中国共産党政府との関係を見直そう(105)。中国の「戦狼外交」と習近平思想。

豪メディアによるとモリソン豪首相は4月23日、5月のWHO総会で、新型ウイルスに関する国際調査を提起する考えを示した。中国外務省は「政治的な思惑がある」と反発。成競業・駐豪中国大使は豪メディアの取材に「中国人民は苛立ち、失望している」と述べて、豪産品のボイコットや中国からの観光客・留学生の減少をちらつかせた。豪側も「経済的な威圧だ」と応酬した。(毎日新聞5月1日)

オランダは、4月28日にオランダの台湾事務所の名称を「オランダ貿易・投資弁事処」から「オランダ在台弁事処」に変更したが、これに中国が反発、オランダへの医療製品等の輸出停止を検討すると圧力をかけたのだ。(WEDGE5月13日)

香港では反体制派を取り締まる国家安全維持法を施行し一国二制度を破壊。南シナ海では南沙諸島に人工島を造成し飛行場やレーダーを建設、新行政区を設定し「米国は南シナ海の当事者ではない。二度と地域の邪魔者や破壊者になるな」と恫喝。台湾に対しては中国軍戦闘機が台湾の防空識別圏に進入。インドでは領土紛争を引き起こしている。

日本に対しては、尖閣諸島で100日連続で中国公船が領海や接続水域に侵入。石垣市が住所に「尖閣」を盛り込むと「中国領土主権への深刻な挑発で非合法で無効」と恫喝。また沖ノ鳥島周辺の日本のEEZで中国の調査船が長期の調査を行い、「岩礁であり島ではない。EEZや大陸棚は付属しない。調査に日本の許可は不要」として強行。

いわゆる中国の「戦狼外交」は世界の至る所で軋轢を引き起こしています。枚挙にいとまがありませんが、その戦狼外交の根底にあるのが2017年の第19回中国共産党大会での習近平国家主席の3時間を超える大演説です。この演説で習近平氏は『習近平思想』(新時代の中国の特色ある社会主義)を掲げ、欧米型の自由民主主義を堕落した思想と断じ、習近平思想による『人類共通の運命共同体』『中国の夢』の実現を目指すと宣言しました。中国共産党の目標、中華人民共和国の国家目標は『習近平思想』による世界の共産化・従属化であり、自由民主主義の価値観を持つ国々との真の意味での平和共存ではないことが明確になりました。中国共産党政権はありとあらゆる手段を使ってその目的を達成しようと試みるでしょう。

日本はこのような中国の戦狼外交にどのように対処すべきなのでしょうか。

湯浅博氏は、「過去のパンデミック危機を振り返っても、未知のウイルスは国家間にある既存の緊張を悪化させる傾向にある。習近平政権は、新型コロナウイルスの処理のまずさから拡散を許し、内外の批判にさらされた。中国共産党という『手負いの龍』は、自らの弱みを見せまいと、周辺国に対してますます凶暴さを増してくる。・・・・・・そのうえでE・コルビー氏(元米国防次官補代理)らは『米国とその同盟国は、中国と対峙せずして自国の利益を守ることはもはやできない』と言い切る。そして、中国を封じ込めるには『いま代償を払うか、後から払わさせられるのか、そのどちらかしかない』と、自らと同盟国に覚悟を求めたのだ。すでに米議会は、超党派で『インド太平洋抑止イニシアチブ』との新たな枠組みに関する法案を提出している。日米はベルリン空輸作戦にみる西側の結束のように、パンデミック危機で『中国離れ』が顕著な欧州、東南アジアを巻き込む戦略的機会を迎えている」(令和2年7月24日の産経新聞、湯浅博の世界読解より一部引用、ぜひ全文のご一読を)

日本の政治家や経済界、そしてメディアもよくよく考えてほしいものです。

 

国家やメディアがつくる「フェイク」について考える(2)。「文在寅政権の巻」。

ボルトン氏の回顧録について、ボルトン氏へのインタビューを含めたくさん報道されています。その中で、現代ビジネス7月13日配信、山本一郎(個人投資家・作家)の「ボルトンが暴露、米朝に割り込むため文在寅、嘘ついちゃいました」と題する記事が出ていました。これがその通りなら、現職の大韓民国大統領が外交にフェイク(嘘)を持ち込んだ大事件ということになります。その記事によれば、

