信濃毎日新聞記者の質問に対する答え。
「私は、長い研究生活を通じ、1905年から10年までの日本と朝鮮についてたくさん考えてきました。大韓帝国の滅亡と日韓併合は20世紀の東アジアを歴史的に決定する大きな変化でした。日本もその後、帝国主義に入っていった。日本は大陸に進出し中国は共産化しました。私は、大韓帝国が滅亡したことは韓国人の歴史的な責任もあると考えています。(戦後精算については)いろいろな研究があるので、私があえて話す必要性は感じません。この本はあくまで、韓国人による自己責任と韓国人による自己批判の本なのです」。
朝日新聞記者の質問に対する答えは。
「2005年から07年にかけ当時、日本労務者だった人物約50人近くにインタビューしました。また、この本が出た後、多くの人たちが李承晩学堂のホームページや書評を通じて、自分の親戚や父や祖父が日本の労務者として働きに出た自身の家系の記憶について書いてくれました。それらを集約し資料と照らし合わせると、彼らが奴隷として働いたというのは、非常に誇張されたものだと思います。非常に政治的なグループによる強い主張が歴史を塗り変えてしまったと感じています。東京大学の外村さんの本は私もよく存じ上げています。素晴らしい研究者だと思います。しかし、募集と官斡旋も含めて強制連行であるとしてしまうのは行き過ぎだと考えています。それは韓国人を奴隷と貶めてしまう危険な考え方です」
共同通信記者の質問に対する答えは。
「『反日種族主義』をどんな読者、対象に向けてかということですが、正直言いまして、そういう考えをしたことはありません。韓国人全体に向けて書いたものです。韓国人が知っている歴史観のどこに問題があるのか指摘した、ということです。その病の根源を読んでもらいたかったのが出発点です。韓国の書店の分析では本を買っている人たちに30代が多いそうです。韓国で30代、40代は反日教育を受けており、50代、60代より、反日感情を持っています。私は、歴史はゆっくりした速度で進歩していると見ています。日本の読者層についても考えたことがありません」
以上久保田るり子氏の『正論』への寄稿文から引用させていただきました。つぎに日本経済新聞OBの方の質問とそれに対する李栄薫氏の答えを紹介したいと思いますので引き続き引用させていただきます。
日本経済新聞OBの質問
「私が韓国に赴任していた80年代は慰安婦問題がありませんでした。その後、88年にソウル五輪が開催され、当時われわれは韓国が豊かになれば日本に対してもう少しおおらかになるのではと期待していた。しかし、韓国は大きくなればなるほど反日が強くなっている。これはなぜだとお考えですか」。
これに対して李栄薫氏は、
「50年代から80年代まで韓国は高度成長しました。50年代から63年までは毎年10%成長を成し遂げました。李承晩、朴正煕、全斗煥と日韓協力はうまく進みましたが、88年の韓国民主化によって思想の自由がもたらされました。韓国ではそれ以前、マルクス主義に言及することさえ不可能でしたが、88年からそれが許されました。そこで押さえつけられていた政治勢力が一気に噴き出してきました。その中に大韓民国の建国に反対するものが多く含まれていたのです。彼らは親日派が大韓民国を作ったと考えてきた人々です。そういう反対勢力の政治的影響力が次第に増していき、93年に金泳三時代となり、それ以後、私がこの本で書いた反日種族主義の感情が韓国を支配してきたのです」と答えています。