大阪の都市制度改革の必要性について考える(36)。大阪市は14年前、新しい都市制度への移行を希望していた。

平成15年の12月。当選したばかりの関淳一市長は「新たな大都市制度のあり方」として「スーパー指定都市」の実現を提案しました。「大阪市がその実態と能力にふさわしい権限と財源を持ち、名実ともに大阪・関西圏を牽引し得る『スーパー指定都市』の実現に努めてまいります」と。時代的背景としては前年の平成14年11月、当時の磯村市長が大阪市財政非常事態を宣言し、大阪市の財政破綻が危惧される時代でありました。後任の関市長にとって財政再建は喫緊の課題でありました。こういう時代背景の中で、国に対して大都市財源の拡充要望とともに提案されたのが新たな指定都市制度(スーパー指定都市)というものでありました。その時の配布資料を見てみます。それは「新たな指定都市制度」(スーパー指定都市)と関西『州』の創設を提案するものです。このスーパー指定都市という概念は、現在政令指定都市市長会が提案している特別自治市構想と基本的には同じと思われます。この提案によれば、1️⃣「市域内の地方税をすべて市税として、市が徴収する」というもので、府県を蚊帳の外に置く内容であります。当時の大阪市税は6655億円。また大阪市域内から徴収する大阪府税は6716億円でした。この市税に匹敵する大阪府税をもすべて市税にするという提案で、これによって大阪市の財源不足を解消しようとするねらいです。そして『州』との関係については、「役割分担に応じた所要額を『州』に交付する」というものです。いわゆる財政調整です。2️⃣関西『州』の創設について。「原則として、市内の事務は市が一元的に実施し、『州』の事務は警察・治山治水等に限定する」という内容です。「広域課題への対応のため、府県合併を行い道州制を導入し、現在の府県域を超えて広域化を図る」。このように謳っています。いわゆる都道府県の廃止であります。府庁や県庁という役所を廃止する。府議会議員や県会議員の身分を廃止する。という内容であります。

しかし道州制の導入はあれから14年たった今も、国会では議論すら行われていないのが実情であります。具体的な設計図は何もありません。絵に描いた餅にもなっていません。さらに道州制の導入には都道府県の廃止・合併が不可欠ですが、自民党の地方議員・国会議員は果たして決断できるでしょうか。

橋下前大阪市長の「この特別自治市構想というのは、政令市の権限と財源を増やすということだけが軸となっていて、日本全体の統治機構をどう整理するかという視点が全く欠けている」との 指摘は、この問題の的を射ていると思います。

大阪の都市制度改革の必要性について考える(35)。「特別自治市構想」について、自民党大阪市議団の見解と橋下前大阪市長の見解。皆さんはどう思われますか。

自民党大阪市議団は大阪の大都市制度に対する解答は「特別市」だという。

特別市(政令指定都市市長会が提案している特別自治市構想のことと思われます)になれば「例えば、課題として上げられることの多いムダな二重行政についても、特別区なら完全になくなりませんが、特別市ならすべてなくせます。・・・・私たちは特別市こそが大阪の発展にふさわしいと考えています」。「大阪市が特別市になったら、ムダな二重行政を完全に解消できる。市が府県と全く同じ権限を持つことができる」。これが「大都市制度への解答」などと市政報告紙の『自民市民』に記載しています。残念なのは、この紙面では特別市構想の説明は全くなく、かかる主張のみしか記載していないことであります。

橋下前大阪市長の特別自治市構想についての評価を改めて紹介します。

「これは、先日、地方制度調査会でヒアリングに呼ばれて行ってきましたけれども、特別自治市構想はもうボロボロでした。もう論理的に破綻しています。これはなぜかというと、川崎市長の阿部さんが一生懸命、特別自治構想を言われていたんですが、地方制度調査会長の西尾会長から、では政令市の周辺の市町村の財源はどうなるんですか。この点については一切答えられませんでした。国全体の統治機構を考えたときに、では特別自治市というのは20の都道府県を増やすようなものになり、全国に67の都道府県をつくるような話になりますかというような、そういう指摘に対しても、特別自治市構想は何も答えられませんでした。と言いますのは、この特別自治市構想というものは、政令市の権限と財源を増やすということだけが軸となっていまして、日本全体の統治機構をどう整理するかという視点が全く欠けております。ですから、財政調整の問題もしかり、全くそのあたりについて整理できていない特別自治市構想は、地方制度調査会の中でもうボロボロに論理破綻になっているということです」(平成24年3月本会議)。

 地方制度調査会での「特別自治市構想」の議論については、前のブログで一部分ですが紹介していますので、参考にしてください。橋下氏のいう論理破綻した特別自治市構想を、自民党大阪市議団は「大都市制度の解答」と言っています。なぜなんでしょうかね。