(3)世界の声に耳を傾けよう。日本は本当にこれでいいのか?仏の国際人権弁護士のパトリシアデユバル氏、「拉致監禁から目をそらすな」。

パトリシア・デユバル氏は正論6月号で、次のようにも述べています。

【拉致監禁から目を逸らすな】

地裁の決定を読んでおかしいと思ったことはまだあります。

例えば不法行為を認めた民事判決数が多いとして悪質性を認めた形になっていますが、

日本政府の立証面で協力した弁護士グループによる法廷闘争を検証しなければ公正な判断はできないと思います。

信者をさらって強制的に棄教させるデイプログラミングが大々的に行われ、この弁護士グループにつながれて旧統一教会訴えるケースが散見されるからです。

個人が何かを信じてそれを実践することは根本的権利の一つです。これに対して成人した個人が「この宗教を信じたい」と言ったとする。その家族がそれを嫌って、それを禁止する権利はありません。嫌だからやめてほしい。そんな権利は基本的人権とは認められていないのです。

デイプログラミングは自由権規約で「何人も、自ら選択する宗教又は信念を受け入れ又は有する自由を侵害するおそれのある矯正を受けない」とあり、規約に反する行為であることは明らかです。

こうした原告は解散命令請求の根拠となった民事判決32件にも相当数いますが、そうしたことは一切、不問に付されています。

これは政府の手続きの公正さ、公平性が問われる重大な問題です。

信教の自由という概念はとても大切な概念です。マイノリティである宗教の権利を守る為にある概念だとも言えます。彼らが仮に人気がなく、さらに伝統的な宗教などと敵対関係にあってターゲットにされている場合でも、彼らの信教の自由は守られなければならないのです。

そのためにむしろ国家には宗教的中立を保つ義務というものが課されています。少数派である宗教を守らなければならないのです。

社会規範からの逸脱をもって公共の福祉が害されたとして宗教法人を解散させることや、信教の自由を制限することは、そもそも信教の自由を保護するという原則に反しているのです。

(2)世界の声に耳を傾けよう。日本は本当にこれでいいのか?パトリシア・デユバル氏、『判決文を読んで「どのような法令に違反した行為をしたのか、がわかりませんでした」』

どのような法令に違反した行為をしたのか、がわかりませんでした

宗教法人法の81条の第一項第一号は宗教法人を解散させる規定です。今回の解散命令での根拠条文です。《法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると認められる行為をしたこと》

「法令に違反して」とあります。解散命令の決定文を最後まで読んだのですが、旧統一教会は教団として一体、どのような法令に違反したのか、がわかりませんでした

まず民事裁判で敗訴することは法令違反とは言えません。民法というのは私人間の法律関係を規律する法律です。国や地方自治体同士の関係や、国、地方自治体と国民の関係を規律する公法(刑法、行政法など)ではありません。私人間の権利の衝突、権利侵害について調整し解決を図るべく規律されたのが、民法709条となります。その条文をみてください。

《故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害したものは、これによって生じた損害を賠償する責任を負う》

この法律の条文は、不法行為を行った者に対し、他人に及ぼした損害の賠償を義務付けています。この法律に違反することとは、どういう場合でしょうか。それは不法行為と認定された者が命じられた損害賠償を支払わなかった場合となります。不法行為が認められたことが法律違反になるのではありません。不法行為や損害が認定されたことは、法令違反を構成しないのです。

日本に限りません。世界各国どこでもそうですが、誰かがしたことで迷惑を掛けられた、不快に感じた、自分が被害を受けた、権利を侵害されたーーと思ったら、その権利侵害を訴えて裁判所が不法行為だと認めてくれれば賠償されますよ、といっているに過ぎません。

そうして私人間の権利義務について調整を図ったということですか、法令違反とはいいません。むしろ賠償を支払ったわけですから、709条の規律に服し、遵守したことになるでしょう。

民法の不法行為を宗教法人の解散の根拠とすることは、国際法に照らしても問題があります。

以上正論6月号より