大阪の都市制度改革の必要性について考える(41)。平松市政の時はどうだったのか。

平松市政の平成21年、

平松氏は政令指定都市に対してどのような認識を持っていたのでしょうか。「平成22年度国の施策・予算に関する提案」(平成21年6月)という文書があります。この中で大阪市の【現状・課題】との項目で、

「しかし、現在の政令指定都市制度は、①大都市の責任・権限に応じた税財政制度が存在しない→受益と負担の不均衡。②事務権限が特例的・部分的→一体的・総合的な行政運営に支障。③府県との不明確な役割分担→二重行政・二重監督の弊害。といった点で、もともと極めて不十分な制度である。大阪市は、このように不十分な制度の下、何とか母都市としての役割を果たしてきたが、今日的な経済・社会情勢下で、本市が担ってきた役割を果たして続けていくことは限界となっている」と記しています。

「本市が担ってきた役割を果たし続けていくことは限界となっている」との、極めて危機感をあおる文章となっています。この時期は平松市政の後半で、大阪市の財政破綻が将来確実視されるような、危機的な時期でもありました。平成14年に、磯村市長が大阪市財政非常事態宣言を発し、平成17年には『大阪破産』(吉富有治、光文社)という本が、「その日はいつか?日本初の大都市の崩壊」との見出しで出版されました。事実、平松市政で大阪市の財政当局は将来予測で、夕張市のように財政再建団体への転落の可能性について言及せざるを得ない状況となっていました。故に、もはや政令指定都市を「続けていくことは限界」という危機的表現になったのだと思います。

この【現状・課題】認識から、『道州制を見据えた新たな大都市制度の創設』という施策要望を国に求めたのだと思います。道州制導入を前提とした『新たな大都市制度』とは、今の自民党がいう特別市(政令指定都市市長会が提案する、特別自治市のこと)制度のことだと思います。また、『道州制』はいうまでもなく、府県の廃止を伴いますので、平松市政は「府県の解消を前提とした、都市の自立と連携の拡大をめざす道州制の実現」を国に求めています。

自民党市会議員団は平松氏と同じように、府県を廃止し[特別市]を実現すると言っていますが、自民党府会議員団とは話し合った結果、府議団も府県の廃止に賛成した上で、[特別市〕を提案しているのでしょうか。余計なお世話かしれませんが、心配しています。

大阪の都市制度改革の必要性について考える(40)。区役所について、共産系労組の主張を考える。

私の手元に「ベテラン市職員の告発、大阪市役所のナカは闇」という本があります。著者は初村尤而さん(当時、大阪市役所労働組合浪速区役所支部執行委員)です。1991年初版、出版元は日本機関紙出版センターです。共産党系ということでしょう。少し古い話(26年前)になって申し訳ないのですが、ちょっとこの本を見てみたいと思います。この本の中の21章に《役立たずの区役所、そのからくり》という項目があります。その中で著者は、

「区役所は大阪市政の第一線の役所。何か困ったことがあったら、区役所に言いに行けば何とかしてもらえるのではないか、と区民ならそう期待しているのですが、どっこいそれほど甘くない。実際は、思ったほど頼りがいがないのが区役所の現実です」。との書き出しで始まります。続いて、

「例えば『近くの公園の街灯が消えているから直して欲しい』とか、『国民健康保険料の計算方法がおかしい』とか、『公金を勝手に使い込むとはけしからん』といった、ちょっと込み入った話になると、『区役所ではどうにもなりません』と断られるか、せいぜい『関係先に連絡しておきます』といわれるのがおちです。結局、大事なことは中之島の本庁や他の部署が決め、ただ窓口で受け付けたり、税金を集めたりするだけが、区役所の姿なのです。区長なんか、ただのヘソだと悪口をたたく人もいます。区役所が大事なところで頼りがいがない、というのはそういう意味です」。「区民全体のために使われるお金はほとんどなく、中之島の本庁が全てを握っていると言ってもいい現状です。これでは区民がいろいろやってほしいと思っても、できるわけがありません」。と区役所の問題点を指摘しています。

次に「区役所をつくり変えよう」と呼びかけ、

「今みたいな区役所ではどうしょうもないから、これを改革しようという提案が、6年前に発表されました。・・・まず改革の第一段階として、区民が主人公になる行政区に近づけるため、①生活道路や小さな公園、それに保育所や老人センターなど地域的な社会福祉施設の維持管理や、ある程度の規模までの土木工事の施工などは区役所でする。②区役所と区長の権限をもっと強くし住民要求の解決に役立つ区役所にする。③土木公営所や清掃事務所、保健所、保育所など区内にある事務所などを区役所に統合してしまって、区民の要件の多くが区役所でかなえられるようにする、という提案です」。

そして「いっそ区長は選挙で決めたら」として、

「そして第二段階が画期的です。①区民の選挙で選ばれた代表による区民議会を設けて、区民の声を区政に反映させるようにする。②区長は、区民の選挙で選ばれた人を市長に任命させる、という提案です。こういう改革をすれば、今の区役所とは違って、区民にとって本当に役立つ区役所が登場するのは間違いありません」。と提案しています。

なかなかおもしろい提案ですね。当時としては大胆な提案、一考に値すると思います。ただ肝心の共産党からの議会での発言は、私はあまり聞き及ばず、発信力がないように感じます。この区役所改革は都構想の最重要課題であり、すでに橋下市政で大きく進んだ部分もあり、今は総合区の議論もなされるようにもなりました。しかし、最終的には区長や区議会議員を選挙で決める特別区制度の導入によって、初村氏が指摘された課題の多くは解決されるのではないでしょうか。