矢板明夫氏の『習近平の悲劇』(産経出版)によれば、
「党大会では人事のほかに、改正党規約が注目された。改正党規約に『習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想』が行動指針として明記された件だ。・・・習の名前を冠した思想が党の行動指針となったことで、今後、習の意見や政策に反対することは『党に反対する』ことになる。・・・党中央宣伝部幹部が北京で行った記者会見で『社会主義の革新的価値観として家庭や子供まで徹底させる』と表明した」と書かれています。
この本によれば、中国政府は「家庭や子どもに至る」まで『習思想』を徹底するということのようです。習近平氏の意見や政策に反対することは「反党行為」であり、習思想以外一切の価値観を許さないということのようです。だとすれば、北朝鮮で金日成思想(チュチェ思想)以外の価値観が許されていないのと同じですね。今の中国は北朝鮮と同じく、言論の自由や、表現の自由、思想信条の自由、信教の自由、学問の自由、結社の自由といった基本的人権は全く認められていません。徹底した監視、脅迫、逮捕、弾圧、強制収用、処刑などが繰り返されています。悲惨、まさに地獄ですね。しかし、日本の新聞・テレビは何も伝えない。見て見ぬ振り。何も言わない。逆にフェイクニュースで我々を欺いています。
ところで、習近平思想は?というと。この本によれば、
「◇2035年までに社会主義現代化を実現。◇2050年まで奮闘し富強・民主・文明・調和・美しい社会主義強国を構築。◇海洋強国の建設加速。◇今世紀半ばまでに世界一流の軍隊をつくりあげる。◇中華民族の偉大な復興の実現には闘争が必要。◇一国二制度や高度な自治の方針は完徹。◇一つの中国原則は両岸(中台)関係の政治的基礎・・・」ということのようです。
わかりやすく言えば、徹底した共産主義化を行い、今世紀半ばには米国を超える共産主義国家を築くという。闘争・戦争も辞さず。これ以外の主張や価値観は、反革命として処罰する。そのために強固な習近平独裁を確立する。世界一流の軍隊と一帯一路の政策(金の力)によって世界支配の基礎を確立する。偉大な中華帝国を建設する。というようなことではないでしょうか。
怖いですね。しかしそんな習近平独裁政治下にあっても、「中国の改革派知識人の間でも、『習思想』に対する懸念を示す人が多い」と矢板明夫氏は言う。
独裁は弾圧を生み、弾圧によって民心は離反し、政権は脆弱化する。独裁の始まりは、『習近平の悲劇』の始まりでもある。チャウシェスクの運命がそれを示している。