大阪の都市制度改革の必要性について考える(28)。政令指定都市の問題点。

平成21年4月の『都市問題研究』に、「政令指定都市制度の課題と改革」と題する、大東文化大学法学部教授土岐寛氏の論文が掲載されています。この中で政令指定都市制度の問題点として以下の点を指摘しています。「1️⃣基本的に一般市町村と同一の制度を適用。2️⃣地方自治制度の中で、大都市の位置付づけや役割が不明確。3️⃣特例的・部分的で一体性・総合性を欠いた事務配分。4️⃣府県との間で生じている二重行政・二重監督の弊害。5️⃣大都市の財政需要に見合った税財政制度の不存在。6️⃣大規模自治体としての住民自治・参加機能が発揮しにくい。7️⃣指定要件が曖昧で、国の政策的判断に左右されやすい」と7点について問題があると指摘しています。府県との二重行政の弊害については土岐氏もやはり指摘しています。

そして、新たな大都市制度の確立が必要であるとしながらも次のように述べています。「政令指定都市制度がもはや合理的、整合的な大都市制度の条件を満たしていないことは明白であるが、それに替わる大都市制度の青写真の提示は容易ではない。大阪、横浜、名古屋3大都市の提言※はインパクトがあるが、今日ではまだ不確実性を残す道州制とセットという難点がある」と。※三大都市は道州制移行と同時に都市州となることを提唱しているという。

都市州という考え方は、道州制とセットという難点があるとのことです。道州制導入については国会では議論さえ行われていないのが実情であり、都道府県を廃止して道州制に至る道筋は全く見えていません。大阪での都構想の議論では、市役所を無くすなとの大合唱です。都道府県を廃止するとなれば、これまた県庁や府庁を無くすなの大合唱になるのではないでしょうか。

政令指定都市市長会として提案している新たな大都市制度は、“特別自治市”という考え方のようです。平成24年の第30次地方制度調査会において、川崎市の阿部市長が政令指定都市市長会を代表して提案しています。この特別自治市構想の問題点については以降で考えていきたいと思います。

地下鉄民営化について、産経新聞の主張「民営化を復権の起爆剤に」より。

本日5月15日の産経新聞の主張欄に「大阪の地下鉄、民営化を復権の起爆剤に」と題して、産経新聞の考えが記載されていました。内容は

「『私鉄王国』と呼ばれる関西でも、JR西日本を別とすれば最大の鉄道会社が誕生する。経済の地盤沈下を指摘されて久しい大阪にとって、復権の起爆剤として期待される。そのためにも、早期の株式上場による完全民営化を目指すべきである。・・・今でも『優良企業』 の部類だが、民営化で人員削減などのコストカットや事業の多角化が図られれば、さらなる収益増大や運賃値下げなどが期待できる」。

と今後の課題を指摘しながらも、肯定的に評価しています。

「新会社からの納税や株式配当で年間約100億円が入ると市は試算する。教育や医療、福祉などの財源に充てる考えだ」。

と市の考えも紹介してくれています。

ただ市議会の自民党の要望を受け入れたことについては批判的評価をしています。たとへば株式の上場について吉村市長任期中は上場しないとしたことや、市側に人事や事業計画などへの関与の余地を残しとことは今後新会社の足かせになると批判しています。

この点については重く受け止めるとともに、産経新聞をはじめとしてメデイアも、もっと早い段階で自民党を説得する論陣を展開していただいていたならば、ご希望のように進んでいたかもしれません。課題はあるとは言え、民営化の第一歩を踏み出したことは大きな意義があると思います。