今、注目の共産主義について考える(93)。北鮮帰還事業(16)。地上の楽園と信じて帰還した人びとの多くが収容された北朝鮮の強制収容所。

昭和61年7月に出版された『謎の北朝鮮、地上の楽園か、この世の苦海か』(産経新聞論説委員長、柴田穗、光文社)という本に、北鮮帰還事業で帰還した在日の人や日本人妻たちの北朝鮮での悲惨な生活実態が記されています。

この本の中に『恐怖の集団収容所』『(洞窟や地下壕の中で)じゃがいもや草の根をかじって、かろうじて生き延びている“特別独裁対象者”』という項目があります。

「特別独裁対象は北朝鮮でいう『反党・反革命分子』」のことを意味し、ここに分類された人たちに対しては、主権をにぎった労働階級がすべての反革命的要素を打倒の対象と限定し、彼らに徹底したプロレタリア独裁を実施することによって、共産主義社会を建設することができる」。

『反党・反革命分子』に分類された人は投獄されたり、処刑されたり、山間僻地の『特別独裁対象区域』と称される強制収容所に強制追放されるということです。ここには人権もなく、奴隷のように働かされ、食べるものもなく、飢餓、餓死が常態化しているとの脱北者の証言があります。これが彼らのいうプロレタリア独裁(特別独裁)の実態です。地獄です。

「この収容所に収容されている人々は金日成、金正日の政策に反対し、党に対して不忠だと判断されるか、金正日を後継者として押し立てることに不満を抱いているもの、越南者(休戦ライン南方の韓国に移住した人びと)の家族、北送同胞(日本から北朝鮮に送還された人びと)」であるという。日本からの帰還者もその対象だということです。

そして「ここに収容されている人びとは、外郭に幾重にも張り巡らされている鉄柵、電気鉄条網、地雷弾、落とし穴などが設置された収容所地域で、徹底した監視を受けながら、洞窟または地下壕の中で、じゃがいもや草の根をかじりながら、かろうじて生き延びている。医療、厚生施設がまったくない最悪の生活環境のなかで、重労働を強いられながら、人間以下のさんたんたる生涯を送っている」。

収容所は「荒れ果てた険峻な山間僻地に設けられ、収容されている政治思想犯の数は10数万人に達している」と記されています。

「集団収容所は“危害分子”とその家族を完全に除去するための最適な方法」だという。

日本から地上の楽園と信じて北朝鮮に帰還した人びとは、『北送同胞』と分類され、朝鮮労働党の監視の対象となっているということです。そしてその中の多くの人々が『特別独裁対象地域』と呼ばれる強制収容所で悲惨な生活を強いられているという事です。

日本からの北鮮帰還者は、日本の新聞やテレビなどのマスコミ、日本共産党や社会党などの政党、朝総連や日教組などの団体が主張していた『北朝鮮=地上の楽園』を信じて、9万人以上の人びとが北朝鮮に渡りました。しかし、行ってみるとそこは地上の地獄であった。不満を持つなと言われても無理な話であります。それを恐れた朝鮮労働党は日本からの帰還者を『特別監視対象者』として、『“危害分子”とその家族を完全に除去するために』、強制収容所に送り込んだと推測されます。

日本政府は、拉致と同時に北鮮帰還事業で日本から北朝鮮に渡った人々を救済しなければなりません。