大阪の都市制度改革の必要性について考える(16)。人口減少社会への提言。

東京大学法学部教授、金井利之氏。『超高齢社会の自治体政策再編』ー地方自治職員研修  2013.8ー

●衰退社会のなかの高齢化

「要は、日本社会全体が『成長社会』ではなく、『衰退社会』に局面が転換した。・・・数値は冷厳である。少子化は著しく、後期高齢化さらには超高齢化の進行は、厳然たる事実であり、かつ、当然の未来である。超高齢社会のなかで、自治体は既存の政策編成を再構築していく必要がある」。

⚫︎超高齢化問題の深刻化

「・・大都市圏では、地方圏からの人口流入により、必ずしも人口減少が目に見えて起きているわけではない。しかし、少なくとも、高度成長以来、大量に流入してきた世代が高齢化を迎え、いわば、高齢者過密問題を引き起こしつつある。そして、そのロット(絶対数)は、地方圏が直面してきた水準を遥かに凌駕するため、大都市圏での超高齢化は、極めて困難な問題を投げかけている。しかも、日本全体での人口減少が現実のものとなるなかで、大都市圏でも人口(および、非高齢者人口)の減少が見込まれている」。

●超高齢社会では少子化対策こそ自治体の役割

「超高齢社会で重要なのは、高齢者政策と少子化対策とを並行して行うことである。都市問題への対処は、都市政策だけでなく、地方圏政策が必要であるのと同じなのである。こうした政策編成をパッケージとして提示することができて、はじめて、超高齢社会への対処が可能になる」。

⚫︎子ども・子育て政策に向けて

「・・子ども・子育て政策の成否こそが、真の意味での高齢化対策を左右する。・・そして、子ども・子育て政策は、視野狭窄の保育所整備だけに終わるべきでない。子ども・子育ては、出生前から、成人するまでの、全若年世代人口に対しての、24時間1年365日の切れ目なき日常の連続である。こうした政策領域が完全に充填されて、超高齢社会の自治体政策の再編が完了する」。

大阪の都市制度改革の必要性について考える(15)。人口減少社会への提言。

自治体議会改革フォーラム呼びかけ人代表、法政大学法学部教授、廣瀬克哉氏。

ーGovernance February 2016ー

「議会の審議自体が政策転換を準備するエンジンとなり、市民に政策転換の当事者意識を持つ機会を保障していくためには、議会が、議会の中の討論を充実させるだけでなく、議会の討論を聴いている者との間で、距離のないフィードバックとフォローアップの機会を随時設定していくことが効果的だ。人口減少下で自治体に問われている政策転換は待ったなしだ。これにどれだけ有効に答えていけるかが、議会改革の喫緊の課題なのではないか」。

「重要なことのひとつは、人口が減少していない自治体にも課題は、つきつけられているということだ。むしろ、人口が減っていないこと自体が重大な政策課題かも知れない。人口が減らなければほとんどの場合、後期高齢者が激増する。それに対する政策的な備えができていなければ、人口の維持がかえってその自治体に危機的な状況をもたらしかねない」。

廣瀬先生が言われるように、議会が政策転換のエンジンとなって いかなければならないのに、大阪市議会は大阪市役所を再編するのはいやだと主張するのみで、議会での議論は進んでいません。また、学者といわれる一部の人は、“大阪市役所再編”を“大阪市廃止”と意図的に曲解し、まるで役所や地域がなくなるかのような印象付けをするのみで、大阪府と大阪市が直面している政策課題と向き合おうとしない。何か利害関係があるのかと憶測せざるを得ません。これが大阪の現状であります。        

「人は過去の経験から自由になり難いもので、現在発生している諸問題に対して、過去の条件(その自治体の人口増であったり、その自治体は人口減少していても総人口が増加していることであったり)を前提として実現可能だった解決策を思い浮かべがちだ。現状認識や発想を大きく転換していく必要があるのだが、それが進んでいる自治体は多くないのではないか。・・・従来の発想では持続する対策は打てなくなっているのだが、まだまだ従来型の発想は根強いように思われる」。

大阪市、大阪府はそうであってはならないのだが。

「総人口の減少時代に入っても、相対的には恵まれた条件を維持していて、そこでは人口もほぼ現状を維持できている。こういう自治体のほとんどがこれから直面するのは、後期高齢者の爆発的な増加と現役世代の絶対数の減少だ」。

この警告を真摯に受け止めなければならない。