(10)戦後最悪の人権侵害、拉致監禁に深く関わった人たち。ー伊藤芳朗弁護士の陳述よりー

(7)後藤徹氏の事件への宮村氏の関与

ところで、今回、後藤徹さんの提訴事件で疑問が浮かぶのですが、なぜ、後藤さんは荻窪のマンションに監禁されてから、10年以上も解放されなかったのかということです。

宮村氏が頻繁に説得にやってきたのは9ヶ月間だけです。それなのに、徹さんの家族は宮村氏が説得に来なくなってからも、彼を解放しなかった。これがすごく不思議なのです。西東京市に実家がある。それなのに、10万円前後の家賃を払い続け、荻窪のマンションに家族で居続ける。奇怪な話というしかない。

宮村氏から後藤徹を解放するなよと言われ、宮村氏の指示にし従うという兄のGTさんたちが、その命令に忠実に従ったのではないか。どう思われますか?

伊藤弁護士:  そうだと思いますよ。宮村氏が脱会説得した元信者は二つのタイプに分かれますが、従順派は宮村氏の指示に逆らうことなく従います。だから、宮村氏がGTさんに「弟を出すなよ」と言えば、間違いなくそれに従います。実は、後藤徹さんが拉致監禁されてから一年半か二年後のことですが、日本基督教団の牧師さんから「宮村さんがある信者を拉致し、一年半だか二年だったか、ずっと監禁している」と聞いたことがあります。思わず、「それ、犯罪じゃないですか。信じられない話ですね」と口にしたことがあります。その信者が後藤徹さんだったことを、徹さんが告訴したことで知りました。牧師さんなど他の脱会説得者ならともかく、宮村氏なら長期間の監禁はあり得る話です。「信じられる話」です。

それにしても、どうして宮村氏は長期間にわたって解放しないように、GTさんたちに指示したのでしょうか?

伊藤弁護士:  それは、解放したら、脱会説得に失敗したことが広く知られてしまう。それを怖がったのでしょう。宮村氏は「俺は、失敗したことなどない」と吹聴していたと記憶しています。自分の手にかかれば絶対に大丈夫だ(脱会させることができる)みたいなことを言っていたし、そのために、それこそ5年間も教育と称して、月1万円を取り続けているわけですからね。それがどうも脱会させられなかったこともあるらしいという噂が父兄の間に広まれば、神格化されていた宮村氏のイメージ像が崩れるじゃないですか。

私は、監禁中に後藤徹さんが宮村氏たちに、「訴えてやる」と叫んでいたことが原因しているのかと思います。つまり、開放すると刑事・民事事件で訴えられる。それが怖くて、宮村氏は徹さんをマンションに留め置いたのではないか?

伊藤弁護士:  それも大いにありますね。なししろ犯罪なんだから。

(9)戦後最悪の人権侵害、拉致監禁に深く関わった人たち。ー伊藤芳朗弁護士の陳述よりー

(6)宮村氏の支配的性格

それにしても、宮村氏は胡散臭い人ですねえ。今でも記憶に残っているエピソードはありますか?

伊藤弁護士:  自殺したJ弁護士のことを思い出します。私と同期生だったJ先生は、東京青春を返せ裁判の弁護団の一人でしたが、真面目な形で元信者だった女性と付き合っていました。

ところが、その女性はたまたま宮村氏が脱会説得した人で、宮村氏の腹心の部下みたいな子だった。TYさんではありませんよ。どういう経緯があったかわかりませんが、彼は精神的におかしくなって、仕事もできないような状態になりました。彼の名誉のためにいいておきますが、彼は独身でした。だから、彼女との関係は不倫ではありません。彼はまじめに結婚を考えていたと思います。

jさんから直接聞いたことがありますが、宮村氏が自分たちの交際に反対し、俺たちの関係をつぶしにかかっている、と。

少々わかりにくい話です。J弁護士とその女性が愛し合っているのであれば、その関係に宮村氏が介在しようとしてもできないのではないでしょうか?

伊藤弁護士:  宮村氏のことを知らないから、そうした疑問が出るのは当然のことです。宮村氏はとにもかくにも支配的な人です。それゆえ、宮村氏の手によって脱会した元信者はたちは2つのタイプに分かれます。

一つは、宮村氏の支配を受け続ける人、つまり、神格化された宮村氏に依存する人たちです。そうした人たちは、宮村氏の意に背かない。もう一つは、宮村氏の支配を嫌がり、彼を毛嫌いするようになるタイプです。J先生と付き合っていた女性は、前者のタイプでした。だから、その女性は宮村氏の影響を受けて、J先生との間で、なんらかのトラブルになったのではないかと思います。

被害弁連のメンバーだって、こうしたことは推測できていたはずです。J先生が亡くなった後、そうした自殺の背景をおぼろげながらに知りながら、素知らぬふりをして、被害弁連の弁護士たちが平然と「お墓参りに行こう」と呼びかけてくる。さすがに私は頭にきて、「ふざけるな、あなたたちは、Jさんがなんのためにこんなに追い詰められたのかわかっているだろ」みたいなことを皆に書き送りました。

とても興味深い話です。J弁護士とその女性が愛し合っていたとしても、その女性はJさんより宮村氏の影響力の方が強い。恋愛至上主義的な私からすると、理解しにくいところもありますが、オウム真理教の麻原を中心とした人間関係を思い起こせば、あり得る話かもしれません。宮村氏の支配的な性格に関することですが、青春を返せの原告・GTさん(本件裁判の被告)と宮村氏の関係はどうだったのでしょうか?

伊藤弁護士:  まあ、仲がいいといったレベルではなく、宮村氏からアゴで使われていましたね。決して、宮村氏に反発するようなことはなく、従順そのものでした。男が男にアゴで使われるのを目の当たりにすると、気持ちいいものではありませんでした。

具体的なエピソードはありますか?

伊藤弁護士:  あの頃はまだ携帯がありませんでしたから、宮村氏がGTさんに「お前、このことを誰々に伝えてこい」よ命令すると、すぐに「ハイ」といって飛び出していった。ものすごい頭ごなしでした。「あれもってこい」と言われると、すぐに従う。宮村氏のパシリのように使われ、とても可哀想な印象でした。だから、今でも記憶に残っています。