国家やメディアがつくる「フェイク」について考える(6)。日本のメディアの場合(2)

 過去のメディアによる「フェイク」事件で思い浮かぶのは、朝日新聞の環境問題に関する報道事件(平成元年4月20日付朝日新聞)です。「地球は何色?サンゴ汚したK・Yってだれだ」と題する記事が新聞記者の自作自演であったという事件であります。「自然環境保全法違反」が疑われる、信じられない事件でありました。サンゴ礁を故意に傷つけ、サンゴを汚したのは誰だ?と”行為者”を非難し、環境保護を訴えるという記事です。尋常では考えられないですね。このとき朝日新聞は『おわび』と題して「朝日新聞東京、名古屋本社発行の4月20付夕刊、西部本社発行の同22日付夕刊各一面に掲載された沖縄・八重山群島西表島のサンゴ礁の落書きを扱った写’89『地球は何色?サンゴ汚したK・Yってだれだ』に関し、地元の沖縄県竹富町ダイビング組合から『サンゴに書かれた落書きは、取材者によるものではないか』との指摘がありました。本社で調査をした結果、取材に行き過ぎがあったことがわかりました」と述べました。朝日新聞東京本社編集局長の伊藤邦男氏は「お叱りは当然であり、深刻に受けとめております」「どんな目的があろうと、新聞人として、事実に手を加えるなどは許されることではありません」と述べています。写真は平成元年5月16日の朝日新聞です。

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 しかしその後、この『おわび』の精神は生かされたのでしょうか?

『社会通念、常識を踏み外していないか』自己反省が必要ー産経抄ー

9月26日(土)の産経新聞、『産経抄』より、

「ジャーナリストの櫻井よしこさんも7日付の小紙コラム『美しき勁き国へ』で『記者たちの非礼ぶりは言語道断』と指摘していたが、礼儀作法やルールを軽んじる記者の姿勢が、この30年来ずっと気になっている。自己反省も込めて言えば、あまりにも社会通念、常識を踏み外してはいないかと。・・・記者は羽織ゴロ、つまり羽織をまとうゴロツキ扱いされた時代もある。その名残からか無頼を気取りたがる者もいるが、今の時代には受け入れられない。ましてや思い上がって国民の代表を僭称(せんしょう)したり、権力の監視を口実に記者会見場で自己宣伝に励んだりするのは論外である。日本新聞協会の新聞倫理綱領は、『品格を重んじなければならない』と謳っている。同僚からは『お前が言うな』と叱られそうだが、存外大切なことだと痛感する」と、ありました。

言論人の中からこのような声が出てきたことは歓迎したいと思います。“よくぞ言ってくれた”と思っている人は多いと思います。新聞倫理綱領に『品格を重んじなければならない』とあることは分かりましたが、「品格」「社会通念」「常識を踏み外さない」という自己反省は新聞記者だけでなく、すべての社会人に求められていることであります。