日本共産党の綱領を読んでいくと、歴史は資本主義から社会主義、社会主義から共産主義に進んでいくという自分勝手な歴史観が書かれています。最初の段階である資本主義社会から社会主義社会への変革は、暴力によって行うことが容認され、実際にロシア革命や中国革命では暴力的に前政権を倒すことによって社会主義政権を打ち立てました。日本共産党も戦後の一時期、暴力革命を方針として採用し、実行した時期もありました。この試みは失敗しましたが、国民の共産党に対する不安は未だに解消されていません。日本共産党の新しい綱領では議会で多数を占め、共産党政権によって社会主義社会を実現すると主張しております。その社会主義化の中心政策が生産手段の社会化であります。生産手段を社会化することによって、生産力が引き上げられ、「能力に応じて働き、労働に応じて受け取る」という社会主義の段階から、生産力が極めて高い共産主義社会へ移行し「能力に応じて働き、必要に応じて受け取る」ことができる理想社会が実現できるというのが、共産党の理論であります。共産党が主張する、社会主義社会から共産主義社会へ移行していくのは歴史の流れであるという主張の根拠は、まさに「生産力の向上」にあるということです。生産手段の社会化を行えば、生産力が飛躍的に向上して、人間の欲しいままに、必要に応じて受け取り、快適な生活ができる社会になると言うのです。だからこそ共産主義社会の到来は歴史の必然として、資本主義社会を暴力的に破壊し、革命を起こしても、それは共産党にとっての歴史的役割であると豪語するのでしょう。しかし、社会主義社会になって生産力が向上した国はあったでしょうか?生産手段が社会化され、国家による計画経済、国家による資源、生産、流通、配分などの管理が行われた結果、生産力はどうなったでしょうか?生産力が向上し「必要に応じて受け取る」共産主義社会が実現したのでしょうか?残念ながら革命という大きな代価を払って社会主義国家を樹立したにもかかわらず、生産手段の社会化によって、かえって生産性は低下し、経済は停滞していきました。官僚主義による非能率的な国家運営にも陥りました。無階級社会の実現どころか、新たな共産党員という特権階級が誕生し、大多数の人民はその特権階級の指導に無条件で従わなければならず、塗炭の苦しみを味わいました。生産性の低下によって経済は疲弊し、ついには国家の崩壊を招きました。共産主義社会建設に成功した国はありません。ことここに至っては、生産手段の社会化によって、生産性が向上し楽園が建設されるという共産党の理論は完全に破綻したとしか言えません。「共産主義は、人類社会の合法則的な結果でもなんでもなくて、歴史の鉄の法則性などというものは、ありはしない嘘八百であることが明らかになった」とは、元共産党員の兵本達吉氏の言であります。