10月24日の産経新聞6面に掲載された青山学院大教授・福井義高氏の「反米アメリカ人、マルクス主義の影響か、それとも・・」と題する寄稿文より一部分を紹介させて頂きました。詳しくは原文をお読み頂きたいと思います。
米国社会の変容には驚かされる。一言で言えば「反米アメリカ人」の台頭、自虐史観の浸透である。これまでも米国では、社会の現状に対する厳しい批判が行われてきた。しかし、そこで批判される事象は、自由やデモクラシーなど本来の米国の在り方からの逸脱という捉え方であり、建国以来の米国の理想に近づくべく、改革せねばならないという、ある意味、建設的批判であった。
ところが、人種差別や性差別などを糾弾する「ウオークネスwokeness 」(「社会的公正への目覚め」とも訳すべきか)が席巻する今日の批判は質的に変化したものとなっている。米国社会はもとから不正にまみれた不公正な社会であり、構造的な変革が必要だという問題意識に基づき、これまでの米国のあり方を全面的に否定するものとなっているのだ。
米国ではこれまで、日本や欧州と違い、国民が愛国者であることが当然視されてきた。その米国で、こうした自国の在り方や歴史を否定するような主張が一部の奇矯な人々に限らず、リベラル主流派でも受け入れられつつあるというのは、驚くべきことだ。学校教育でも、構造的人種差別の背景にあるとされる「白人の特権」(white privilege)が強調され、白人は子供の時から自らの「原罪」の克服を強いられる事態となっている。
アメリカ社会のこのような大きな動きとして、ニューヨーク・タイムズが進める「1619プロジェクト」と「批判的人種理論を紹介しています。
【NYタイムズ紙の1619プロジェクト】とは
米国史の原点は英国からの正教徒移住や独立ではなく、奴隷貿易が始まった1619年とすべきだ。すべての白人が白人至上主義者であり、その精神構造を根本的に変革せねばならないという主張。
1619とはアフリカ黒人奴隷がはじめて米国独立前のバージニア植民地に連れてこられた年。ニューヨーク・タイムズ紙は、米国の「真の建国」は1619年だとし、米国史は黒人迫害を軸に展開してきたという。1776年の米国独立の主要な動機の一つは奴隷制維持だったとまで断じている。歴史学会のみならず米国社会に賛否両論の波紋を広げている。