大阪の都市制度改革の必要性について考える(9)。コンパクトシティについて。

平成29年3月4日の日本経済新聞。「急速な人口減や高齢化を受けて、300を超える市町村が計画的にまちを縮めて自治体機能を維持しようとしていることが分かった。住民の反発などから失敗を重ねた教訓を踏まえ、補助金や税制優遇などの政策メニューをそろえ、緩やかに商業施設や居住区を集約・誘導する。郊外の開発を軸にした戦後ニッポンの都市政策は大きな転換点を迎えた」と、全国で取り組まれている、コンパクトシティ計画(立地適正化計画)について、大きく取り上げていました。「地方の小都市に加え、さいたま、浜松、名古屋、岡山、広島などの政令市や首都圏の自治体も国の支援のもとで独自の計画づくりを進めており、全国的な動きになりつつある」という。例えば「北九州市は計画案の中で『厳しい財政状況のもとでは市民生活を支えるサービスの提供が困難になる』と指摘。居住区を市街化区域の6割程度に絞り込む。集約拠点を地図に落とすと恐竜のように見えるため『コンパクトザウルス』と名付けて市民にPRしている」。また「和歌山市は計画策定とあわせて郊外への立地を規制する。規制を緩めた結果、農地が虫食い的に宅地に変わり『ゴミ収集や上下水道の整備などの行政サービスに影響が出る恐れがある』(都市計画課)という。これまで50戸以上の住宅があれば郊外でも開発できたが、4月から小学校から300メートル以内などインフラが整う地域に限定する」という。このような厳しい立地適正化計画が今国によって求められています。「国も自治体の財政破たんを回避するため、機能集約を強力に推し進める方針だ。自治体向け交付金の支給要件のひとつに立地適正化計画の策定を義務付けるなどの措置を講じており、今後も自治体で同様の取り組みが広がるのは確実だ」と報道しています。

大阪市も少子高齢化の時代にあり、この課題から逃れることはできません。しっかりと時代と向き合って、大阪市にとっての立地適正化とは何なのか、行政と議会は責任を持ってその方向性を示し、計画を策定しなければなりません。『今のままでいい』という姿勢は、無知か責任放棄かのどちらかであると言われても仕方ありません。

大阪の都市制度改革の必要性について考える(8)。基礎自治体の役割とは。

橋下前市長は平成26年度予算に関する説明の中でこのように述べてます。「私は、何より活力ある大阪を取り戻したい、今こそ大阪を再生させなければならないと考えております。活力ある大阪を取り戻すためには、まず、現役世代が継続的に活力を生み出せるよう支援し、その活力を高齢者にも還元する流れをつくらなければなりません。また、その活力による成長を通じて、市民の安全・安心を守る取り組みを充実すると同時に、未来への投資を行い、それをまた成長につなげる好循環を実現しなければなりません。あわせて、市民による自律的な地域運営を支援し、市民生活の安全・安心を支えるコミュニティーを活性化させ、自助・共助の力を取り戻す必要もあります。これまでの取り組みをさらに発展させ、現役世代への重点投資や大阪の成長に向けた府・市一体の取り組み、市民生活の安全・安心の確保など政策転換を推進するとともに、市政改革を強力に進め、市政に定着させていきます」と(平成26年5月)。少子化問題が解決しない限り、超高齢化社会問題を乗り切っていくことはできません。東京大学法学部教授の金井利之先生は『超高齢社会では少子化対策こそ自治体の役割』であるとして次のように述べておられます。「高齢者政策は勿論重要であるが、それだけを求めていたのでは、政策編成として持続可能性がない。超高齢社会で重要なのは、高齢者政策と少子化対策とを並行して行うことである。都市問題への対処は、都市政策だけではなく、地方圏政策が必要であるのと同じなのである。こうした政策編成をパッケージとして提示することができてはじめて、超高齢社会への対処が可能になる」と。橋下前市長の施策方針はまさしく時代を見据えたものということができます。このような少子高齢化社会の喫緊の課題を担う基礎自治体の役割はますます重要性を増しているといえるでしょう。大阪では広域を担う役所と基礎自治を担う役所に役割を分けて、それぞれが広域と基礎的自治の役割リに専念できるように、大阪府庁と大阪市役所を再編(都構想)しようと試みていますが、少子高齢化社会を見据えると、このことは極めて重要な課題であるといえます。