驚くべき米国の実態(15)。中国共産党政府の戦略について考える。

『HIDDEN HAND』日本語訳(飛鳥新社)の第13章「グローバル・ガバナンスの再構」の中に、【「インターネットの統治」と新技術の輸出】という項があります。皆さんんもご存知のことかと思いますが一部を紹介したいと思います。次のように書かれています。

〈中国共産党による「インターネットの統治」の概念は、情報の自由な流れを促進する「オープンでボーダレスなインターネット」という従来の概念に取って代わるものだ。国内では歴史上類を見ないほどの検閲体制を敷くもので、これには検索エンジンを操作して特定の用語をブロックすることや、大群のオンライン検閲官、そしてインターネット企業への厳しい規制などが含まれる。

中国政府のシンクタンクは、「民主的な」インターネットの国際統治システムを呼びかけることが多いが、これは単に独裁国家の規範を民主国家の規範と同等の地位にして、各国が自国内で好きなようにインターネットを検閲できるようにする、いわゆる「インターネット主権」を求めているだけなのだ。

2014年以降、中国は烏鎮で世界インターネット会議を毎年開催している。かなり盛大なこの会議には、アップルのテイム・クックやグーグルのサンダー・ピチャイCEOなどをはじめとする著名人が集まり、基調講演などを行なっている。クックは「サイバー空間における共有された未来に参加するコミュニティの構築を手伝う」ことを誇りに思っていると述べた。この言葉の中国語訳を見ると、習近平の「人類の共有された未来」と非常に近いものであることが分かる〉。

いま米国のネット・情報の世界で起こっていることを直視すれば、中国共産党の戦略が米国でかなり成功していると考えざるを得ません(もちろん日本においても)。ネット・情報の世界だけでなく米国の情勢全般を洞察しても、米国の“建国の理念”そのものが大きな危機に瀕しているのではと深く憂慮しています。米国には引き続き、建国の理念に基づく『偉大な米国』であるとともに、『世界の民主主義の旗手』としての役割を大いに期待したいものであります。