大阪の都市制度改革の必要性について考える(42)。自民党の二重行政観について考える。

「大阪市が特別市になったら、ムダな二重行政を完全に解消できる」と自民党大阪市会議員団の広報誌『自民市民』(2017Vol.23)に書いてありました。ムダな二重行政が大阪府と大阪市の間にあるということを認めています。そして「ムダな二重行政についても、特別区では完全に無くなりませんが、特別市ならすべてなくせます」と主張しています。

平成26年10月の市会本会議で自民党は「(市長は)二重行政の話をされますけれども、当初4,000億円の話でも言いました。二重行政はそんなにないんです。先ほどおっしゃったことを解決するのに大阪市を廃止して解体するほど、それほどしないとできないものなのかどうなのかということをきちっと伝えるべきです」。と述べています。

しかし「二重行政はそんなにない」という主張と、自民党が目指すといわれる特別市になれば「ムダな二重行政を完全に解決できる」との主張、ムダな二重行政はあるという認識だと思われます。「二重行政はそんなにない」ということと、ムダな二重行政はあるという認識。普通に読めば乖離があるように思うのですが、二重行政に対する明確な見解が必要だと思います。また、大阪市が特別市となれば、大阪市は大阪市域、大阪府は市域以外の府下という、二元行政に拍車がかかるのが気にかかります。道州制もどうなるのかまったく不透明です。

次に、二重行政について、自民党と橋下市長の質疑のやりとりを見てみましょう。

●自民党の質疑者:「WTCとりんくうのあのタワービルは二重行政だったんでしょうかお伺いします」

⚫︎橋下市長:「二重行政です。広域行政が一本化されていれば、1人の知事、1つの役所があんな二本の巨大なビルを建てることは絶対にあり得ません」。

⚫︎自民党の質疑者:「あれは私は、二重行政ではなくて、明らかに政策の失敗だと思っております。それを二重行政というふうに言われるのは大変遺憾に思っております」。

⚫︎橋下市長:「政策の失敗原因を分析しなければいけません。・・・大阪府知事・大阪市長、大阪府議会・大阪市議会がそれぞれ大阪府域内という狭い領域において同じようなビルを建てる権限と財源を持っていた、これがもう最大の失敗の要因です。ですから、これを二重行政と呼びます」。

●自民党の質疑者:「しかし、あれは明らかに、二重行政の失敗ではなくて政策の失敗であり ます」。

ー(詳しくは平成26年10月の本会議議事録をお読みください)ー

大阪の都市制度改革の必要性について考える(41)。平松市政の時はどうだったのか。

平松市政の平成21年、

平松氏は政令指定都市に対してどのような認識を持っていたのでしょうか。「平成22年度国の施策・予算に関する提案」(平成21年6月)という文書があります。この中で大阪市の【現状・課題】との項目で、

「しかし、現在の政令指定都市制度は、①大都市の責任・権限に応じた税財政制度が存在しない→受益と負担の不均衡。②事務権限が特例的・部分的→一体的・総合的な行政運営に支障。③府県との不明確な役割分担→二重行政・二重監督の弊害。といった点で、もともと極めて不十分な制度である。大阪市は、このように不十分な制度の下、何とか母都市としての役割を果たしてきたが、今日的な経済・社会情勢下で、本市が担ってきた役割を果たして続けていくことは限界となっている」と記しています。

「本市が担ってきた役割を果たし続けていくことは限界となっている」との、極めて危機感をあおる文章となっています。この時期は平松市政の後半で、大阪市の財政破綻が将来確実視されるような、危機的な時期でもありました。平成14年に、磯村市長が大阪市財政非常事態宣言を発し、平成17年には『大阪破産』(吉富有治、光文社)という本が、「その日はいつか?日本初の大都市の崩壊」との見出しで出版されました。事実、平松市政で大阪市の財政当局は将来予測で、夕張市のように財政再建団体への転落の可能性について言及せざるを得ない状況となっていました。故に、もはや政令指定都市を「続けていくことは限界」という危機的表現になったのだと思います。

この【現状・課題】認識から、『道州制を見据えた新たな大都市制度の創設』という施策要望を国に求めたのだと思います。道州制導入を前提とした『新たな大都市制度』とは、今の自民党がいう特別市(政令指定都市市長会が提案する、特別自治市のこと)制度のことだと思います。また、『道州制』はいうまでもなく、府県の廃止を伴いますので、平松市政は「府県の解消を前提とした、都市の自立と連携の拡大をめざす道州制の実現」を国に求めています。

自民党市会議員団は平松氏と同じように、府県を廃止し[特別市]を実現すると言っていますが、自民党府会議員団とは話し合った結果、府議団も府県の廃止に賛成した上で、[特別市〕を提案しているのでしょうか。余計なお世話かしれませんが、心配しています。