今、注目の共産主義について考える(72)。北鮮帰還事業(2)。「強制送還と変わりがない」民団幹部。戦後最大の人権侵害事件、北鮮帰還事業について考える。

昭和34年6月11日の朝日新聞です。ジュネーブでの 日本赤十字社と北朝鮮赤十字の間で帰還に向けた合意が成立。鳴り止まぬ拍手は、「みんなの団結で帰国をたたかいとろう」とのスローガンで、前日の10日から開催されている朝鮮総連の全国大会での出来事です。

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記事の中では「朝8時ごろから続々つめかけた約千三百人の代議員は新聞を手にして半信半疑といった表情だった。午前九時半、李帰国対策委員長がジュネーブの共同コミニュケを発表、愛国歌の大合唱ではようやく祖国に帰れる思いに涙ぐんだ顔が多く、公会堂の中は憂鬱なツユを吹き飛ばすような明るさに包まれていた。なお12日には、帰国を希望する青年たちが、遠く神戸から東海道筋に沿って千五百人も自転車で乗り込み、一層帰国気分を盛り上げるという」と書かれています。

一方、民団本部(大韓民国居留民団中央総本部)は「ツユのせいか沈痛な空気が一層陰にこもった感じ。金今石副団長は『日本の無条件降伏ですよ』と激しい語調を吐き捨てた。『日本が北朝鮮の思うツボにはまったんですよ。予測はしてましたがね・・・。本当に日本は誠意をもってまとめる意思があったんだろうか。・・北朝鮮帰還?冗談でしょう。強制送還ですよ』と厳しく日本と北朝鮮のジュネーブ合意を批判しています。

結果的には、この民団幹部の予想が現実となってしまったのですが、なぜこのような戦後最大の人権事件が起きたのか考察していきます。

今、注目の共産主義について考える(71)。やはり「終わり」の始まりかもしれない。

3月8日の産経新聞『石平のChaina Watch』で、石平氏は中国の習近平国家主席が終身独裁者となったことについて『「新皇帝」の「即位」』と論評しています。

この中で「習氏による終身独裁の実現に対して、政権内部で、かなりの反発と抵抗」があったこと、そして「つまり習主席は『軍事クーデター』を起こしたかのようなやり方で中央委員会をねじ伏せ、自らの目的を達成した」と指摘しています。

このことについて石平氏は具体的に「まさに党内の反発と抵抗を排除するために、上述の3中全会が開かれている最中の2月27日、習近平勢力はもう一つの際どい行動に出た。その日に発行された中国人民解放軍機関紙である『解放軍報』は1面トップで『全軍と武装警察は中央の憲法改正案を断固として擁護する』との記事を掲載した。記事は解放軍と武装警察の幹部・兵士の口を借りて、国家主席任期制限の撤廃に対する軍と武装警察の支持を表明したのだ。・・共産党中央委員会が全体会議を開いている最中、軍と警察による『改憲支持の表明』は明らかに、軍と武装警察の力を持って、中央委員会の中にある反対意見の封じ込めであり、中央委員会そのものに対する軍からの恫喝であった」との事実を指摘しています。そして「習氏は実質上の『新皇帝』と化していくであろうと」述べています。

「言論の封殺」と「軍と警察による恫喝」によって確立した終身独裁権力。しかし独裁はこれで完結したのではなく、権力内部での権力闘争は果てしなく続いて行くことになるでしょう。

かって、一国の君主なり宰相なりが善政を布いて、一国を治めるにはどうすればよいかという質問に対し、孔子は「食を足し兵を足し、民之を信ず」という簡単明瞭な言葉で答えられたということです。その中の「民之を信ず」というのは「即ち、能く道徳が行き渡って、忠孝信義の念が厚く、時の為政者の誠意が一般国民に理解されて民を信ぜしむに至ったならば、これ善政である」という意味のようであります。

世界中に孔子学院を設立して、孔子の教えを世界に広めている張本人が、孔子の教えに明らかに背いていることになります。あらためて、孔子の教えを学んでいただきたいものです。

終身独裁を確立した習氏に、もし期待することがあるとすれば、かってのゴルバチョフ氏のように、共産主義独裁政権を終焉させることであります。悲惨な歴史を迎えない為にも、そう願うものであります。