大阪の都市制度改革の必要性について考える(54)。過去の大阪府議会を検証する(3)。広域行政機能の統合と二重行政の解消には賛成であった。

《太田房江知事の時代の大阪新都構想》に対する府議会の議論を見てみます。

【大阪新都構想の概要について】

大阪府を廃止し、新しいタイプの広域連合である「大阪新都機構」を設置し、広域行政を総合的、一元的に実施する。市町村は、広域連合である「大阪新都機構」を構成するとともに、国や大阪府から権限移譲を受け、住民に身近な行政を自律的に執行するという内容です。大阪府地方自治研究会が平成16年10月最終報告としてまとめたものです。今の都構想と構図はよく似ています。

【府議会での議論】

自民は、府市の広域行政機能の統合、二重行政の解消に賛成しています。

・「大阪は東京の首都機能を代替できるような都市であるべきではございますけれども、しかし現在の大阪では能力不足、あるいは大阪は強くなる必要があるということで、府市の広域行政機能を統合して一つの強い大阪をつくるという意味で、府の構想の方向性は正しいものだろうと思います」(平成15年9月、梅本憲史議員)

・「その報告書の中で特に共感した部分は、大阪府が都市圏全域の発展に向けた広域調整をより効果的に担っていくためには、現在の大阪府の区域でも狭過ぎるという記述であります。まことにすばらしい提言だと思いました」(平成15年9月、自民、北川イッセイ議員)

・「東京では、品川駅の再整備や汐留の再開発が行われてまいりました。東京に比べて大阪は、そういう点で非常に遅れておると思っております。このままでいきますと、東京、大阪、二眼レフ構造の一角を占めていくというようなことはよく言われておりましたけれども、見過ごすわけにいきませんので、是非ともこの状況を打破していきたい、そんな思いを持っております。・・・このような大阪の衰退の中で大阪の再生は喫緊の課題であり、この解決のためには、大阪府と大阪市との連携を強化し、大阪市が大阪市民のことだけを考えるんではなく、府民のことも考えていかなければならないと思っております」(平成15年9月、自民、北川法夫議員)

・「これからはやはり二重行政を避けた効率的な行政というのが求められているんです。そいう方向で、もっともっと大阪市と大阪府が、本当に理想的な都市というものがどういうものか、行政体というのはどういうものかということを、既存制度を廃止することをあまり嫌わんようにして、とにかく新しいものにチャレンジするというような気持ちに向こう側がなってもらわないいかん」(平成15年12月、橋本昇治議員)

・「今、大阪市は揺れに揺れています。そして、改革への第一歩を踏み出そうとしています。もう大阪府と大阪市でけんかをしている場合ではありません。そんな内ゲバをしている間に、名古屋の背中ははるか遠くになることでしょう。このままだと、大阪は負け組になる。大阪府と大阪市のあるべき関係、パートナーシップの再修繕を模索するべきです」(平成17年5月、民主、西川弘城議員)

公明党も、二重行政解消には賛成。道州制を目指すべきとの主張。

「道州制の導入を進めるにあたっては、大阪新都構想にこだわらず、道州と市町村など基礎自治体との二層性を目指すべきではないかと、このように申し上げさせていただきました」(平成17年5月、柏原賢祥議員)

・「新しい地方自治システム構築の議論もいいけれども、もっと足元の大阪府と大阪市の二重行政の解消に本腰を入れて取り組んでいただきたい」(平成18年9月、三宅史明議員)

このように当時の府議会では、二重行政の解消や広域機能の一元化について、活発に議論されてきたのがわかります。

橋下知事の時代になった時も、自民党の吉田利幸府議会議員は「我が会派は、大阪の再生と将来の発展を考えれば、府と市を解体・再編するワン大阪構想については大いに賛成するものでありますが、今になって、どうして府市再編を打ち出されたのでしょうか。また、大阪府、大阪市を最終的にどのような形に持っていこうとされているのでしょうか、あわせて知事にお伺いします」(平成22年2月)と質問しています。

ところが今の府議会の自民党は大阪市を政令指定都市のまま残し、これまでどおり二元行政・二重行政のままで良いと主張しています。とても同じ政党とは思えません。

今年の2月13日に吉村市長にあてたリー市長からのメッセージと碑文を紹介します。

大阪市長       吉村洋文様                                                  2017年2月3日

(参考和訳)

サンフランシスコの「慰安婦像」について、貴殿の懸念を示した心のこもった親書に感謝する。昨年の8月の面談を懐かしく思い出すとともに、両都市間の実りある前向きな姉妹都市関係の継続を何よりも望んでいる。

ご存知かもしれないが、「慰安婦」像は民間の資金によるプロジェクトであり、戦時中の悪行に対する補償と正義の実現に、地域の活動家グループが長年その人生を捧げて取り組んできたものである。彼らの要求は、前例のないことではない。なぜならサンフランシスコには、歴史上の最も暗い過去を後世に伝えるため、また、平和や和解を呼びかけるための公及び民間の記念碑が数多くあるからである。

私は、日本がこれらの過去の行いを償うために尽くしてきた努力について認識し、敬意を払うが、一方で歴史というものはしばしば個人によって解釈が大いに異なるものである。「慰安婦」問題解決のための正義連合(以降、CWJC)のメンバーは、記念碑という手段で犠牲者に敬意を払うことが自らの務めであると感じており、その意図は善意であり、大阪とサンフランシスコの関係を混乱させたいわけではないと私は思っている。

地域からの働きかけに対し、独立性を持って選出された議員で構成されるサンフランシスコ市議会は、全会一致でサンフランシスコにおける慰安婦像の設置を承認し、それによってCWJCの主張を認めた。碑文の文言は部分的に貴殿が以前目にされたであろう決議文から引用されている。

記念碑が問題なく設立されることを見届ける役割を担うサンフランシスコ芸術委員会のメンバーは、碑文文言案について市民の陳述を聞いている。お気付きのようにパブリックコメントを考慮し、会議においていくつかの変更がなされた。最終的に、委員たちは文言が事実に基づいており、記念碑の真の目的を伝えていると感じた。その目的とは、彼女たちに敬意を払い、世界中のあらゆる国に影響を及ぼしている、やむことのない人身取引の問題について一般の人々を啓発することである。

市民に選ばれた市長として、私はコミュニティに応じる責務がある。たとえ批判に直面する可能性があるとしても。姉妹都市として、より深い理解とお互いへの敬意をもって60周年を迎えることを切に希望する。そして、多くの市民や人と人との交流を強くサポートしていきたい。そうすることが、相互の市民に資するとともに自治体パートナーシップを構築することになると思う。将来の取り組みに我々の目を転じ、両都市の強化と恩恵につながり、両都市が世界の模範例として高められることを私は期待する。

サンフランシスコ市長    エドウインM.リー

《碑文全文》

この記念碑は、婉曲的表現で「慰安婦」と呼ばれる、実際には1931年から1945年までアジア太平洋の13カ国において日本帝国陸軍の性奴隷であった数十万の女性や少女の苦しみを証言するものです。性奴隷にされた女性や少女たちのほとんどが捕らわれの身のまま亡くなりました。この陰惨な歴史は1990年代に生存者が勇気を持って声を上げるまで数十年間も隠し通されてきました。

生存者たちの行動は、性暴力は政府が責任を取るべき人道に対する罪であることを世界が断言するための後押しとなっています。

この記念碑は性奴隷であった女性たちに捧げるためのものであり、現在でも続く世界中の性暴力や人身売買の撲滅運動を支持するためのものです。