ーそのボルトンさんに対して韓国大統領・文在寅さんは米韓同盟を軸に対北朝鮮で軍事的オプションを提示します。

ところが、2018年4月27日に文在寅大統領と金正恩委員長が板門店で南北首脳会談を行う。その翌日、文在寅さんはトランプ大統領に電話をかけ、金正恩が「韓国に対して『核実験場の閉鎖』と『完全で検証可能かつ不可逆的な非核化(CVID)』を約束したのだ」と伝えるのです。結果的にこれは韓国外交をトランプ氏に誇示して米朝交渉の間に何としても韓国が挟まるためにでっち上げた嘘であり、韓国の「二枚舌外交」だという話になります。北朝鮮は、そんな核廃棄の方針など韓国に伝えていなかったんですね。ボルトンさんが本書の中で韓国・文在寅さんへの不信感、不快感を繰り返し表明するのは、仲介者であるべき韓国が単なる嘘つきであり、使い物にならない外交上のツールであると判断していることの証左であります。

外交成果を喧伝するための、米朝韓3国会談のテレビ映えにこだわった、文在寅さんの考えや立場は独善的なものでした。結果として、文在寅さんからの嘘の情報に基づき、平壌を訪れて国務長官のポンペオさんが北朝鮮と非核化協議をすると、北朝鮮側が「一方的で強盗のような要求」と激怒してしまいました。

北朝鮮も、まさか文ざ在寅さんが「北朝鮮に核兵器破棄の意思がある」というガセネタをトランプさんに伝えていたなんて知らなかったわけですよ。

北朝鮮側がアメリカに怒り不信感を持つのも当然で、本件では北朝鮮は悪くない、というよりは、嘘をついてでも米朝外交に入り込もうとした文在寅さんがアカンのだろうし、シンプルにトランプ政権がその嘘に騙された結果、対北朝鮮交渉が暗礁に乗り上げてしまいました。ー

以上一部を引用させていただきました。米朝会談、南北首脳会談を時系列で見ていくと、

・2017年1月トランプ氏大統領就任

     米朝間の軍事的緊張が高まる

・2018年3月 ホワイトハウスが金正恩氏の会談申し入れを受け入れる

・2018年4月27日 南北首脳会談(板門店)、翌日文在寅氏はトランプ大統領に電話をして、金正恩が「韓国に対して『核実験場の閉鎖』と『完全で検証可能かつ不可逆的な非核化』を約束した」と伝える。

・2018年5月 南北首脳会談(板門店)

・2018年6月 第1回米朝首脳会談(シンガポール)

・2018年9月 南北首脳会談(平壌) 金正恩氏と文在寅氏ともに白頭山に登頂。

この会談で「この寧辺破棄という発想が出てきたのが、18年9月に平壌で開かれた南北首脳会談だ。共同宣言に『寧辺核施設の永久的な破棄』と明記した。同行した文氏の外交ブレーン、文正仁大統領統一外交安保特別補佐官は『寧辺破棄は文氏が強く主張した』と証言する。トランプ氏を米朝再会談に引き込もうと、文氏が金正恩氏に助言した秘策だった。北朝鮮情報に詳しい関係者によると、ハノイ会談の直前、朝鮮労働党統一戦線部は金正恩氏に、米国が寧辺破棄との取引に応じると報告した。韓国当局からの情報を通じ、楽観的な見方に傾いた可能性がある」(日本経済新聞令和2年7月4日)。しかし、

・2019年2月 第2回米朝首脳会談(ハノイ )   決裂

・2019年4月 「文氏自身も19年4月、ワシントンへ飛び米国に働きかけた。寧辺破棄を含む非核化措置と引き換えに南北経済協力を認めるよう求めたが、トランプ氏は『今は不適切』と一蹴した」(同日本経済新聞)。

以上文在寅氏の外交を振り返ってみると、トランプ氏に対しては金正恩氏が「完全な非核化」を約束したと言い、また金正恩氏に対しては「寧辺の破棄」で米朝合意できるとの情報を伝えていた。どうもこれが真相のようです。まさに「二枚舌外交」です。しかし「二枚舌外交」は対米、対北朝鮮だけでなく対日本外交においても見受けられます。