大阪の都市制度改革の必要性について考える(11)。現状での問題点。橋下前市長の言より。

「新たな大都市制度における特別区、いわゆる大阪都構想の協定書については、議会からさまざまな問題点、指摘をいただいていることは承知していますが、重要な視点は、今の大阪府、大阪市役所の体制にはこの大阪都構想よりもはるかに大きな問題と数多くの問題点が含まれているというところをまず前提としなければいけません。今の大阪府と大阪市の体制で、本当に日本でも笑い物になってきた二重行政というものがずっと行なわれてきて、先ほども公募区長から意見がありましたが、ニア・イズ・ベターの観点で区民の皆さんに施策を展開しようと思っても、さまざまな制約からできない。いわゆる今の大阪府、大阪市の体制にもいろいろな数多くの大きな問題点があるということです。特別区設置、大阪都構想にも問題点があるかもわかりませんが、今の大阪府、大阪市の体制と比べてどちらの方がいいのか、今までの大阪府・大阪市の失敗を改善するためには何をしなければいけないのかという視点で考えれば、今の大阪府庁、大阪市役所の体制よりも特別区を設置した新しい大都市制度、大阪都構想の方がはるかにましだと僕は考えております。用途地域の権限等についてもいろいろ議論がありますが、まず、この問題点の根本的な見解の相違の原因は、大阪府庁、大阪府知事というものをいわゆる市民の敵対組織と考えるかどうかです。これは、大阪市議会からすると大阪府議会や大阪府知事というものは外部の組織の人間という、そういう認識があるのかもわかりませんが、大阪市民にとってはみずからが選挙で選んだ代表でありますから、大阪市民にとったら大阪府も大阪市も一緒です。そういう視点に立つと、例えば用途地域等の権限についても、大阪市内だけで都市計画というものを進めるのか、大阪市周辺の自治体も含めて、僕でいうところのグレーター大阪ですけども、東京23区に匹敵するぐらいのエリア、それぐらいの面積で都市計画を進めていくのか、どちらのほうが大阪市民、大阪府民にとっていいのかといえば、僕は後者だと考えております」(平成26年10月)。

4月9日、大阪市大で行われたシンポジウムの異常性。

当日配られた資料の中で、藤井聡京都大学大学院教授の「『大阪府市再編問題』を巡る今後の動き」と題する資料を見てみます。その中の特別区設置協議会についてと題するレジメ。この中に 【ただし、公明党大阪市議団の『法定協設置へ賛成』すれば、彼らがウソをついたという事を正式に認めた、と言われても、そしてそれは、『今まで公明党を支持してきた方々を裏切る事』だと言われても、否定しがたい状況となる】という文章が記載されています。さらに『新経世済民新聞』に藤井教授は「『公明党・大阪市議団が日本を破壊する』というリスクについて」と題して寄稿しています。その中で【そもそも『都構想』が実現されれば、『大阪市が廃止』されます。一方で、『住民投票』がなければもちろん、『大阪市の廃止』ということが起きるはずはありません。ということは『公明党・大阪市議団』は今、『大阪市が廃止』される『恐ろしいリスク』を生み出している、ということになります】とあります。威圧的とも受け取れる文言であり、今後は慎まれることを期待します。大阪府議会、大阪市議会で法定協設置のための条例案がこの5月に採決される予定になっているので、阻止したい一念なんでしょう。しかし、このような表現は学者として適切ではありません。都構想は、大阪市役所を新しい複数の特別区役所に再編し、特別区役所は基礎自治の仕事(医療、福祉、教育、地域など)に専念し、区民に近い役所として区民生活を支え、守っていきます。したがって、大阪市役所が再編されるのであって、大阪市がなくなるという表現は適切ではありません。大阪市域、地域がなくなるわけではありませんから。経済政策や産業政策、鉄道・道路などのインフラ整備などについてはより大きな大阪府域という広域の視点で政策決定していくということであります。そして府市の二重行政・二元行政を無くすことが大阪の発展につながっていくという考えです。それにしても、シンポジウムというのは名ばかりで政治集会としか思えません。