀なくされた中央宣伝部、国民に嫌われる習主席、このような大きな政治的変化から、どんなものが生まれてくるのであろうか。今後の動向を注目したい。

中国共産党政府との関係を見直そう(13)。石平のCHina Watch 「ネット世論に敗れた共産党」(1) 産経新聞3月19日より。

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石平氏の《ネット世論に敗れた共産党》を紹介します。(1)

中国では新聞、テレビ、出版などの関連部門がひとくちに「宣伝戦線」と呼ばれて、共産党中央宣伝部の統一指揮下にある。中央宣伝部が何らかの方針を決めると、全国の「宣伝戦線」が一糸乱れず動き出して計画的な宣伝活動を行なっていくのが、その特徴である。だが最近、この「宣伝戦線」で考えられないような乱れが生じてきている。2月下旬、新型コロナウイルスが全国で猛威を振るっていた最中、中国の「宣伝戦線」は一斉に今月1日に出版予定の本の予告宣伝を始めた。書名は『大国戦“疫”』(疫病と戦う大国)、内容は人民を率いて新型コロナと戦う共産党政権を褒め称えるものである。しかし、1日になると、この本に対する宣伝はぴったり止まってしまい、販売も急遽中止となった。現在も、本来なら、既に印刷済みはずの本書の販売は宙に浮いたままである。それが宣伝部にとって大失態であることは明白だろう。原因は、予告された本の内容に対するネット上の猛反発であった。特に、新型コロナへの対応における習近平国家主席の「戦略的先見性」や「卓越した指導力」を讃える同書の内容が予告されたのに対し、ネット市民が一斉に異論を唱えて反発した。その結果、宣伝部肝いりの本書の販売が中止に追い込まれたのだが、それは、天下の中央宣伝部がネット世論、あるいはネット世論によって代弁されている民衆の声に負けた結果と言える。