今、注目の共産党について考える(5)日本共産党の日本人民共和国憲法草案

民主主義が大切であるというのはいうまでもありません。共産党憲法草案でも“人民の民主主義”という価値観が極めて重要な位置を占めています。また日常の政治活動においても共産党は“民主主義”の重要性を主張しています。しかし、共産党のいう“人民の民主主義”と、我々のいう民主主義との間には埋めることのできない乖離があります。元共産党常任幹部会委員の筆坂秀世さんの言うことに耳傾けたいと思います。筆坂氏は「党内民主主義などありません」。「共産党にはナンバー1が絶対なので、宮本体制だったら宮本顕治さん、不破体制の時だったら不破哲三さん、ーーという感じです。するとどうなるかといいますと、基本的に共産党員は自分の頭で考えなくなるんです。なぜなら、指導者があらゆる問題に答えを出してくれるからです」。「昔の規約にあったように下級は上級に従い、個人を組織の上に置いてはならないという原則は今も変わりません」。「共産党では横の連携は厳禁で、あるのは縦系列の指揮系統のみです。しかも党内の問題を党外に持ち出してはならず、党内で幹部の悪口を言おうものなら袋叩きにされてしまう」。「党内で侃々諤々(かんかんがくがく)の議論なんてほとんどありません」。また元共産党員で共産主義研究家の兵本達吉さんは「日本共産党には、『民主集中制』という組織原則がある。これは、旧ソ連や現在の中国で行われている上意下達のシステムで、政治的決定は上から下に下ろされるだけ、下部の党員は上の決定事項を黙って実行せよ、という原則である」。「指導部の方針と違ったことを話すと、規律違反として『査問』にかけられる」。「党内で党員同士が自由に討論する権利も場もない」。「平成11年、現役の共産党員が運営する「さざ波通信」というHPが現れた。現役の党員が発言すれば問題視されるような党への批判も含んでいる。慌てふためいた党は、この掲示板の批判を開始し、党の会議で数百回にわたって取り上げ、掲示板で発言した党員を割り出す作業を行った。発言者がわかると呼び出して査問を行い、『除籍』(除名よりも軽い)処分を行っている」。「日本共産党には、中世の武家社会よりも厳しい上下の身分関係がある」等など。元共産党幹部のみなさんの証言です。『民主集中制』『人民の民主主義』というのは名前こそ民主とついていますが、その意味するところは『独裁』以外のなにものでもないということになります。

※中華人民共和憲法第三条には「中華人民共和の国家機構は、民主集中制の原則を実行する」とあります。民主集中制は独裁を維持するための仕掛けであります。ゆえに日本共産党も同じ民主集中制の組織原則をとっているのでしょう。

今、注目の共産党について考える(4)日本共産党の日本人民共和国憲法草案

日本共産党憲法草案の前文には“人民の民主主義体制”について次のように記されています。「ここにわれらは、人民の間から選ばれた代表を通じて人民のための政治が行われるところの人民共和政体の採択を宣言し、この憲法を決定するものである。天皇制はそれがどんな形をとらうとも、人民の民主主義体制とは絶対に相容れない。天皇制の廃止、寄生地主的土地所有制の廃絶と財閥的独占資本の解体、基本的人権の確立、人民の政治的自由の保障、人民の経済的福祉の擁護、これらに基調をおく本憲法こそ、日本人民の民主主義的発展と幸福の真の保障となるものである」と。我々のいう民主主義制度のもとにおいては、共産主義を論ずることも、共産党が政権を目指して政治活動することも認められていますが、共産党憲法草案では“ 日本人民の民主主義的発展と幸福を阻害するもの”、“人民の民主主義体制とは相容れないもの”として共産党が判断する主義や思想は決して許されないということであります。許さないが故に、人権侵害やメデイアの統制ということが必然的に起こることとなります。さらに人民民主主義体制を守るため一党独裁に帰結することになるのでしょう。『民主主義』という同じ言葉を使っても、その概念が全く異質であります。中華人民共和国憲法第1条には「中華人民共和国は労働者階級の指導する労農同盟を基礎とした、人民民主主義独裁の社会主義国家である」として、独裁を明文化しています。そして同じく第1条には「いかなる組織又は個人も、社会主義制度を破壊することは、これを禁止する」と書かれています。永遠に共産主義、永遠に独裁でいくということであります。日本共産党もこれと同じく、共産党憲法草案第四十一条には「人民は日本人民共和国の憲法を遵守し、法律を履行し、社会的義務を励行し、共同生活の諸規則に準拠する義務をもつ」。第百条には「日本人民共和国の共和政体の破棄および特権的身分制度の復活は憲法改正の対象となり得ない」としております。共産主義と異なる主義や思想はこの憲法の規定する義務に違反することになります。この共産党憲法草案から分かることは、我々が考えるような言論の自由、結社の自由、信教の自由、思想信条の自由はないということです。中華人民共和国憲法のように独裁という言葉を使ってはいませんが、共産党憲法草案の内容は独裁そのものであります。独裁と自由は共存できません。