大阪市営交通の民営化について考える(8)自民党の12項目の要求について

自民党大阪市会議員団として地下鉄8号線未着工区間の延伸を主張し、そのための基金として100億円とも400億円ともいわれる基金を積み立てるようにとの主張であります(新聞情報によれば、新聞情報しかありません、説明がないので)。現在営業している今里筋線では、年間約50億円の赤字を出しております。未着工区間(今里〜湯里六丁目)の工事費は約1300億円といわれ、当然借り入れ資金による建設となります。それだけの巨費を借り入れてまで、さらに赤字が積み増すことが明確であるにもかかわらず、今里筋線未着工区間の建設を迫っているのが自民党大阪市会議員団であります。本来新規路線の整備と地下鉄の民営化は別の問題であります。本当に民営化に賛成ならば、まず民営化を進め、その後に新規路線の整備のあり方について議会で議論を重ねるとともに、施策を積み重ねて、しかるべき条件整備を図っていくべきであります。本来は民営化に賛成なのに、民営化と直接関わりのない自民党の要求をのまなければ民営化に反対するというのは、いったい何をしたいのでしょうか?賛成なのに反対をするという。自分の立場を利用して賛成して欲しければ、この条件をのめということでは、脅迫じみていると感じるのは私だけではないでしょう。その結果は膨大な借金と膨大な赤字であります。自民党大阪市会議員団としても大阪市の財政状況の厳しさは認識しているはずです。平成28年3月の荒木肇議員の代表質問では「大阪市自身も当面は通常収支不足が見込まれる中、幼児教育無償化やこども医療費助成の拡充は多額で恒久的な財源が必要となるが、どうするつもりなのか」と、市民生活に不可欠な予算の財源をめぐって市長の姿勢を厳しく追求していました。ましてや自民党として地下鉄8号線の未着工路線の建設を主張するならば、財源をどうするのか、赤字対策をどうするのか、その財政計画を説明すべきであります。“ねだる”だけでなく責任政党としてきちんとした財政計画を示さなければなりません。さらに疑問として浮上するのは、他の条例路線や、国の答申に盛り込まれた路線についてはどうするのでしょうか?課題は8号線だけではありません。8号線だけが大切だということにはなりません。全体の整備計画のあり方について、これについても見解が示されていません。納得のいく説明を求めるとともに、まずは市民にしっかり説明しなければなりません。

大阪市営交通事業の民営化について考える(7)藤本前交通局長の発言より

「民営化の必要性につきましては、基本方針案の中に網羅させていただいたわけでございますが、ご質問の趣旨にのっとりまして、約1年間初めて公営の交通事業に携わった経験を踏まえて、私自身の考え方についてご説明いたします。交通事業は公営か民営かという経営形態の差によって、できる、できない、可否という問題は、私は理論上ないと考えております。しかし、実際上、結果としてでございますが、これまで我々交通局では、今ご指摘ございました終発延長はしていませんでした。また、運賃も私鉄各社、あるいはJRが初乗りを抑制する中で、どんどん上げてまいりました。増収努力について、きっちりと積極的に行えた、というふうには思えません。こういう実態については、大変驚きを持ったところでございます。しかも、それぞれの項目は、議会から要望を受けていたことを含めてでございます。公営でも理論上できるはずのことが、結果としてできていなかったこと、そして少しずつではございますが、この1年民営化を前提に事業を進めたことで、少しずつ結果が伴い出したこと、これが現実でございます。我々は、対前年度比で総額50億円程度の独自の人件費カットをしながら、一方でサービスがよりよい方向に向き出したことは、今、民営化に向かう必然性のあかしであるというふに考えてございます。交通局は6500名の職員がおりますが、今の流れを確固たるものにしていただき、彼らが局として全体がもとに戻らぬように、マネジメントを行う正念場でございます。公営で改革が進まない理由でございますが、私はやはり公営の組織風土、あるいは意識改革の遅れによるものと実感をいたしております。民営では企業を倒産からまもり、経営拡大を図るという、いわゆる組織命題がございまして、生き残りをかけて安全サービスの維持向上を目指しますが、公営は必ずしもそうした改革インセンティブが強く働かない構造があるというふうに思っております。事業は原則として民営が基本でございまして、逆に公営でやらなければならない事業、特に我々で申し上げますと1号線、いわゆる御堂筋線が引かれた時期、これはまさに民間ではとても無理な事業でございました。民間参入ができない例えば巨大インフラ事業の立ち上げなどでございますが、我々交通局の事業は地下鉄で80年、市電から110年を経過する歴史の中で、そうした時期を、あるいは役割を経て、今に至ったものでございます。経営の合理性を欠くこと、公営のままではそういう合理性を欠くことは、結果が示すところでございまして、我々の公務員の意識を何とか交通事業者の意識にスピード感をもって変化させまして、本市財政、経営そのもの、そこに働く職員のため、そして何より市民、ご利用いただくお客様の為にも、この交通事業をブラッシュアップしてまいるべきであると考えております。1点、民間事業者の欠点といいますか、経済合理性の追求のために、人への優しさを失う危うさを持つことがございます。公営を続けてきた中で、我々は人への優しさを培ってまいりました。次の経営にしっかりと引き継いでいくことも付言させていただきたいと思います。」(平成25年2月第一回定例会)