有村治子参議院議員質疑(2)、2021年3月24日、参院文教科学委員会『ラムザイヤー論文について』

《ラムザイヤー論文について》

【有村治子参議院議員】ハーバード大学のマーク・ラムザイヤー教授 が戦時中の慰安婦に関する学術論文、「太平洋戦争における性サービスの契約」を発表されました。学識者による査読も経たこの論文において、教授は戦地の慰安施設 という心身ともに過酷でリスクの高い場所にあって慰安所事業主が女性を取り巻く各利害関係者など、どのような契約を結ぶことが合理的で信頼できると、それぞれのステークホルダー が考えて 行動したのか、法経済学的なアプローチでの解明をはかっておられます。 この論文の発表後、米国や日本 韓国においても様々な反応がでています。どのようなことが起こってますか?

【岸崎参事官】お答え申し上げます。個別の研究者による論文の内容について、政府としてコメントすることは差し控えたいと思いますが、ラムザイヤー・ハーバード大学教授のご指摘の学術論文は、査読を経て昨年12月にオンライン上で公表されたと承知しています。報道によれば本年2月ごろから、まず韓国、続いて米国において論文への批判や論文の撤回を求める動きが急速に広まったと承知しております。その一方で査読を経て公表された学術論文の撤回を一方的に求める動きについては、韓国国内や米国、日本の有識者等より学問の自由の観点からの懸念等も表明されていると承知しています

【有村治子参議院議員】自然科学であれ人文科学であれ、またどのような立場をとるにせよ、学術的探究や学術的成果の発表方法 、表現については法律や公序良俗に反しない限り、最大限尊重されるべきだと、考えます。根拠のない 係争や 感情論ではなく、論拠を明示せねばならない学術論文に対する反論や批評は、言論においてなされるべきだと考えます。様々な視点や意見を持つ人々が、それぞれフェアプレーの精神で論陣を張り、そして複眼的な検討を経て、より説得力のある真実を見出していくことこそ、学問や研究の強さであり、強靭さであり、民主主義の発展につながる尊い対話だと考えます。日本の文部科学行政を司るトップとしての文部科学大臣の御所見を伺います。

【萩生田大臣】研究者が外部から干渉されることなく、自発的かつ自由に研究活動を行いその成果を自由に発表することは尊重されるべきと考えています。なぜならそれぞれの研究者が自発的かつ自由に研究活動を行い、互いに競い合うことで真理に近づくことができるということを、私たちは歴史から学んできたと思うからです。したがってある研究者の研究成果に対する批判は、他の研究者の別の研究成果によって行われてこそ意義があるものになると思っております。

【有村治子参議院議員】明快な御答弁有難うございます。

 

有村治子参議院議員の質疑(1)、2021年3月24日、参院文教科学委員会 「 河野談話について」

ー《河野談話について》ー

【有村治子参議院議員】慰安婦問題については、平成4年(1992年)宮沢内閣として加藤紘一官房長官談話が出され、当時の加藤官房長官は強制連行を示す資料はなかったと明言をされています。しかしなぜまた翌年同じ内閣において再び河野談話出さなければならなくなったのでしょうか。官房長官談話という政府としては極めて高い談話が同じ内閣で立て続けに、慰安婦問題という同じテーマで発出されること事態大変異例なことであります。平成4年の加藤談話から平成5年の河野談話発表までの一年間、めあたらしい物件証拠の発見など歴史認識を揺るがすような事態がなかったにもかかわらず、  なぜ後者は強制性を認めるように至ったのかご説明ください。

【安中内閣参事官】平成26年6月20日に公表されました河野談話作成過程等に関する検証チームの報告書においては、加藤官房長官発表の後も韓国の世論においては慰安婦問題に対し厳しい見方が消えなかった状況を受けまして、当時の内閣外政審議室と外務省の間で、慰安婦問題に関する今後の措置について引き続き検討が行われておりました。各省庁におきまして加藤官房長官発表以降も引き続き関連調査を行なっていたことが確認されております。平成3年12月から河野長官の談話が発表されました平成5年8月まで関係資料の調査及び関係者からの聞き取りを行い、これら全体として判断した結果、平成5年8月4日の河野長官談話となったものでございます。

【有村治子参議院議員】やっぱり韓国の世論がこれでは許さないから、というのが大きな原動力ですね。実は河野談話が実際に発表される半年前、韓国側からの要求に応じて、この時点ですでに日本政府は慰安婦の強制連行あるいは強制性に言及する方針でいることを、当時の読売新聞、日経新聞、毎日新聞の各紙が報じています。これはソウルで行うことになる元慰安婦の方々への聞き取り調査が行われるはるか前のことでございます。まさに歴史的事実の検証というより政治的決着をはかったことがこの事実から伝わってまいります。河野談話が発表されてから、なお28年経ちましたが、強制連行を示す文書や物証はその後出てきているのでしょうか。

【安中内閣参事官】これまで日本政府が発見した資料の中には軍や官憲による、いわゆる強制連行を直接示すものは見つかっていないということです。

【有村治子参議院議員】いまだに見つかっていないということでございます。ではこの間、強制性を裏付けるような公文書、証文等が韓国から提示されたことはあるのでしょうか?

【安中内閣参事官】韓国政府からの状況につきましては、承知していないところでございます。

【有村治子参議院議員】承知していないというのは、韓国から今のところ一つも報告をされていないということでよろしいでしょうか。確認します。

【安中内閣参事官】日本政府がこれまで確認した資料の中にそのようないわゆる強制連行を直接示す資料は見つかっておりません。そういうことでございます。

【有村治子参議院議員】終戦から75年がすぎ、河野談話から28年以上経った今でも、日韓両国において強制連行を示す物証は出てきていないということでございました。にもかかわらず河野談話を作成する過程で強制性を認めることになったその論拠、根拠というものとは一体何なんでしょうか?

【安中内閣参事官】河野談話の作成過程におきまして先ほど申し上げましたが平成3年12月から平成5月8月まで関係資料の調査のほか、元軍人など関係者からの聞き取りを行なっております。これらの関係資料の調査、関係者からの聞き取り調査を行なった、全体として判断した結果、河野長官の談話となったものでございます。

【有村治子参議院議員】苦しい答弁です。全体として判断した結果ということで具体的な事例をお示しになれず、いま終戦から75年経った今もお示しにならない。これはご答弁いただいた方の能力の問題ではなく、やはりこの慰安婦問題の本質の一端を表しているというふうに、理解をしております。強制連行を認識し言及することを必要なまでに日本政府に求めてきた韓国とのやりとりの経緯は、外務省のホームページ、河野談話作成検討報告、これ2014年につくられた学識者によって作られたものですが、そこで赤裸々に書かれています。22ページほどの資料でございますが、詳細に読んでみますと、なるほどここまでのことを日本政府は韓国から求められて、ここまでの譲歩を迫られたのかと、驚愕するような内容でございます。そこには韓国の世論がこれでは許さないというくだりがいっぱい出てくるんですが、そこにいやいやこれでは日本の世論が許さないということが、なかなかそこから見ることができないのはちょっと苦しい報告だなというふうに思っております。