大阪都構想実現の必要性について考える(82)。「長い目で見て少子化の影響が一番大きく出てくるのが社会保障の分野だ」

『自治体崩壊』(イースト新書、田村秀、自治省出身、新潟大学法学部長)の中から、

第3章人口が減ると何が問題なのか、《少子化が招く社会保障費と借金残高の増大》より引用します。

「長い目で見て少子化の影響が一番大きく出てくるのが社会保障の分野だ。少子化が中長期的に続けば、単に子供達だけでなく社会を担う現役世代の減少につながっていく。少子化の裏返しの高齢化が進むと医療や介護など社会保障費の増加は止まらない。もちろん、数は増えても仕事を続けたり、社会活動に取り組む健康な高齢者が多い限りはあまり心配にはならないが、実際にはそう簡単にはいかないだろう。

国民全体がどれだけ医療にお金を費やしたかを示す国民医療費は毎年増え続け、1990年に20兆円を突破した。1999年には30兆円を突破し、2013年には39兆円を超えている。2000年から介護保険制度も導入され、本格的な高齢社会の中で増え続ける社会保障費の圧縮が議論されているが、簡単に減らすことのできない義務的な経費だけに、世代間でできるだけ公平に負担し合おうという発想のもとに消費税の税率アップが実施された。

現役世代の負担は税だけではない。今の若者の少なからずは年金の将来を絶望的なものと思っているのではないだろうか。負担だけ求められ、自分たちが受給する頃には満足な財源もなく、支給額もごくわずかと考えるのも無理からぬものではある。そうであれば、公的年金には期待せず、自分で老後の備えを貯めようと考える若者も増えてくるだろう。そうなるとますます年金制度は危ういものとなる。

社会保障とは相互扶助の世界である。お金を持っている者と持っていない者、若者と高齢者、サラリーマンと自営業者、様々な人々が支え合うことが基本である。理想はみんなでお金を出し合い、もしもの時には困っている人に出し合ったお金の中の一部を提供することで賄うことだ。しかしながら、実際にはすべてを各自が出し合ったお金だけでやっていくことは困難だ。様々な社会保障の分野に税金が投入されるのは洋の東西を問わないが、投入する額が年々増えていけば、それだけ国家財政に悪影響を及ぼしかねない。

すでに国と地方を合わせると1000兆円を超える債務残高となっている。これはGDPとの比較では先進主要国の中で断トツに高い割合となっている。もちろん、そのような状況になってもギリシャやスペイン、イタリアのような財政破綻にならないのは、民間部門の貯蓄が多いことなどによるが、将来の税収増が見込めない中での借金の増加は、日本国債の信用も落としかねない由々しき事態に陥ると見る向きも少なくない。

社会保障政策の後退は老若男女を問わず社会に対する不安を招きかねないだけに、中長期的には出生率を回復させることを目指す政策を進めることは多くの人が肯定するのではないだろうか」。

大阪都構想の必要性について考える(81)。日経新聞も「歳出最大1.1兆円削減、都構想、府市が試算公表」と報道。

日経新聞は7月12日の朝刊で都構想の経済効果試算結果を報道しました。その中で、疑問の声、として自民党会派と公明党会派の見解について次のように記事にしています。

「都構想を推進する大阪維新の会代表の松井一郎府知事は『専門の学者によって効果が示された』と評価。都構想反対の自民市議団幹部は『根拠が乏しいのでは』と批判し、総合区を主張する公明市議団幹部も『(都構想を)優位に見せるための数字だ』と指摘した」と紹介しています。

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府市の二元行政、二重行政が大阪経済の発展を阻害してきたことは、以前から指摘されていたことであります。したがって大阪の大きな政治的課題でもありました。今回経済の専門家によって都市制度改革による経済効果が数字として示されたことは大きな意義があります。この試算によって、大阪の二元行政解消、二重行政解消の必要性は100%明確になったと言えます。『根拠が乏しい』との自民党の批判は、いよいよ行き詰まった敗者の遠吠えにしか聞こえません。