〈これも私の体験と重なる。私は2000年から2年間ほど、南山大学の渡邊学宗教学教授と、オウム真理教の元信者の3人で「カルト学習会」を主催してきた。参加者は10数人から30人。メンバーはしんぶんきしゃ、出版社の編集者、元カルトメンバー、カルトに関心のある若者など多士済々であった。山口広弁護士は常連参加者だった。
ある日の勉強会のテーマは「保護(拉致監禁)説得」の是非についてであった。このテーマを選んだのは、当時、エホバの証人の信者が拉致監禁されたと、バプテスト連盟の草刈牧師を訴え、牧師が敗訴した事件があったからだ。
そのときに、私は山口弁護士に質問した。「ヨーロッパのように、カウンセラーが直接カルト信者に会って脱会説得するのではなく、信者を説得する家族をサポートするようにすべきではないか」
これに対して、山口弁護士はにべもなかった。苦い顔をしながら、「効率が悪いよ」。効率が悪いという意味は、家族だけで脱会説得するのであれば(つまり家族の話し合い)、時間がかかり過ぎる。保護(拉致監禁)説得のほうが脱会のスピードは早いという意味である〉
先程、宮村氏が荻窪栄光教会を追い出された頃から「何故あんな男を仲間に加えているんだ」という話が牧師たちのあいだにあったということでしたが、宮村氏も参加するような、拉致監禁に関わる全国の牧師たちの会合のようなものはあったのでしょうか。「原理運動対策キリスト者全国連絡協議会」という名称の集まりがあったようなんですが。?
伊藤弁護士: だいたいそんな名前だったと思いますが、牧師たちが集まって会合を持ってたのは知っています。ただ我々弁護士らは脱会説得活動に関わらない方がいいと山口広弁護士から言われていたので、参加したことは一切ありません。今から考えると、後藤さんの事例のような犯罪的行為に弁護士が加担するわけにはいかないということだったのでしょう。
(4)その他宮村氏の問題点
乱暴な脱会のやり方以外に、宮村氏を意識されるようなことがありましたか?
伊藤弁護士: 統一教会信者らの中には多額の献金をする人がいますが、宮村氏のような脱会説得の専門家によって脱会した後には、統一教会に対して損害賠償請求をするようになります。裁判所もこの手の事件では原告を勝訴させることがほとんどですが、中には億単位の事件もありました。
宮村氏はこうした高額事件を特定の弁護士だけに、具体的な名前をあげれば紀藤正樹弁護士ですが、紀藤弁護士だけに回すということを行なっていました。
しかし、我々は運動体としてやっていたので、こうした事件は全部一回、全国弁連に上げて配分すべきだし、一部の弁護士だけが潤っても後継者は育たないことから、私は抗議したこともありましたが、宮村氏はこうした主張には一切お構いなしでした。
弁護士が潤うとは?
伊藤弁護士: 損害賠償請求で勝訴すると、弁護士報酬が発生します。示談交渉が妥結してもそうです。そのことを「潤う」と表現したのですが、問題は次のことにあります。すなわち弁護士報酬を含め献金などの返還金が戻ってくるということは、統一教会はそのお金を工面するために、また新たにお金を集めなければならない。献金されたものは日本でプールされるわけではなく、海外に送金されてしまっているからです。つまり、損害賠償金を勝ち取れば、新たな被害者を生むことにつながっていく。そのことが最大の問題なのです。
被害弁連の業務が相談だらけならいいのですが、損害賠償請求に関わってくると、どうしても矛盾が生じてくる。他の事件では認められないような請求も相手がカルト宗教だと安易に認められてしまう、という裁判所の傾向もありますが、統一教会側もお人好しなので、まともに争えば認められないような請求も全額和解で支払ってしまう。これでは依頼人の利益にはなっても、その負担を新たな被害者が負うことになるわけです。こうした矛盾に悩みながら活動していけばまだしも、弁護士の間に収入が稼げるという意識が生まれてくる。私が被害弁連に関わるようになった頃には、そうした「稼げる」という雰囲気がすでにありました。内部で議論もありましたよ。「ほんとうに被害を出したくないのだったら、そういう事件の引き受け方はおかしいのじゃないか」「こちらの被害を回復しようとしたら、また新たな被害を生んでしまう。このやり方はおかしいのじゃないか」
でもこういう根本的なことには、山口広さんは絶対にメスを入れない弁護士なんです。まあまあ、なあなあで、事を荒立てない。そのため、こうしたやり方はおかしいと批判して被害弁連を辞めた弁護士もいました。話を戻すと、高額の返還請求事件を宮村氏が紀藤弁護士だけに回せば、被害弁連は組織的に歪になっていきます。しかし、先ほど話したように、私が抗議をしても、宮村氏は知らん顔だった。