大阪都構想の必要性について考える(55)。大阪市が考えたスーパー指定都市とは?

大阪府で『大阪新都構想』について激しく議論が交わされていた平成15年ごろの大阪市はどのような状況だったのでしょうか。

このころの大阪市について考えるとき、大阪市が取り組んできたオリンピック招致問題から振り返る必要があります。当時の西尾正也大阪市長(昭和62年〜平成7年)が平成20年(2008)のオリンピック大阪招致に取り組むと明言したのが平成4年、大阪市議会でオリンピック招致決議がなされたのは平成6年です。西尾市長の後継者となった磯村隆文市長(平成7年〜平成15年)はオリンピック招致に東奔西走しましたが、平成13年(2001)に行われたIOC総会での投票の結果、第一回目の投票で落選し招致に失敗しました。翌年の平成14年11月、磯村市長は大阪市の財政は最悪の状態にあるとして財政非常事態を宣言しました。磯村氏は任期満了で市長を退き、当時助役であった関淳一氏に大阪市の再建を委ねることになりました。関氏は市長(平成15年12月〜平成19年12月)に就任するや、ただちに公務員改革・市政改革に取り組みましたが、それは大阪市の財政破綻が真剣に考えられ始めた時でもありました。平成17年には「大阪破産」(吉富有治、光文社)という本が出版されました。

かかる時期に関市長が打ち出した新しい大都市制度が『スーパー指定都市構想』でありました。政令指定都市である大阪市が財政的に限界に直面し、大阪市が新しい大都市制度を模索したこの時期は、大阪府でも太田房江知事が掲げる『大阪新都構』について大阪府議会で活発に議論されたときでもありました。

平成19年の市長選挙では、市営交通の民営化など大胆な市政改革を掲げた関氏は労働組合推薦の平松邦夫氏に敗れます。以後改革は停滞し、大阪市の財政破綻はもはや現実か、というところまできました。

平成23年の市長選挙では、橋下徹大阪府知事が『府市の再編』を掲げ大阪市長選に挑戦します。大阪府知事に松井一郎氏、大阪市長に橋下徹氏が就任し、府・市の連携による大改革のスタートがきられました。平成25年10月に出版された「大阪破産からの再生」(吉富有治、講談社)という本では、「そして登場した橋下徹によって大阪市の組織と公務員の改革は急激に進み、少なくとも財政に関しては破綻の危機から脱出できたのは確かである」と記述しています。

平成27年からは吉村洋文市長によって橋下改革の灯が引き継がれるとともに、改革は果実を生み出し、今や大阪市政は着実に前進しています。

このような大阪市政の流れの中で、関淳一市長の時代に打ち出された大都市制度である『スーパー指定都市構想』とはどのようなものだったのでしょうか。またこのときに議論された『政令指定都市の課題・限界』についても考えていきたいと思います。

《西尾正也市長(昭和62年〜平成7年)、磯村隆文(平成7年〜平成15年)、関淳一市長(平成15年〜平成19年)、平松邦夫市長(平成19年〜平成23年) 、橋下徹市長(平成23年〜平成27年)、吉村洋文市長(平成27年〜)》

言論人による言論弾圧?

文芸評論家の小川榮太郎氏が執筆された「徹底検証『森友・加計事件』朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪」という本をめぐって、朝日新聞は同氏と発行元の飛鳥新社を相手取り、謝罪広告の掲載と5千万円の損害賠償を求め東京地裁に訴訟した、という記事が新聞に載っていました。提訴の理由については、「本社(朝日新聞社)には一切取材もないまま、根拠もなく、虚報、捏造、報道犯罪などと決めつけている。事実に反した誹謗中傷による名誉毀損の程度はあまりにひどく、言論の自由の程度を超えている」と説明しています。

これに対し、小川榮太郎氏は「言論機関が個人に対し、好意的でない文章を出したからと、提訴するのは事実上の言論弾圧だ。言論機関は言論の場で白黒つけるべきだ」として全面的に闘うということです。氏の勇気に敬意を表するとともに、闘いの勝利を心から願うものです。

慰安婦問題についていうならば、『朝日新聞は、根拠もなく、事実に反した内容で日本を誹謗中傷。さらには虚偽に満ちた“吉田清治証言“をあたかも事実であるかのように報道し続けたことによる日本国民と日本国の名誉毀損の程度はあまりにもひどく、もはや言論の自由の程度を超えている』と反対に言わざるを得ません。32年を経て、吉田清治証言に関する一連の関連記事を取り消したとはいえ、いまだに謝罪もなければ関係者への処分も行われていません。それどころか、平成26年9月の週刊文春によれば、木村伊量朝日新聞社長は《「慰安婦問題を世界に広げた諸悪の根源は朝日新聞」といった誤った情報を撒き散らし、反朝日キャンペーンを繰り広げる勢力には断じて屈するわけにはいきません》との檄文を社員にメールしていたということです。これが事実なら、朝日は自らの過ちを認めておらず、完全に開き直っているとしか言いようがありません。

今日、日韓関係が大混乱に陥っています。しかしこれはひとへに、朝日新聞の30年以上に及ぶ“慰安婦問題“捏造に大きな原因があります。韓国国民に大きな誤解を生じさせたのですから。朝日新聞は言論人として韓国の国民に事実関係について明確に説明しなければなりません。日韓関係の混乱を韓国政府や日本政府にだけにその責任を押しつけることはできません。朝日は権力を有する者に対して、常に『謙虚と誠実』さを要求していますが、国民は朝日を含めてすべての言論人にも『謙虚と誠実』な態度と行動を求めていることを忘れてはならないと思います。

「言論の自由の程度」についてあらためて考えさせられます。言論人による言論統制や言論弾圧は言語道断であります。