「ブレジンスキーは、共産主義を「歴史の悲劇」以外の何ものでもなかったと総括する。理想主義に発しながらも、理性の力を過信し、結果的に史上未曾有の巨大な抑圧と犯罪行為を生み出したのであった」。これは今から28年前の平成元年に出版された『大いなる失敗』(ブレジンスキー著作:カーター政権で国家安全保障問題担当大統領特別補佐官を務める)の訳者伊藤憲一氏のあとがきでの言葉です。共産主義の政策によって、いかなる災禍が人類にもたらされたのか、ブレジンスキー氏の著書を見ていきます。「マルクス・レーニン主義政権が社会を共産化する過程で、どれほどの人命が犠牲になったか、大まかな推定をすることはできる」「(1)権力獲得の過程での処刑:革命や内戦での戦死を除く、処刑による死者の数は、ソ連で少なくとも100万人、中国で数百万人、東欧で約10万人、ベトナムで少なくとも15万人と推定される。(2)権力獲得後の政敵や反抗者の処刑:これらの殺戮は、共産主義者が全国を制覇していった数年間にわたり行われた。大まかな推測で、その数は(1)であげたものと同程度と思われるが、ソ連と中国の合計は控えめに見ても500万人と言われる。(3)実際の態度に関係なく、政敵になる可能性があると思われた階級に属する人々の根絶:元軍人、役人、貴族、地主、僧侶、資本家が典型的な例である。処刑されたり、強制労働収容所に送られ、そこで大多数の人々が死亡した。その数は見方によってかなりの幅があるが、最近のソ連、東欧、中国の発表から推測しても、300万人から500万人は下回らないものと思われる。(4)自営農家の解体:ソ連のクラークと呼ばれた階級がその代表例である。クラークは処刑または収容所送りとなって消滅した。ソ連と中国において抹殺された自営農家の合計は、数百万人から1000万人近くで、ベトナムと北朝鮮が数十万人と思われるので、この種の死者は1000万人以上であろう」。(続く)