大阪市営交通事業の民営化について考える(2)自民党の12項目の要望について

自民党大阪市会議員団が市長に要望している「大阪市として解決すべきと考える項目」の(12)の①「社長人事への関与」と②「事業計画、決算への関与の方法の確立」という項目について考えていきます。これも自民党から説明がないので、通常の解釈に基づいて進めていきたいと思います。大阪市の地下鉄事業民営化プラン(案)の中で、民営化のメリットについて次のように述べています。「民営化後の新会社が経営力を強化することで、効率的な事業経営が可能となります。また、公営企業においては、予算・契約・人事といった面で、地方自治法などの法令や大阪市のルールを遵守することによる経営上の制約があります。民営化後の新会社においては、これらの制約がなくなり経営の自由度が格段にアップするため、柔軟な発想とスピード感のある実行力で、多様な事業展開をはじめ、質の高いサービスと新たな価値の創造を実現してまいります。これらのことから、民営化は市民・お客さまにとってメリットがあると考えます」と記しています。「予算・契約・人事」といった面で、市議会の関与や、市役所の関与がなくなり、「経営の自由度が格段にアップ」することに民営化の意義があり、このことが「質の高いサービス」「多様な事業展開」「新たな価値の創造」につながり、「市民・お客様にとって大きなメリット」が生まれるということです。このような考えから見れば、自民党の主張する「社長人事への関与」「事業計画への関与」とはどういうことなのでしょうか。議会の関与を主張しているのでしょうか?議会が社長人事に関与したり、事業計画へ関与することを意味しているのでしょうか?その場合、経営責任はどうなるのでしょうか?これも自民党から説明がないので全くわかりません。要望項目の(1)の「大阪市が100%株を保有し続ける」という要望と合わせて考えると、自民党は大阪市の交通事業の外郭団体化を考えているのでしょうか?社長人事や事業計画への関与要望と合わせて考えれば、自民党の要望は民営化ではなく、大阪市の外郭団体化を狙っているとしか判断できません。天下りの団体にしようと考えているのでしょうか?これも自民党大阪市会議員団の説明を求めなければなりません。市民に説明しなければならないことばかりですが、自民党大阪市会議員団はどのようにされますか?

大阪市営交通事業の民営化について考える(1)自民党の12項目の要求について

まずはじめに、自民党大阪市会議員団が市長に要望している「大阪市として解決すべきと考える項目」(新聞でも大きく取り上げられました)の(3)に「8号線など、国の答申に向けて本気度を示すために、整備に向けた基金の創設」という要望があります。「8号線など」という表現で何を指しているのか定かではないのですが、おそらく地下鉄8号線の延伸《今里〜湯里六丁目間》のために基金を創設しなさいということだと理解します。この自民党の要望について考えていきます。大阪市は平成25年9月に「大阪市鉄道ネットワーク審議会」を設置し、8号線を含めた未着手の地下鉄計画路線の整備のあり方について諮問しました。平成26年8月に審議会から出された答申では「未着手の地下鉄路線の事業化の可能性は公営・民営に関わらず試算の結果は極めて厳しい」として「多様な機種(LRTやBTR等)の導入可能性も含め、幅広く検討」すべきとして、「まずは『BRTによる需要の喚起・創出及び鉄道代替の可能性を検証するための社会実験』の実施に向けた検討を行うよう提言」をしたところであります。この答申を受けて大阪市交通局は「(1)未着手の地下鉄条例路線が、国の次期答申に盛り込まれるよう、これまでと同様行政とも連携しながら取り組んでいく。(2)大阪市鉄道ネットワーク審議会からの答申を踏まえ、本市としての考え方を新会社は最大限に尊重していく。(3)BRTの社会実験については、引き続き大阪市と連携・協力する」と、今後の方針を示したところであります。しかるに自民党の要望を見る限りでは(具体的な説明も何もないので文言だけで判断しなければならない状況です。基金もどの程度なのか分かりません。巷では自民党は100億円を想定しているとも言われています。説明が無いのでわかりません)、かかる経過を無視して、何がなんでも、地下鉄建設に着手すべく、建設の為の基金を創設せよとの強い要望であります。自民党は12項目の要望すべて、100%受け入れられることが民営化賛成の条件としているとも聞こえてきます。これでは、民営化に賛成なのか、反対なのか分かりません。大阪市の財政状況については「当面の単年度通常収支不足額は200億円程度になる見込み」というのが大阪市財政局の見解であります。また優先的に取り組まなければならない施策、喫緊の課題も山積しています。かかる中で、地下鉄8号線建設事業(膨大な赤字が予測されている)に巨額な基金を積み立てることは、市民目線から見て妥当な判断なのでしょうか。疑問を感じざるを得ません。いずれにしましても、自民党が出した12項目の要望について、市民に説明する必要があるのではないでしょうか?議会人である我々も知らない、市民も知らない中で、ごく一部の人たちだけで決めようとする姿勢は、東京都のような過ちを繰り返すことになるのではないでしょうか?