国内での拉致監禁拷問事件について考える(3)。「人権」は政治・思想・宗教の違いを超えて人間に付与された「普遍的価値」であります。

桧田仁衆議院議員(当時)が2000年(平成12年)4月20日の衆議院決算特別委員会で取り上げた鳥取での拉致監禁拷問事件の概要がわかりました。まるで北朝鮮による日本人拉致を連想させるこのようなことが、日本国内でしかも日本人によって行われていたことに驚愕の念を抱くものです。

☑︎なおこの事件の主犯格の高澤守牧師(神戸真教会)について、ネット上では『夫婦2人が紐で縛りあげられ猿ぐつわをかまされ拉致監禁された上、信仰攻撃を受けた「広島事件」“主犯の”高澤守牧師』とか、また『逮捕監禁致傷で刑事告発された神戸真教会の主管牧師・高澤守』などと出ています。他にも余罪があるようです。

【事件の概要】(「 鳥取教会襲撃事件 」と呼ばれている)

 1997年6月7日午後2時半、T・H(女性)さんの父親である元警察官、税務署職員、親戚、興信所職員5名、及び世界平和統一家庭連合に反対するキリスト教会関係者など合計25名が、スタンガン、鉄パイプ、 チェーンなどの武器を携行し、家庭連合の地方公認教会を襲撃しました。襲撃犯等は教会玄関ドアのガラス部分を損壊して侵入し、教会業務を妨害し居合わせた教会員4名に暴行傷害を加え、客室で母親と面談中のTさんを拉致しました。 Tさんは襲撃犯が用意したワゴン車に押し込められ親族及び興信所職員によって連行されました。

襲撃犯はTさんを大阪のマンションに監禁し、キリスト教神戸真教会の主任牧師高澤守の話を聞かせて棄教させるために今回の事件を計画しました。ところが襲撃犯等はすぐに大阪にはいかず、Tさんを四国に連行し、鳴門にあるリゾートマンションの高層階で三日間監禁しました。

 6月10日午後10時過ぎ、Tさんは部屋で手錠をかけられ再度ワゴン車に担ぎこまれました 。ワゴン車は淡路島を経由してフェリーで大阪にわたり、6月11日未明新大阪に着きました。 Tさんは市内のマンション10階の一室に担ぎこまれ監禁されました。

 Tさんは新大阪の2つのマンションで合計1年3ヶ月にわたって監禁され、両親及びキリスト教神戸真教会の高澤牧師などによって棄教を強要され続けました。 Tさんの主張によると、特にTさんが高澤牧師との対話を拒んだ最初の2カ月間 、高澤牧師はTさんを寝ていた布団から床に転がり落とし、足や背中を叩く、額を拳骨で小突くといった暴行を繰り返し、「屋根裏のネズミ」「死にかけたゴキブリ」「クソばか」などの暴言を浴びせ続け、髪の毛を手で持ち上げたり、『原理講論』で臀部を叩くといったセクハラ行為まで行いました。このためTさんは精神的肉体的に極度の苦痛を受け、膀胱炎、胃痛などの疾病を被りましたが、高澤牧師はTさんを病院にいかせませんでした。

翌1998年、Tさんは長期の監禁による精神的苦痛から、二度にわたって精神錯乱に陥りました。それでも、高澤牧師等はTさんを解放しませんでした。このため、Tさんは表面上、棄教の表明をする以外に監禁から解放される道はないと思うに至りました。1998年3月、高澤牧師の招きで、東京の宮村峻という脱会専門家が部屋を訪れ、棄教を強要したとき、Tさんは表面上の棄教の表明をしました。Tさんは大事にしていた祝福指輪まで、やむなく高澤牧師に渡しました。高澤牧師はTさんが偽装脱会をしているのではないかと恐れ、引き続き監禁を継続しました。

