大阪の都市制度改革の必要性について考える(29)。政令指定都市市長会が提案している「特別自治市」とは。西尾地方制度調査会会長と阿部川崎市市長の質疑(1)。

第30次地方制度調査会、専門小委員会(平成24年2月)

阿部川崎市長による「特別自治市」についてのプレゼンテーションのあと。

西尾地方制度調査会会長

「最初のご説明にありましたとおり、これは現在の政令指定都市をすべて特別自治市にしようということではなくて、あくまで大都市の選択肢の1つとして新たな特別自治市を制度化してほしいという御趣旨は伺いましたが、その場合、特別自治市になり得る大都市の要件のようなものをきちんと決めるのかどうかです。そういうことをお考えなのか。極端に言えば、現在19ある政令指定都市全部が特別自治市への移行を希望したならば、すべてなり得るんだという趣旨の選択肢なのか。・・・極端なことを言うと、19〜20という政令指定都市がすべて府県機能を併せ持ったものになるということになりますと、ある意味では、現在、47都道府県があるところへ20の更に府県が誕生することになるわけでありまして、府県は67存在する状況になるということですが、そういう姿もあり得ると、そこを許容しろとおっしゃっているのかどうかをまずお伺いしたいと思います」。

阿部川崎市長

「まず第一は、旧5大市だとか、かなり早く政令市になったところで、もう既に事務事業が定着しているところ、財政的にもかなり充実しているところについてそういう制度が、要するに入り口として特別自治市を選ぶことができる制度をつくっていただきたい。選択肢としてつくっていただきたいということです。ですから、数としてどのくらいになるかは、いろいろまた科学的なデータに基づく検討が必要になろうかと思います。特別自治市になった道府県内の他の地域についてどうするかも一緒に問題になってきますので、その辺の議論をちゃんと詰めた上でやっていく必要があると思います」。

大阪の都市制度改革の必要性について考える(28)。政令指定都市の問題点。

平成21年4月の『都市問題研究』に、「政令指定都市制度の課題と改革」と題する、大東文化大学法学部教授土岐寛氏の論文が掲載されています。この中で政令指定都市制度の問題点として以下の点を指摘しています。「1️⃣基本的に一般市町村と同一の制度を適用。2️⃣地方自治制度の中で、大都市の位置付づけや役割が不明確。3️⃣特例的・部分的で一体性・総合性を欠いた事務配分。4️⃣府県との間で生じている二重行政・二重監督の弊害。5️⃣大都市の財政需要に見合った税財政制度の不存在。6️⃣大規模自治体としての住民自治・参加機能が発揮しにくい。7️⃣指定要件が曖昧で、国の政策的判断に左右されやすい」と7点について問題があると指摘しています。府県との二重行政の弊害については土岐氏もやはり指摘しています。

そして、新たな大都市制度の確立が必要であるとしながらも次のように述べています。「政令指定都市制度がもはや合理的、整合的な大都市制度の条件を満たしていないことは明白であるが、それに替わる大都市制度の青写真の提示は容易ではない。大阪、横浜、名古屋3大都市の提言※はインパクトがあるが、今日ではまだ不確実性を残す道州制とセットという難点がある」と。※三大都市は道州制移行と同時に都市州となることを提唱しているという。

都市州という考え方は、道州制とセットという難点があるとのことです。道州制導入については国会では議論さえ行われていないのが実情であり、都道府県を廃止して道州制に至る道筋は全く見えていません。大阪での都構想の議論では、市役所を無くすなとの大合唱です。都道府県を廃止するとなれば、これまた県庁や府庁を無くすなの大合唱になるのではないでしょうか。

政令指定都市市長会として提案している新たな大都市制度は、“特別自治市”という考え方のようです。平成24年の第30次地方制度調査会において、川崎市の阿部市長が政令指定都市市長会を代表して提案しています。この特別自治市構想の問題点については以降で考えていきたいと思います。