アメリカで何が起きているのか?(19)。バージニア州知事選挙は「全米のターニングポイント」ワシントン・ポスト紙

ワシントン・ポスト紙がバージニアの一戦は「全米のターニングポイント」と位置付ける同州知事選挙で、共和党候補のヤンキン氏が当初の予想を覆し逆転勝利しました。

4月3日の産経新聞です。

「世界の指導者はバージニア州知事選を注視し、(民主党の)マコーリフ候補の敗北か僅差の勝利を警告とみなすだろう」。ワシントン・ポストはローマに集まった20カ国・地域の首脳らの関心をこう伝えた。

(共和党のヤンキン氏は)学校教育では、人種差別や白人至上主義を米国の構造問題として変革を唱える「批判的人種理論(CRT)」の導入を禁じると主張。CRTを偏向・非愛国的と批判する伝統保守層の支持も固めた。戦略が奏功すれば「将来の共和候補が進むべき道を提示する」(米紙ウオールストリート・ジャーナル)

この世界が注目するバージニア州の知事選挙で、共和党のヤンキン氏が民主党のマコーリフ前州知事を下して逆転勝利しました。

11月4日の産経新聞です。

トランプ氏は2日夜の投票終了後に声明を出し、自身を支持する有権者からの投票がなければヤンキン氏が「勝利に近づくこともなかった」と存在感を誇示した。首都ワシントンに隣接する同州では、20年の大統領選でバイデン氏がトランプ氏に約10ポイントの差をつけて勝利していた。

ヤンキン氏は人種差別に関する教育の偏向を是正するなどと訴えて猛追していた。

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アメリカで何が起きているのか?(18)。「反米アメリカ人」ー青山学院大教授・福井義高

 10月24日の産経新聞6面に掲載された青山学院大教授・福井義高氏の「反米アメリカ人、マルクス主義の影響か、それとも・・」と題する寄稿文より一部分を紹介させて頂きました。詳しくは原文をお読み頂きたいと思います。

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米国社会の変容には驚かされる。一言で言えば「反米アメリカ人」の台頭、自虐史観の浸透である。これまでも米国では、社会の現状に対する厳しい批判が行われてきた。しかし、そこで批判される事象は、自由やデモクラシーなど本来の米国の在り方からの逸脱という捉え方であり、建国以来の米国の理想に近づくべく、改革せねばならないという、ある意味、建設的批判であった。

ところが、人種差別や性差別などを糾弾する「ウオークネスwokeness 」(「社会的公正への目覚め」とも訳すべきか)が席巻する今日の批判は質的に変化したものとなっている。米国社会はもとから不正にまみれた不公正な社会であり、構造的な変革が必要だという問題意識に基づき、これまでの米国のあり方を全面的に否定するものとなっているのだ。

米国ではこれまで、日本や欧州と違い、国民が愛国者であることが当然視されてきた。その米国で、こうした自国の在り方や歴史を否定するような主張が一部の奇矯な人々に限らず、リベラル主流派でも受け入れられつつあるというのは、驚くべきことだ。学校教育でも、構造的人種差別の背景にあるとされる「白人の特権」(white privilege)が強調され、白人は子供の時から自らの「原罪」の克服を強いられる事態となっている。

アメリカ社会のこのような大きな動きとして、ニューヨーク・タイムズが進める「1619プロジェクト」と「批判的人種理論を紹介しています。

【NYタイムズ紙の1619プロジェクト】とは

米国史の原点は英国からの正教徒移住や独立ではなく、奴隷貿易が始まった1619年とすべきだ。すべての白人が白人至上主義者であり、その精神構造を根本的に変革せねばならないという主張。

1619とはアフリカ黒人奴隷がはじめて米国独立前のバージニア植民地に連れてこられた年。ニューヨーク・タイムズ紙は、米国の「真の建国」は1619年だとし、米国史は黒人迫害を軸に展開してきたという。1776年の米国独立の主要な動機の一つは奴隷制維持だったとまで断じている。歴史学会のみならず米国社会に賛否両論の波紋を広げている。

 【批判的人種理論】とは

黒人に対する法的差別は完全に撤廃されたにもかかわらず、半世紀以上たった今日においても、各方面での白人と黒人の著しい格差は残ったままである。・・・格差が継続しているのは、表面上の平等とは裏腹に「構造的」不平等・不公正が社会にビルトインされ、実質的な機会の平等が達成されていないからだと。BLM運動の背景にある、流行の「批判的人種理論」のエッセンスといってもよい。