今から5年前、平成28年(2016年)11月20日の産経新聞に、【米IT業界VSトランプ氏】と題する記事がありました。4年後の2020年11月の米大統領選で何が起こったのか、を理解するうえで重要な要素の一つと考えますので、少し長いのですが紹介します。以下は産経新聞の記事です。
ドナルド・トランプ次期大統領が政権発足に向け組閣作業を進める中、IT業界ではトランプ氏が規制や税制で強い権限を持つことへの困惑が広がっている。トランプ氏は大統領選の期間中、アップルやグーグルなどのIT企業をさまざまな理由で批判。各社は今後、次期政権とどのように渡り合っていくか慎重に距離を測っている。「アップルは外見や出身、信仰、愛する対象が誰であるかを問わず、多様性を尊重する」。アップルのテイム・クック最高経営責任者(CEO)は大統領選の後、社内向けメッセージでこう訴えた。若者が多く、社会改革の意識も強いシリコンバレーで、トランプ氏の女性や移民に対する差別的言動への嫌悪感が強いのを受けた発言で、アップルのトランプに対する“遺恨”の深さをうかがわせた。
《米に投資を》
トランプ氏は選挙戦で、アップルが主力商品iPhone を中国など海外で生産し、海外の子会社を使って課税逃れをしていると批判されていることについて「アップルに米国で製品を生産させる」と発言。これに対しクック氏は、一連の課税逃れ批判を「政治的なざれ言」と一蹴した。トランプ氏は、多国籍企業の米国での投資を促すため、各社が海外で蓄えた資金を米国に戻す際にかける税金を減免すると主張している。アップルが全資産を米国に戻せば「540億ドル(約5兆9400億円)の節税効果が生じる」との試算がある一方、米技術専門誌は、米国への生産拠点移転でアイフォーンの小売価格は一台あたり30〜100ドル上昇すると指摘。海外での収入が全体の3分の2を占めるアップルの「米国回帰」が実現するかは微妙だ。
トランプ氏はまた「グーグルの検索エンジンは民主党のヒラリー・クリントン候補に不利な情報を表示しない」と主張。アマゾン・コムのジェフ・ベゾスCEOが米紙ワシントン・ポストを買収したことについても「アマゾンを利するために政治的影響力を求めている」と糾弾した。
《課題は山積み》
さらに、ソフトウエアの開発者ら専門性の高い人材の就労のために発給される「HIBビザ」について、トランプ氏は「廃止すべきだ」と言及し、IT各社の懸念をかき立てている。しかし、個人情報保護やIT技術者のビザ発給、インターネットサービスにおける公平性の確保など、IT業界が次期政権と詰めなくてはならない懸案は山積みしている。政界と産業界の関係に詳しい専門家は「巨大企業である各社が次期政権とことを構えるのは賢明でない」と指摘する。
トランプ氏のIT業界に対する主な発言
【アップル】トランプ氏:「アップルに他の国ではなく米国でコンピュータなどを生産させる」「アップル製品をボイコットすべきだ」。テイム・クックCEO:「(課税逃れ批判に対し)政治的な取るに足りない戯れ言だ」
【Amazon】 トランプ氏:「ペゾスCEOはアマゾン・コムを利するために政治的影響力を欲している」。ジェフ・ペゾスCEO:「わがブルーオリジン社のロケットに席を用意しておくよ(宇宙にトランプ氏を飛ばしてしまえ、の意)」
【Google Twitter Facebook】トランプ氏:「グーグルの検索結果はクリントン氏の悪いニュースをもみ消している」「ツイッター、グーグル、フェイスブックはFBIのクリントン氏への捜査を覆い隠している。極めて不正直なメディアだ」。FacebookのザッカーバーグCEO:「壁を作れとか、よそ者というレッテルを貼って人々を遠ざけようとか、恐ろしい声を聞く」