日鮮交渉で日本の判断がまちがい、北朝鮮の要求をすべて受け入れたのはなぜなのだろうか。まちがった判断をした背景の一つにはマスコミや一部政党などによって演出された「北朝鮮=地上の楽園」説が、社会全体に蔓延していたことがあげられると思います。当時マスコミ界の雄であった朝日新聞の記事を見てみましょう。
昭和34年12月21日の朝日新聞を見ますと、朝日新聞平壌特派員入江氏の報告が載っています。この記事の中で入江特派員は平壌の町について、「身ぎれいな町の人、立ち並ぶアパート」と題して「特別にぜいたくな風の人もない。コジキみたいな人もいない。身なりを清潔にする運動がこんなに進んでいるのは、経済建設が進んでゆとりができたからであろう」との記事を載せています。また平壌のある青年の話を載せ「『私たちは建設を進めて、衣食住は心配がなくなった。しかし日本に生きる同胞は故国を捨てて散らばったままでいる。彼らを迎えて安定した生活の中でいっしょに建設を進めるのは私たちの願いだ』」と北朝鮮賛美の記事にしています。平壌は一般の人が住むことは許されない、支配階級の町であることを知らなかったのだろうか。
さらに入江特派員は「長崎から帰還した魚竜作さんは奥さんと6人の子供に囲まれて『きてみれば夢かと思った。わたしは船乗りをしていたが、帰還運動をやったのでなんどもクビになり、食べ物もロクになかった。二ヶ月、米のメシがなく、よそのゴミ箱をさがして生きていたこともある。リンゴなんて子どもに食べさせたくてもやれなかった。それが帰ってみれば、食事のたびにリンゴが四つぐらいつき、肉も食べられ、こんなに大歓迎してくれる。わたしはこれから漁夫をして働く。帰れるようにしてくださった日本人にお礼を言いたいのです』」と帰還者の話を報道し、「北朝鮮=地上の楽園」説を展開しています。このようなインタビューも朝鮮労働党の許可がなければできないのを知っていたのだろうか。話の内容も朝鮮労働党の指示であることを理解できなかったのだろうか。
今から見れば北朝鮮の演出に朝日の入江特派員はまんまと乗せられているのがよくわかります。しかし当時この記事を素直に読めば、多くの国民は北朝鮮は地上の楽園との印象を受けることでしょう。朝日新聞の責任は重大です。“天下の朝日新聞”がこのような報道をし続ければ、国民の多くは疑うことなくそのように考えたでありましょう。
この「北朝鮮=地上の楽園」説に加担したのは、朝日新聞以外にも様々なマスコミ・団体が関与しているのですが、次に日本共産党はどのように関与したのか調べてみたいと思います。