大阪の都市制度改革の必要性について考える(39)。立命館大学教授、村上弘氏の指摘について考える。

立命館大学教授村上弘氏の指摘する「都構想」のデメリットといわれる事について、長年地方政治の現場にいて、そこから得た経験をもとに、考えてみました。

村上氏は、デメリットとして1️⃣市の政策力が消え、大阪衰退。2️⃣ニーズのある市の高度施設が消え、大阪衰退。3️⃣旧大阪市の重要課題・民意の軽視。4️⃣直接に国と交渉できる政令指定都市の地位もなくなる。都市計画権も失う。市交通局の「完全」民営化でサービス低下。5️⃣ニーズのある市の高度施設が消え、不便になる。6️⃣自治体としての特別区が競争。切り下げ、格差も。7️⃣大阪市と横浜、神戸などの競争が消える。8️⃣市の職員組織がスケールメリット、専門性を失う。9️⃣24区ごとの施設や地名が消えるおそれ。以上9点を都構想のデメリットとして列挙しています。そして代替案として「府市調整会議」を提案しています。その理由として①「再開発、都市基盤整備は(橋下知事以前)かなり府市が協力。京都などでも同じ」②「ムダな二重行政だけを、政策評価制度で減らす」としています。「府市調整会議」でムダな二重行政はなくせる、また府市協調が可能だと断言しています。そして③「総合区の導入」を提唱しています。

まず村上氏の提案について、総合区については現在案をまとめるところまで来ています。ただし、自民党は反対しています。「府市調整会議」を設置すればうまくいくとの提案ですが、大阪府・大阪市の関係が長い間、ふ(府)し(市)あわせと揶揄されてきたことを氏はご存じないようです。この府と市の不幸せな関係から莫大なムダを産んできた二重行政が行われたことを氏はご存知ないのでしょうか。大阪では「府市調整会議」に当たる「大阪会議」が導入されましたが、全く機能しなかったことを氏はご存じないのでしょうか。村上氏の提案は全く説得力を持ちません。

デメリットといわれる事について。1️⃣2️⃣の施設がなくなるとか大阪が衰退するとの指摘には違和感を感じ、単に氏の思い込みのように思われます。私はむしろ反対に大阪の成長の可能性を感じます。3️⃣については特別区は、議員・区長の選挙がありますので、民意を反映しないとの指摘は当たらないと思います。4️⃣広域行政は都に、基礎的行政は特別区が担うとの役割分担であります。政令指定都市は無くなりますが、国との交渉は広域行政でしっかりやります。地下鉄の民営化は議会の3分の2以上の賛成で可決しました。5️⃣根拠がなく思い込みではないでしょうか。6️⃣地域事情を反映した施策が行われる事によって地域の特色が生まれるということです。7️⃣東京都や世界の大都市との競争、また副首都として成長していくということです。8️⃣市職員は特別区役所の基礎的行政を担う職員に、また大阪全体の広域行政を担う職員になっていただきます。9️⃣地名は残していくというのが都構想の考えです。

以上ご指摘を拝見さしていただきましたが、単に学者の考えと政治家の考えの相違だけではないとの感想です。

大阪の都市制度改革の必要性について考える(38)。橋下前大阪市長の言より。ニアイズベターについて。

「ニア・イズ・ベターについてさまざまなご指導をいただきました。議員がおっしゃった点はそのとおり、地域のコミュニティとかいろんなところでニア・イズ・ベターを実現していく、そのとおりだと思いますが、ただし、一番重要な要素は行政の予算編成権です。ここを抜きにしてニア・イズ・ベターは語れません。行政の予算編成権をできる限り住民の近くに持っていく、これこそが一番のニア・イズ・ベターの根幹でありまして、ここを避けたところで、周辺のいろんな政策等を掲げてニア・イズ・ベターだといっても、肝心な部分を抜かすのは、それはニア・イズ・ベターにならないと思っています。行政の予算編政権をいかに住民の近くに持っていくか、これがニア・イズ・ベターであり、それを実現するのは特別区設置以外はありません」(平成26年10月本会議)。