大阪の都市制度改革の必要性について考える(10)。人口減少が社会に与える影響について。

国土交通省の「国民意識調査」によれば、人口減少を実感する場面として、(1)商店街にシャッターが下りたままの店舗が増えた。(2)空き家をよく見かけるようになった。(3)外で子供の声を聞かなくなった。(4)学校が廃校になった。(5)バスや鉄道の本数が減った。路線自体がなくなった。(6)なんとなく地域に活気がなくなった。(7)百貨店やスーパーマーケットがなくなった。(8)転出者の噂を聞くようになった。(9)管理されない道路や公園等の公共施設が増えてきた。(10)医療施設、福祉施設が減少した(なくなった)。などがあげられています。またこれらと重なりますが、国土交通省として、人口減少が地方のまち、生活に与える影響については次のような項目を挙げています。(1)生活関連サービス(小売、飲食、娯楽、医療機関等)の縮小。(2)税収減による行政サービス水準の低下。(3)地域公共交通の撤退・縮小。(4)空き家、空き店舗、工場跡地、耕作放棄地などの増加。(5)地域コミュニティーの機能低下などを列挙しています。今後の人口減少については「2050年には、今は人が住んでいるブロックの2割で人がいなくなり、6割で人口が半減。無人の地域は全体の53%から約62%に広がる」「人口減少によって、2050年には日本の国土の約6割が無人になる」と発表しています。人口減少の影響は地方だけでなく、大都市においても「人口減少ショックは否が応でもでも大都市は『豊かな象徴』とされる時代を終焉させる。働き手が減る一方、都市部への高齢者流入が続き。アメリカのニューヨーク、シカゴ、ボストンやヨーロッパが味わった大都市の衰退、退廃は日本でもやってくる」と警鐘を鳴らす学者もおられます。大都市の方が事態は深刻であると考えられます。今後人口が減少しないように努力することは勿論ですが、より重要なことは、人口減少にふさわしい経済や社会の仕組みをどう作っていくか、人口が減少しても持続可能で幸せに暮らしていくためには、どのような戦略が必要かを考えることが大事である思います。人口減少社会にふさわしい役所のあり方、都市制度のあり方についても考えなければならないのは当然であります。役所のあり方、都市制度について議論するのは時間の無駄に過ぎないと批判する政党がありますが、そのような態度はおよそ政党に値しないと言わざるを得ません。

大阪の都市制度改革の必要性について考える(9)。コンパクトシティについて。

平成29年3月4日の日本経済新聞。「急速な人口減や高齢化を受けて、300を超える市町村が計画的にまちを縮めて自治体機能を維持しようとしていることが分かった。住民の反発などから失敗を重ねた教訓を踏まえ、補助金や税制優遇などの政策メニューをそろえ、緩やかに商業施設や居住区を集約・誘導する。郊外の開発を軸にした戦後ニッポンの都市政策は大きな転換点を迎えた」と、全国で取り組まれている、コンパクトシティ計画(立地適正化計画)について、大きく取り上げていました。「地方の小都市に加え、さいたま、浜松、名古屋、岡山、広島などの政令市や首都圏の自治体も国の支援のもとで独自の計画づくりを進めており、全国的な動きになりつつある」という。例えば「北九州市は計画案の中で『厳しい財政状況のもとでは市民生活を支えるサービスの提供が困難になる』と指摘。居住区を市街化区域の6割程度に絞り込む。集約拠点を地図に落とすと恐竜のように見えるため『コンパクトザウルス』と名付けて市民にPRしている」。また「和歌山市は計画策定とあわせて郊外への立地を規制する。規制を緩めた結果、農地が虫食い的に宅地に変わり『ゴミ収集や上下水道の整備などの行政サービスに影響が出る恐れがある』(都市計画課)という。これまで50戸以上の住宅があれば郊外でも開発できたが、4月から小学校から300メートル以内などインフラが整う地域に限定する」という。このような厳しい立地適正化計画が今国によって求められています。「国も自治体の財政破たんを回避するため、機能集約を強力に推し進める方針だ。自治体向け交付金の支給要件のひとつに立地適正化計画の策定を義務付けるなどの措置を講じており、今後も自治体で同様の取り組みが広がるのは確実だ」と報道しています。

大阪市も少子高齢化の時代にあり、この課題から逃れることはできません。しっかりと時代と向き合って、大阪市にとっての立地適正化とは何なのか、行政と議会は責任を持ってその方向性を示し、計画を策定しなければなりません。『今のままでいい』という姿勢は、無知か責任放棄かのどちらかであると言われても仕方ありません。