WiLL2021年7月号に掲載された日本維新の会・馬場幹事長と西岡氏の対談より。『河野談話を“上書き”せよ』

WiLL 2021 年7月号に掲載された日本維新の会・馬場伸幸幹事長と麗澤大学客員教授・西岡力氏との『「従軍慰安婦慰安婦」はこうして抹消された 』と題する対談記事の後半部分を紹介します。

河野談話を“上書き”せよ

【西岡】今回の政府の答弁書によって、慰安婦や戦時労働者に対する日本国内の誤解は解消に向かうでしょう。次のステップは、国際社会に拡散された「慰安婦=強制連行された性奴隷」というイメージを払拭することです。河野談話でも、「軍や官憲による強制連行は認めていない」というのが政府の立場です。だからこそ、今回の答弁書でも「『従軍慰安婦』は不適切 」という決定になった。しかし国際社会は、河野談話によって日本が強制連行を認めたと認識しています。日本政府に対して、元慰安婦や遺族への賠償を命じた1月のソウル中央地裁判決でも、河野談話が引用されている。つい最近も、左派の学者たちが署名したラムザイヤー論文を批判する連判状に引用されました。

【馬場】河野談話には「軍や官憲による強制連行」があったと読める部分がある。この箇所です。《慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった》

【西岡】河野談話を発表するにあたっての調査では、朝鮮半島で強制連行の証拠は見つかりませんでした。ところが、当時の金泳三政権が「とにかく『強制』を認めてほしい。そうすれば、韓国政府が支援金を払い、慰安婦問題を終わらせる」と言った。だから「強制」の定義を「本人たちの意思に反して」として、最初の傍線部分が加えられたんです。そりゃあ、親が「行け」と言っても、本人は「イヤだ」と言うでしょう。

【馬場】最大の問題は「官憲等が直接これに加担したこともあった」という部分です。どう読んでも、「軍や官憲による強制連行」を認めたと読める。

【西岡】これは役人のレトリックです。河野談話から四年後の1998年、中川昭一さんが会長、安倍前総理が事務局長を務めた「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」の勉強会に参加しました。そこに河野談話を策定した当時の幹部が来ていたので、「官憲等が直接これに加担したこともあったという部分は何を示すのか、聞いてみたんです。すると幹部はその部分はインドネシアの『スマラン事件』のことだという。

【馬場】朝鮮半島の事例ではないんですね。

【西岡】スマラン事件とは、当時オランダ領だったインドネシアに駐屯した日本軍がオランダ兵を捕虜にし、その中の女性を数ヶ月、売春宿で働かせた“事件”です。それを知った軍本部は売春宿を閉め、責任者は戦後、B・C級戦犯として死刑になりました。先ほど引用したのは慰安婦全体について書かれた部分で、朝鮮半島については次の段落に書かれています。それを読むと、「軍や官憲による強制連行」は書かれていない。

【馬場】なるほど、そういうことでしたか。でも河野談話を普通に読めば、朝鮮半島で軍や官憲が強制連行したという理解になります。

【西岡】日本政府が「河野談話を継承する」とだけ言い続けていれば、国際社会は日本が軍や官憲による強制連行を認めたと誤解し続けるでしょう。河野談話の“誤読”を正すためにも、新たな談話を出し、河野談話の“上書き”をしなければなりません。「誤解を生んだ部分はスマラン事件という逸脱行為であり、朝鮮半島で軍や官憲による強制連行はなかった」とはっきり明言すべきです。

【馬場】まさに現代の政治家の責務ですね。河野談話の“上書き”なしに、慰安婦問題は終わりません。

【西岡】今回の答弁書の最後には、「これまで以上に対外発信を強化していく考えである」と書かれています。「これまで以上」の対外発信を行うキーポイントこそ、河野談話の“上書き”なのです。私は韓国語にも翻訳された『よくわかる慰安婦問題』(草思社)の執筆時に新談話の私案をつくりましたが、民間人では限界があります。ぜひ馬場議員には、「河野談話を上書きすべきではないか」と質問趣意書を出していただきたい。

【馬場】期待に応えられるよう、野党議員として全力を尽くします。

有村治子参議院議員の質疑(3)、2021年3月24日、参院文教科学委員会「日韓請求権経済協力協定について」

《日韓請求権協定について》

【有村治子参議院議員】それではまた慰安婦のことを引き続き伺います。日本と韓国は1965年に日韓請求権経済協力協定を締結し、国交を正常化させました。両国がお互いに努力し、歩み寄り、14年の歳月をかけてやっと合意したこの協定において、慰安婦のことはどのように論じられ、いかに対応されているのでしょうか?

【石突参事官】お答え申し上げます。日韓請求権協定におきましては、慰安婦問題を含め日韓間の財産請求権の問題は、この1965年の日韓請求権経済協力協定で完全かつ最終的に解決済でございます。

【有村治子参議院議員】その協定が結ばれる過程で、どのように慰安婦問題が論じられたのかということを伺っております。

【石突参事官】交渉の日韓国交正常化交渉関連文書の中に、南方占領地域慰安婦の預金残置財産との記述が存在することは承知しております。いずれにせよ慰安婦問題を含めて、日韓間の財産請求権の問題はこの交渉の結果締結された1965年の日韓請求権経済協力協定で完全かつ最終的に解決済みでございます。

【有村治子参議院議員】という日本政府の主張にもかかわらず、今年1月に出されたソウル地裁の判決においては元慰安婦等原告の損害賠償請求権は、今おっしゃった1965年の請求権協定の合意に含まれないと、韓国が主張しています。これに対する日本政府の見解をお聞かせください。

【岡野国際法局長】1965年の日韓請求権経済協力協定では一項というのがございますけど、請求権の問題が完全かつ最終的に解決されたものであることを明示的に確認しております。国と国との間の問題として日韓間では個人の請求権を含めてこれらの問題は完全かつ最終的に解決済というのは明白でございます。

【有村治子参議院議員】この限られた30分の質疑においても、やはりこの慰安婦問題というのは根が深いということを、皆様実感されると思います。多くの慣習や伝統を背負って重責を背負われる文部科学大臣としてのお立場と、日本の尊厳を大事に活動してこられた政治家としての信念において、時に相克が起こってしまうであろうことも容易に想像がつきます。その中でより良い未来を作ろうと先頭に立って努力をされ、35人学級まもなく実現でございます。その実現など結果を出しておられる萩生田大臣のさらなるリーダーシップを念じ、共感をし、また与党の一員として、この教科書記述も含めて、本来のあやまるべきところはしっかりと国際社会に謝り、しかしいわれなき虚偽に対しては毅然としっかりと反論をして、その明確な分別をつけていく、そういう政治課題に共に背負って向き合っていきたいと思います。以上で有村治子の質疑を終了します。