ボルトン氏の回顧録について、ボルトン氏へのインタビューを含めたくさん報道されています。その中で、現代ビジネス7月13日配信、山本一郎(個人投資家・作家)の「ボルトンが暴露、米朝に割り込むため文在寅、嘘ついちゃいました」と題する記事が出ていました。これがその通りなら、現職の大韓民国大統領が外交にフェイク(嘘)を持ち込んだ大事件ということになります。その記事によれば、
ーそのボルトンさんに対して韓国大統領・文在寅さんは米韓同盟を軸に対北朝鮮で軍事的オプションを提示します。
ところが、2018年4月27日に文在寅大統領と金正恩委員長が板門店で南北首脳会談を行う。その翌日、文在寅さんはトランプ大統領に電話をかけ、金正恩が「韓国に対して『核実験場の閉鎖』と『完全で検証可能かつ不可逆的な非核化(CVID)』を約束したのだ」と伝えるのです。結果的にこれは韓国外交をトランプ氏に誇示して米朝交渉の間に何としても韓国が挟まるためにでっち上げた嘘であり、韓国の「二枚舌外交」だという話になります。北朝鮮は、そんな核廃棄の方針など韓国に伝えていなかったんですね。ボルトンさんが本書の中で韓国・文在寅さんへの不信感、不快感を繰り返し表明するのは、仲介者であるべき韓国が単なる嘘つきであり、使い物にならない外交上のツールであると判断していることの証左であります。
外交成果を喧伝するための、米朝韓3国会談のテレビ映えにこだわった、文在寅さんの考えや立場は独善的なものでした。結果として、文在寅さんからの嘘の情報に基づき、平壌を訪れて国務長官のポンペオさんが北朝鮮と非核化協議をすると、北朝鮮側が「一方的で強盗のような要求」と激怒してしまいました。
北朝鮮も、まさか文ざ在寅さんが「北朝鮮に核兵器破棄の意思がある」というガセネタをトランプさんに伝えていたなんて知らなかったわけですよ。
北朝鮮側がアメリカに怒り不信感を持つのも当然で、本件では北朝鮮は悪くない、というよりは、嘘をついてでも米朝外交に入り込もうとした文在寅さんがアカンのだろうし、シンプルにトランプ政権がその嘘に騙された結果、対北朝鮮交渉が暗礁に乗り上げてしまいました。ー
以上一部を引用させていただきました。米朝会談、南北首脳会談を時系列で見ていくと、
・2017年1月トランプ氏大統領就任
米朝間の軍事的緊張が高まる
・2018年3月 ホワイトハウスが金正恩氏の会談申し入れを受け入れる
・2018年4月27日 南北首脳会談(板門店)、翌日文在寅氏はトランプ大統領に電話をして、金正恩が「韓国に対して『核実験場の閉鎖』と『完全で検証可能かつ不可逆的な非核化』を約束した」と伝える。
・2018年5月 南北首脳会談(板門店)
・2018年6月 第1回米朝首脳会談(シンガポール)
・2018年9月 南北首脳会談(平壌) 金正恩氏と文在寅氏ともに白頭山に登頂。
この会談で「この寧辺破棄という発想が出てきたのが、18年9月に平壌で開かれた南北首脳会談だ。共同宣言に『寧辺核施設の永久的な破棄』と明記した。同行した文氏の外交ブレーン、文正仁大統領統一外交安保特別補佐官は『寧辺破棄は文氏が強く主張した』と証言する。トランプ氏を米朝再会談に引き込もうと、文氏が金正恩氏に助言した秘策だった。北朝鮮情報に詳しい関係者によると、ハノイ会談の直前、朝鮮労働党統一戦線部は金正恩氏に、米国が寧辺破棄との取引に応じると報告した。韓国当局からの情報を通じ、楽観的な見方に傾いた可能性がある」(日本経済新聞令和2年7月4日)。しかし、
・2019年2月 第2回米朝首脳会談(ハノイ ) 決裂
・2019年4月 「文氏自身も19年4月、ワシントンへ飛び米国に働きかけた。寧辺破棄を含む非核化措置と引き換えに南北経済協力を認めるよう求めたが、トランプ氏は『今は不適切』と一蹴した」(同日本経済新聞)。
以上文在寅氏の外交を振り返ってみると、トランプ氏に対しては金正恩氏が「完全な非核化」を約束したと言い、また金正恩氏に対しては「寧辺の破棄」で米朝合意できるとの情報を伝えていた。どうもこれが真相のようです。まさに「二枚舌外交」です。しかし「二枚舌外交」は対米、対北朝鮮だけでなく対日本外交においても見受けられます。