棄教の表明後も監禁が続く中、Tさんは1998年8月17日付けで、意に反して脱会届けを書きました。脱会届の見本は高澤牧師が提供しました。

同年8月30日、Tさんはマンションから解放されたものの、神戸真教会に移され、同教会2階の部屋で「リハビリ」といわれる監禁後の生活に従事させられました。「リハビリ」というのは、拉致監禁によって脱会させられた家庭連合の元信者が、長期監禁後の社会復帰のため、牧師等の指導のもとに共同生活を行うことですが、元信者は監禁現場に駆り出され、脱会説得の手伝いをさせられたり、「青春を返せ裁判」など、家庭連合に対する訴訟を起こすよう促されるなど、家庭連合に反対する活動に荷担させられることがよくあります。Tさんの場合は、長期監禁による精神的・肉体的疲労が顕著であったことから、意に反する反対運動には荷担させられずにすみました。

同年9月15日、Tさんは両親等の監視の隙を見て脱出しました。

 

【この事件に対する判決  2008年(平成20年)8月31日】 

判決は被告両親の行為の違法性について、「本件の逮捕監禁はその当初において明白に原告の意志に反するものであったこと、原告が昭和41年4月生まれで本件当時、31歳の成人であったことを考えると、本件のような行為は、被告両親が原告の両親であったとしても許されるものではない」として両親の行為の違法性を認めた。

また被告高澤の行為については、「一般的に宗教活動は自由であるとしても、右のような状態(棄教目的で逮捕監禁されている状態)にある原告に対し、その状態を知りながら、原告の意思に反する宗教活動を行うことは、正当な業務活動であるということはできない」と判示し、その行為の違法性を認定。

【損害賠償請求】原告の被告全員に対する損害賠償支払請求を認める。

【差止請求】「被告らは、原告に対し、暴行、脅迫、拉致、監禁、面談強要、電話による会話強要を行い、又はこれらの方法を用いて、原告が信仰する宗教を棄教することを強要してはならない」との差止命令を発した。

以上が家庭連合が発表している「鳥取事件」とその「裁判報告」の概要です。このような甚だしい人権侵害、凶悪な暴力事件が「自由で民主主義国である日本」で行われていたとは 、驚きであります。また何故マスコミは報道しないのでしょうか?警察はどこに行ったのでしょうか?

国内での拉致監禁拷問事件について考える(2)。「人権」は政治・思想・宗教の違いを超えて人間に付与された「普遍的価値」であります。

浜田聡参議院議員の質問主意書で触れられていた、2000年4月20日に決算行政委員会で質疑された桧田仁(ひのきだひとし)自民党衆議院議員(当時)の質疑の一部を要約してお知らせします。

【桧田仁衆議院議員】これから重大な質問をする。質問をすることで万が一にも私に対して組織的犯罪者の危害が加わることがないよう、異例の要望をした上で、この質問を始める。捜査権を行使する警察のトップとして、捜査権とは憲法第14条の、何人といえども法のもとに平等、並びに憲法第20条の信教の自由を何ら侵すものでもないと判断しているが、いかがか。

【田中節夫・警察庁長官】すべての警察職員は、日本国憲法及び法律を擁護し、不偏不党かつ公平中正にその職務を遂行する旨の服務の宣誓を行なっている。信教の自由及び法の下の平等について、警察活動がこの憲法の規定を損なうようなことがあってはならないことも当然だ。

【桧田仁衆議院議員】拉致、監禁、暴行、傷害罪など刑事罰行為に触れる行為は、たとえば、親子や夫婦なら問われないということがあるか。

【田中節夫・警察庁長官】正当防衛や緊急避難、また14歳未満や責任能力を欠く者の行為である場合、有罪認定に足る証拠が得られない場合など、罪には問われない。だが、親子や親族であっても、刑罰に触れる行為があれば、何人に対しても法と証拠に照らし厳正に対処する。

【桧田仁衆議院議員】その当たり前のことが日本で行われていない。昨年のアメリカ国務省国際人権報告書1999年版に、警察が組織的に拉致、監禁、暴行等傷害事件を取り締まらないと報告され、日本の警察が国際社会からも信用を失墜しかねない、極めて重大な事態になっている。また、1992年には全米警察署長会議が、世界中のたとへ何人といえども拉致監禁は違法とし、犯罪抑止を努力すると決定している。ご存知か。

