中国共産党政府との関係を見直そう(120)。有村治子参議院議員(2)令和3年5月13日参院文教科学委員会での質疑、『孔子学院を問う』

【有村治子参議院議員】教育現場のみならず、米国議会でも動きがあります。一昨年上院の国土安全保障政府問題委員会は米国の教育制度に対する中国の影響について公式な報告書を発表しています。孔子学院について、この報告書ではどのような指摘がなされていますか?続けて外務省にお伺いします。

【外務省有馬参事官】お尋ねの報告書は米国上院国土安全保障政府問題委員会の常設調査小委員会において2019年2月に公表されたものでございます。報告書では第一に、中国政府が孔子学院に関連して米国教育界に対し1億5千万ドル以上の 資金を提供してきたこと。 第二に中国政府が孔子学院の予算、教育内容、採用といったほぼすべての側面を管理していること。第三に、孔子学院の教職員は中国の国益を擁護するよう 制約していること。第四に、一部の学校との合意では契約内容を非公開とする条項が付されているが、学問の自由を確保するために契約内容は公開されるべきことなどが記されております。また米国国務省は査証が申請された際に、孔子学院との関係を記録しておらず、結果として孔子学院に関連する中国籍のものどれだけ米国内にいるかを把握していない、とも記されております。さらに中国政府から一定額以上の資金を受領した学校のうち7割近くが義務に反して教育省に報告せず、教育省もそれらに対応できていないこと等が、記されております。

【有村治子参議院議員】ありがとうございます。この報告書を公開した上院では今年3月、孔子学院についての管理を強化するための法案を、与野党全会一致で可決をしています。米国議会での警戒感と相まって、ホワイトハウスも動いています。昨年夏トランプ政権においてポンペオ国務長官は、孔子学院が中国共産党による世界規模のプロパガンダ、政治宣伝工作に使われていると、断定しました。資料3のとおり昨年10月にはポンペオ国務長官とデボス教育長官が連名で、全米各州の教育長官と全米各大学の学長に通達を出し、アメリカの教育機関が孔子学院を受け入れることの深刻な影響を国中に警告をしています。アメリカが自国の教育制度を脅かすリスクとしていかに孔子学院を警戒しているのか、その緊張感が伝わってきます。すなわち共和党政権であれ民主党政権であれ、与野党の区分なく米国の教育大臣も外務大臣も、はたまたCIAやFBIという情報捜査機関までもが、中国共産党にとって都合の良い主張と仕組みが、孔子学院によってアメリカの教育現場に浸透していることを警告し、民主主義国家としての最大級の対策を打ってきています。外務省にお伺いします。では米国以外の自由民主主義国では孔子学院についてどのようなことが起こっているのでしょうか?

【大臣官房曽根審議官】お答えします。米国以外に関しましても、報道等によりますと、カナダではマクマスター大学とサーブル副大学。フランスにおきましては、リヨン大学。ドイツにおきましてはストットガルトメディア大学とホーエンハイム大学。スエーデンにおいてストックホルム大学、こういった大学等において機関の閉鎖措置がとられていると承知しております。これらの機関を含む中国への、各国における動向につきまして、外務省としても常日頃から情報収集に努めておりまして、随時関係省庁とも交流しているところでございます。

中国共産党政府との関係を見直そう(119)。有村治子参議院議員(1)令和3年5月13日参院文教科学委員会での質疑。『孔子学院を問う』

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【有村治子参議院議員】我が国の高等教育機関における健全性を確保するために、各国の大学が直面している課題について質問します。孔子学院についてです。今年3月防衛省の防衛研究所が「東アジア戦略概観2021」を発表しました。これは日本を取り巻く東アジアの安全保障環境を学術的に研究をし、日本語と英語で毎年公表されているものです。驚くべきことに、ここに孔子学院が取り上げられています。教育部門であるはずの孔子学院が、米国の安全保障の章において詳細に分析されており、アメリカが国家安全保障上の重要課題とし孔子学院を警戒している近年の状況を日本の防衛省防衛研究所がレポートしている、という点に深いメッセージあるのではないでしょうか。孔子学院は2004年外国における中国語と中国文化の普及を図る目的で、中国政府肝煎りの国家戦略として設置されました。NGO非政府組織の形をとっていますが、実態は中国共産党、中国政府教育部を中心とした各省機能を結集させた国家プロジェクトであり、中国国内の大学と受け入れ国の大学を提携させて中国から教員や教材を各国に派遣して、世界的な規模で影響力拡大がはかられてきました。そもそも孔子学院という名前は、約2500年前の中国の思想家、孔子の名前を冠していますが、論語や儒教とは直接関係はありません。文化大革命では迫害の対象となった孔子も、現在においては世界に冠たるブランドネームとして中国共産党に重用されており、胡錦濤政権に続く習近平国家主席もソフトイメージを使った対外工作を殊の外重視しており、外遊先では積極的に孔子学院を訪問しています。資料の1と2をご覧ください。2019年現在、世界の162の国々や地域において大学レベルに設置された550の孔子学院と小中高校などに設置された1172の孔子学級が存在しています。日本においては現在、少なくとも14の大学に孔子学院の設置が確認されています。この15年ほどの間に、孔子学院は破竹の勢いで世界的な拡大をはかってきましたが、資料4、読売新聞曰く「中国のスパイ拠点警戒、米国孔子学院閉鎖、次々」という記事で、読売が報じている通り、近年むしろ各国で警戒感が増し、孔子学院の閉鎖も相次いでいます。我が国においても  拠点を閉鎖したところがあります。そこで外務省にお伺いします。中国が戦略的にターゲットにし、世界最多百十以上の孔子学院を設置されてしまった米国では様々な摩擦が起きています。米国の大学で教えている教授陣、教職員によって構成される、米国大学教授協会、及び全米学術協会は近年孔子学院に対し警告の声明を出しています。どのようなものでしょうか?

【外務省大臣官房有馬参事官】お答え申し上げます。大学教授や学識者からなる会員団体である米国大学教授協会は2014年に発した声明の中で、大学が第三者による統制を許すことは学問の自由や大学の自治の原則と相容れないとして、孔子学院と各大学との間の合意内容が適切な形で見直されない限り、大学は孔子学院との関係を断つことを推奨するとしております。また米国の非営利団体である全米学術協会は2014年度に発表した報告書の中で、米国の孔子学院には知的自由や透明性の観点から懸念があるとして、すべての大学に対して孔子学院を閉鎖するように呼びかけております。