大阪市長 吉村洋文様 2017年2月3日
(参考和訳)
サンフランシスコの「慰安婦像」について、貴殿の懸念を示した心のこもった親書に感謝する。昨年の8月の面談を懐かしく思い出すとともに、両都市間の実りある前向きな姉妹都市関係の継続を何よりも望んでいる。
ご存知かもしれないが、「慰安婦」像は民間の資金によるプロジェクトであり、戦時中の悪行に対する補償と正義の実現に、地域の活動家グループが長年その人生を捧げて取り組んできたものである。彼らの要求は、前例のないことではない。なぜならサンフランシスコには、歴史上の最も暗い過去を後世に伝えるため、また、平和や和解を呼びかけるための公及び民間の記念碑が数多くあるからである。
私は、日本がこれらの過去の行いを償うために尽くしてきた努力について認識し、敬意を払うが、一方で歴史というものはしばしば個人によって解釈が大いに異なるものである。「慰安婦」問題解決のための正義連合(以降、CWJC)のメンバーは、記念碑という手段で犠牲者に敬意を払うことが自らの務めであると感じており、その意図は善意であり、大阪とサンフランシスコの関係を混乱させたいわけではないと私は思っている。
地域からの働きかけに対し、独立性を持って選出された議員で構成されるサンフランシスコ市議会は、全会一致でサンフランシスコにおける慰安婦像の設置を承認し、それによってCWJCの主張を認めた。碑文の文言は部分的に貴殿が以前目にされたであろう決議文から引用されている。
記念碑が問題なく設立されることを見届ける役割を担うサンフランシスコ芸術委員会のメンバーは、碑文文言案について市民の陳述を聞いている。お気付きのようにパブリックコメントを考慮し、会議においていくつかの変更がなされた。最終的に、委員たちは文言が事実に基づいており、記念碑の真の目的を伝えていると感じた。その目的とは、彼女たちに敬意を払い、世界中のあらゆる国に影響を及ぼしている、やむことのない人身取引の問題について一般の人々を啓発することである。
市民に選ばれた市長として、私はコミュニティに応じる責務がある。たとえ批判に直面する可能性があるとしても。姉妹都市として、より深い理解とお互いへの敬意をもって60周年を迎えることを切に希望する。そして、多くの市民や人と人との交流を強くサポートしていきたい。そうすることが、相互の市民に資するとともに自治体パートナーシップを構築することになると思う。将来の取り組みに我々の目を転じ、両都市の強化と恩恵につながり、両都市が世界の模範例として高められることを私は期待する。
サンフランシスコ市長 エドウインM.リー
《碑文全文》
この記念碑は、婉曲的表現で「慰安婦」と呼ばれる、実際には1931年から1945年までアジア太平洋の13カ国において日本帝国陸軍の性奴隷であった数十万の女性や少女の苦しみを証言するものです。性奴隷にされた女性や少女たちのほとんどが捕らわれの身のまま亡くなりました。この陰惨な歴史は1990年代に生存者が勇気を持って声を上げるまで数十年間も隠し通されてきました。
生存者たちの行動は、性暴力は政府が責任を取るべき人道に対する罪であることを世界が断言するための後押しとなっています。
この記念碑は性奴隷であった女性たちに捧げるためのものであり、現在でも続く世界中の性暴力や人身売買の撲滅運動を支持するためのものです。