【田中節夫・警察庁長官】警察署長会議の方は知らないが、米国国務省の報告は知っている。具体的には、統一教会の会員から、警察は統一教会信者に対する強制改宗問題に対して何ら救済措置を取らないとの訴えがあり、また、統一教会信者が親族によって拉致監禁された場合、警察がそれを取り締まらない為に、被害者に対する恣意的監禁の期間が長引く結果となっていると主張している旨の記載は承知している。ただ、警察としては、いかなる事案でも、刑罰法令に触れる行為があれば、法と証拠に照らし厳正に対処しており、今後とも同様の考え方で対処する所存だ。

【桧田仁衆議院議員】自分たちでリンチに当たるものを行なって、罰したり拉致監禁したり、傷害を起こしたりすることは、絶対に許されないことだと思うが。

【田中節夫・警察庁長官】法治国家において許されないことだ。 

【 桧田仁衆議院議員】拉致監禁に警察が関与し、また了解していたという証拠を今日提示する。平成10年5月16日に拉致監禁をした犯罪者は計画書を作っている。自筆のものを持っている。何月何日どうこうすると書いてあり、また本人が騒いだ場合どうするなど、詳細に書いてある。しかも、この書類を平成10年5月14日に、石川某が昭島警察へ事前連絡して了承をもらうような書類を作り、しかも実際に行っている。警察が承知で拉致監禁したということがあるのか。

【田中節夫・警察庁長官】警察が具体的に関与して犯罪行為が行われるということは、私どもは承知していない。

【桧田仁衆議院議員】平成9年6月7日に鳥取市で40年間、鳥取警察署に勤めた者が現職の税務署職員と一緒になり、元警察官も5名程度加わって、約20名でスタンガン、鉄パイプ、チェーン等で武装し、教会を襲撃して4名に暴行傷害罪を起こしている。この者たちが逮捕も捜査もされていないのは、40年も務めた警察官が武装襲撃をした事件だから、見て見ぬふりをしたのではないかと勘ぐっているが、いかがか。

【林則清・警察庁刑事局長】スタンガン鉄パイプ等を用いたという点は、鳥取県警の捜査では認められなかった。だが多人数による犯罪は看過できない。鳥取県警は関係被疑者6名について、建造物侵入や傷害罪で鳥取地方検察庁へ書類送致した。

【桧田仁衆議院議員】被害者の側が1年間は何の捜査もされず、そして本人を拉致して姫路へ行く国道ルートに対して何らの緊急配備もしなかったと主張している。警察に事前に連絡されたのではないか。

【林則清・警察庁刑事局長】現場の警察官は事情聴取をし実況検分も行っている。鳥取県警は発生時に110番通報で本件を知り、約2時間緊急配備を行うなど被疑者や女性信者等の発見に努めたと聞いている。

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【桧田仁衆議院議員】拉致監禁事件は親告罪か?本人は1年3ヶ月も拉致監禁されているのに、要るのか?

【林則清・警察庁刑事局長】親告罪ではない。

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【桧田仁衆議院議員】今日質問する理由の第一は、米国が危惧しているように、日本で警察権は法のもとに平等に行われていないのではないかという点。 2番目はこの問題は実は20年来、1年間に約3000人程度を組織的に、親の気持ちとは別に拉致監禁している集団があるからだ。私が1年3ヶ月行方不明になっても調査をしないのか。この組織的拉致監禁集団は一部の牧師などが組織的に全国でやっている。ある意味では国家に対する、警察に対する、重大な挑戦だと思うが。

【田中節夫・警察庁長官】全国のいくつかの県警察において、統一教会の信者から被害申告あるいは相談がなされたと言う事は承知している。国民の生命、身体、財産の保護を任ずる警察としては、今後とも刑罰法令に触れる行為があれば法と証拠に照らし厳正に対処する。

【桧田仁衆議院議員】国民の人権が侵されるのにもかかわらず、警察が見て見ぬふりをしたり、あるいは拉致監禁されてもそれを追わない。ましてや警察関係者が関与していることを放置しているという事は、大変重大なことであり国家への重大な挑戦だと思う。こうした事件が起きて20年、そして被害を受けた者約4000名。しかもみんな大人だ。どうか何人といえども日本国民は法のもとに平等で、身の安全を守られ、信教の自由を享受し、生きられるように要望する。