産経新聞の“産経抄”より。「被害者を装う」中国から、「救世主」を装う中国に変身?

3月19日付産経新聞『産経抄』より。

黒を白と言いくるめる中国政府の論法に、国際社会は何度も悩まされてきた。さすがにこれは、無理筋というものだ。中国外務省の報道官は先週、新型コロナウイルスに対して、「米軍が武漢市に持ち込んだかもしれない」とツイートした。厳重抗議だけでは、腹の虫がおさまらなかったようだ。トランプ大統領はツイッターで、「中国ウイルス」と名指ししている。先週のコラムで、「発生源をあいまいにして被害者を装う、中国のぎ欺瞞が許されるわけではない」と書いた。中国本土の感染の勢いが収まってくると、「被害者を装う」どころではなくなった。独裁体制ならではの強権の発動を日本や欧米諸国も見習え、と言わんばかりの主張を官製メディアを通じて発信している。ウイルスの感染爆発が続くイタリアには、医療支援部隊を派遣した。もっともいくら「救世主」を気取っても、中国から拡散した事実は消えない。初期段階で中国当局が情報公開していれば、世界的な流行は回避できたはずである。中国ウオッチャー、福島香織さんの近著『習近平の敗北』で、「逢九必乱」と呼ばれるジンクスを知った。西暦の末尾に9のつく年に、必ず中国に乱や厄災が起こるというのだ。確かに中華人民共和国が内戦の末に建国したのは、1949年である。59年のチベット動乱で、ダライ・ラマ14世が亡命する。69年にはソ連と、79年にはベトナムとの紛争が起こる。89年の天安門事件は世界を震撼させた。99年には法輪功のだ弾圧があった。2009年には新疆ウイグル自治区で騒乱が発生、今もウイグル人への激しい弾圧が続く。そして昨年の新型肺炎である。中国政府がいかに否定しようとも、ジンクスは破れなかった。