産経新聞台北支局長の矢板明夫氏は評論家の石平氏との対談本『中国はどこまで世界を壊すか』(徳間書店)のなかで次のように述べています。
「習近平の1月7日の要求についてよく言われているのが、『武漢市で新型コロナウイルスの感染が起こっているみたいだけれど、春節に影響を与えないように、騒がないようにしましょう』といった、春節を優先するようなものだったということです。だから、それによって隠蔽がさらにひどくなったと囁かれています。もしも、『新型コロナウイルスにきちんと対応しなさい』と要求したとすると、武漢市はこれを2週間も無視したことになる。そんなことはありえません。だから、習近平は責任逃れのために、『1月7日に要求を出した』と言っているのですが、その内容自体が、感染防止を呼びかけるものではなかったということです」と。
習近平国家主席は、1月20日に『新型コロナウイルスと全力で戦う』という指示を出し、23日に武漢を閉鎖しました。しかし1月20日までなんの指示も出していなかったとすれば、無能な国家指導者という烙印が押されることとなるでしょう。常識的に考えても1月20日までなんの指示もしていないということはあり得ないことです。中国共産党は1月7日の共産党政治局会議で習近平主席はちゃんとコロナ対策の指示を出したと発表しています。国家主席として務めを果たしていると、言いたいのでしょう。しかし肝心なのは、何を指示したのかということです。指示の中身です。しかし今までどこのメディアも、このことに関する報道はありませんでした。中国共産党の機関紙『求是』では「(1月7日)習近平氏が政治局常務委員会議で『ウイルス事態を予防統制するために努力せよ』と指示を出していた」となっていますが、矢板明夫氏の本を読んで、むしろ真実は矢板氏の見解にあると思います。1月7日以降の武漢市の対応(李文亮医師へ口止めの警告、武漢市主催の万家宴開催、1月27日の武漢市長の記者会見など)を検証すると、矢板氏が言われるように、『騒がないようにしましょう』という指示内容だったとしか考えられません。なぜなら、中国共産党一党独裁政治のなかで、武漢市が習近平国家主席の指示に逆らうことは絶対できないからです。「だから、それによって隠蔽がさらにひどくなったのではないかと囁かれています」、もし矢板氏の言われることが真実だとすれば、一国の指導者としてはありえない大きな過ちであります。その後のパンデミックを考えると、中国共産党は新型コロナウイルスとどのように関わったのか、特に昨年の12月以降の動きについて一部始終、明確な説明が求められます。その責任があります。中国国民に、そして世界各国の人々に、明確な説明がなされてしかるべきであります。