本研究会は長年にわたって供給管理されてきた市営住宅の今後のあり方について、その現状と課題を踏まえストックの
活用、団地コミュニティ管理など様々な観点から検討を行った。その上で現在の市営住宅を市民保有の財産として、更に住宅に困窮する世帯をはじめ若年・中堅
層など幅広い市民ニュースに対応するとともに、地域のまちづくりへの貢献など、より広い役割を担い、より多くの市民に支持される「市民住宅」へと再編する
ための仕組みづくりについての提案をまとめた。今後「市民住宅」への再編を着実に進めていくことが重要であるが、そのために留意すべきいくつかの視点がある。
そのため、モデルプロジェクトの早期具体化をはかるとともに、住まい情報センターを活用するなどして、制度のPRをはじめとした様々な情報を幅広く発信す
るなど、市民とのコミュニケーションに努めていく必要がある。
次に、高齢者への生活支援やコミュニティデベロップメント等の充実をはかるため、市営住宅を含む地域全体として、福祉地域振興など関連する施策との連携について、さらに進んだ検討を行う必要がある。
また、厳しい財政のもと効率的な事業の推進が不可欠であり、ストックマネジメントという観点から、建設や維持管
理のコスト縮減、家賃収納率の向上に向けた継続的な取り組みを進めるとともに、事業収支的なチェックを常に行うなど、経営的視点に立った展開をはかる必要
がある。
さらに国との役割負担が不可欠であり、とりわけ多様な世帯の入居によるコミュニティバランスの回復をはかるための制度的枠組みの構築や、住宅困窮者に対して民間住宅等を活用するための制度設計などについて、国への積極的な働きかけが必要である。
大阪市においては、本提案を踏まえて固い決意をもって「市民住宅」の実現に取り組まれることを強く期待するものである。 |