石平氏の《ネット世論に敗れた共産党》を紹介します。(1)
中国では新聞、テレビ、出版などの関連部門がひとくちに「宣伝戦線」と呼ばれて、共産党中央宣伝部の統一指揮下にある。中央宣伝部が何らかの方針を決めると、全国の「宣伝戦線」が一糸乱れず動き出して計画的な宣伝活動を行なっていくのが、その特徴である。だが最近、この「宣伝戦線」で考えられないような乱れが生じてきている。2月下旬、新型コロナウイルスが全国で猛威を振るっていた最中、中国の「宣伝戦線」は一斉に今月1日に出版予定の本の予告宣伝を始めた。書名は『大国戦“疫”』(疫病と戦う大国)、内容は人民を率いて新型コロナと戦う共産党政権を褒め称えるものである。しかし、1日になると、この本に対する宣伝はぴったり止まってしまい、販売も急遽中止となった。現在も、本来なら、既に印刷済みはずの本書の販売は宙に浮いたままである。それが宣伝部にとって大失態であることは明白だろう。原因は、予告された本の内容に対するネット上の猛反発であった。特に、新型コロナへの対応における習近平国家主席の「戦略的先見性」や「卓越した指導力」を讃える同書の内容が予告されたのに対し、ネット市民が一斉に異論を唱えて反発した。その結果、宣伝部肝いりの本書の販売が中止に追い込まれたのだが、それは、天下の中央宣伝部がネット世論、あるいはネット世論によって代弁されている民衆の声に負けた結果と言える。