今、注目の共産主義について考える(85)。北鮮帰還問題(14)。チュチェ思想の国は地上の地獄だった。帰還者を待ち受ける強制収容所
在日朝鮮人を両親に持つ青年が語る、強制収容所での10年と、決死の亡命劇『さらば、収容所国家北朝鮮』(姜哲ファン、監修落合信彦、1994年2月発行)という本があります。姜氏は北鮮帰還事業で北朝鮮に渡った在日朝鮮人を両親に持ち、北朝鮮で生まれた人です。この本には北鮮帰還事業によって帰国した人々とその日本人妻たちの悲惨極まる状況が記されています。この本の中の“強制収容所“に関する記述を紹介します。
「そう、強制収容所には完全統制区域と革命化区域の2種類がある。前者は主に政治理由で罪に問われた本人が収容され、死ぬまで出ることができない。後者は私たちのような重罪人の家族や、政治的理由でも比較的罪の軽い者が収容される地域。飢えと寒さに耐えて生き延びれば、いつかは出られる可能性が高い。早いのもは2、3年で出所している。北朝鮮にはこうした収容所が12ヶ所あり、計15万人〜16万人が収容されている。私が収容されることになったのは平壌から北東に約150キロの地点にある耀徳(ヨドック)収容所だ。この収容所は咸鏡南道耀徳郡にあり、平安道と咸鏡道を分ける山岳地帯の東側に位置している。ここにはこれまでに約5万人もの罪もない人々が強制収容され、その1割が日本からの帰還者で占められていた。他の収容されている人々は『体制批判者』『外国へ逃亡を企画』『反党分子』『外国のスパイ』『朝鮮戦争時の治安隊加担者』とその家族、それに『旧地主』『親日派』『宗教家』などである」「広大な収容所は徳山と彩霊峰を結ぶ高い尾根によってふたつに区切られている。収容所の正門から見て左側が私たちの収容された『革命化区域』。右側が永遠に生きて出られない『完全統制化区域』。この両者の境界線には高圧電流が流れる二重、三重の鉄条網が走っている。ちなみに噂では金賢姫さんの家族は耀徳収容所の『完全統制化区域』に入れられているという」。
「日本からの帰国者だけの居住区域である10班村には、私がいた約10年間のあいだに約5800人が送り込まれてきた」「耀徳収容所に初めて在日朝鮮人帰国者が送り込まれたのは1974年。このときは約100世帯800人ほどが革命化区域に収容された。その後、年を追うごとに帰国者の収容者は増え続け、毎年500〜1000人のペースで送り込まれてきた。もちろん収容者は100パーセント何の罪も犯していないのだから、当然その家族には収容される理由など、あるわけがない。それにもかかわらず、このような蛮行が実施されたのは、金日成・金正日親子が日本からの帰国者を体制を揺るがす可能性のある危険分子とみなしていたからだ」と記述されています。
まさに、地上の地獄としか言えません。想像をはるかに超えた悲惨な状況です。戦後最大の人権侵害事件です。このような共産主義チュチェ思想の国を、いったいなぜ“地上の楽園”と宣伝したのでしょうか。日本の政党やマスコミはどのように関わったのでしょうか。責任が問われます。