今、注目の共産主義について考える(77)。北鮮帰還事業(6)。朝日新聞の報道は異常で異様。

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上の写真は、昭和34年12月20日の朝日新聞夕刊です。朝鮮中央通信社から入手したという写真を何の疑いもなく掲載し、「近づいた祖国を見守る7人連れの家族」「帰還者を歓迎して清津埠頭で能楽舞を繰り広げる清津市美術員たち」「市民の歓迎にわきたつ清津埠頭」「金日成首相の額と国旗を飾って歓迎、清津埠頭で」などと報道しています。

さらに、「北朝鮮赤十字乗船代表団は、さる16日、清津に着いた第一次帰還者の上陸風景や熱烈な北朝鮮側の歓迎の模様を写した写真を持ってきた。代表団の話では、第一次帰還者は清津埠頭で1万人もの歓迎を受け、特別休憩所までの沿道には5万人の市民が出て拍手と歓声で迎えた。そして3日間、清津の特別休憩所に滞在し、本人の希望に応じて北朝鮮の各地に向かったという。なお同船で17日付『民主朝鮮』と『労働新聞』が届いた。いずれも4ページで一面トップから三面まで帰還者歓迎で埋め尽くしている。見出しは全面通しで『祖国は熱い心を持って抱き取る』とうたい、社説にも『熱烈に歓迎する』と述べている」と、北朝鮮代表団の言葉をそのまま載せています。

これを見ますと、朝日新聞は北朝鮮のスポークスマンとなっているようです。朝日の記者は「特別休憩所」に足を運んだのだろうか?

今思えば事実は、清津についた帰還者は騙されたことに気づき後悔の涙を流していたというのに。本人の希望は踏みにじられ極寒の地に送られ強制的に働かされたというのに。自由は全く認められていなかったのに。朝日新聞はまるで見てきたかのような“嘘“を報道していたことになります。朝日も騙されていたという言い訳は通じません。なぜなら事実を確認しなかったし、確認できたはずなのに確認しようともしなかった。北朝鮮代表団や朝鮮中央通信社の言われるがままです。

朝日新聞を読んでいくと、まさに北朝鮮の手のひらに乗せられて、朝日新聞が北朝鮮のスポークスマンの役割を担わされたとしか思えません。“北朝鮮は地上の楽園”という北朝鮮の虚偽に加担させられたと言わざるをえません。もし万が一、自ら担ったということであれば、もはや許されることはないでしょう。

今、注目の共産主義について考える(76)。北鮮帰還事業(5)。昭和34年12月14日、地獄への旅立ち。

昭和34年12月14日、新潟港から北朝鮮に向けて、帰国事業の第一次船が出航しました。今思えば、これはまさに地獄への旅立ちとなりました。なぜかかる帰還事業が行われたのか。このことは政府のみならず帰還を煽ったマスコミの責任も厳しく問われなければなりません。

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当日の朝日新聞夕刊には「北朝鮮へ帰る在日朝鮮人238世帯975人を乗せた第一次帰還船クリリオン号は14日午後2時9分、トボリスク号は同2時31分、相ついで新潟港を出港、清津港へ向かった。世界の注目を浴びてきた『自由圏から共産圏への最初の集団大移住“北鮮帰還問題”』は11ヶ月の曲折ののちようやく実りを見せたわけである」と記されています。朝日は「実りを見せた」と評価しています。

そしてこの日の朝、北朝鮮赤十字代表団の金珠栄副団長は帰還船トボリスク号で朝日のインタビューを受け、「受け入れ準備は万全である」として次のように語ったと報じられています。「一、技術の有無は別として職業は帰還者の希望通り工業面にも農業面にも向ける。教育も希望や態度によって受けさせる。学校では働きながら勉強しており、技術の義務教育も今年から始められている。工場では技術専門の夜間教育もしている。一、労働者の平均賃金は月50円(ウオン、日本円で1万5千円=日銀調べ)物価が安いのは住宅費、電気、水道料、米などだ。住宅費は二部屋のアパートで月50銭ぐらい。米だけは配給だがこれも月50銭足らずだ。衣料は配給ではない。一、日本から一銭も持ち帰らない帰還者も政府が準備金を支給し、衣食住すべての面倒を見るから心配はない。病気も保険で直してもらえる。1日の労働時間は8時間である。農民の労働も機械化に入っているので軽くなるだろう。映画なども発達しており、テレビももうすぐ始まる。一、帰還者の受け入れ準備としては都市や農村に1万戸の住宅を用意しているが、帰還の進展とともに続々建てる計画だ。みんなブロック建てのアパートや農村住宅などで、組み立て式だから速度が早い。8分間に一戸の割りで建設が進んでいる」と朝日新聞は報じています。これが事実なら、当時の日本の社会事情からみれば、まさに“地上の楽園“です。しかし、朝日新聞は確認したのでしょうか。報道以後も確認した形跡はありません。確認もせず地獄のような社会を“地上の楽園”と報道し続けた責任は地球よりも重いと言わなければなりません。

私はこの記事をみて、朝日新聞は本当におろか者か、あるいは北朝鮮の手先なのかと思わざるを得ません。「8分間に1戸」が建設される住宅を想像したのだろうか?「1日の労働時間は8時間」「病気も保険で直してもらえる」「職業は帰還者の希望通り」「テレビも見れる」などと北朝鮮代表団の言葉をそのごとく報道しています。疑問に感じなかったのでしょうか。当時の北朝鮮の事情を直接取材もせず確かめもせず、鵜呑みにして、言われるままに報道しています。報道機関として失格です。

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上の写真は、昭和34年12月21日の朝日新聞です。確認したわけでもないのに「身ぎれいな町の人、立ち並ぶアパート」「希望の顔」と北朝鮮を絶賛しています。これを読んだ人は、北朝鮮はまさに“地上の楽園”だと信じたことでしょう。朝日のこのような報道が帰還へのさらなる誘導になったと言えるでしょう。